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第40回マーケティングサロンレポート
「『フルグラ』がチャレンジするカルビーの朝食革命」

第40回 マーケティングサロン
「『フルグラ』がチャレンジするカルビーの朝食革命」

日程:2015年11月24日(火)19:00~21:00
場所:日本マーケティング協会 東京本部
ゲスト:カルビー株式会社 マーケティング本部 フルグラ事業部 事業部長 藤原 かおり氏
サロン委員:新井教之、香川勇介、金子大介、山本美慶、川井源、竹渕祥平

 

【サロンレポート】
 今回のサロンでは、カルビー株式会社マーケティング本部フルグラ事業部事業部長の藤原かおり氏をお迎えして、30億円のブランドであった「フルグラ」をいかにして200億円のブランドに成長させることができたのか、その戦略についてディスカッションしました。
 

藤原氏 会場の様子
写真左から、ゲストの藤原氏、会場の様子
 
【概要】
フルグラについて
 「フルグラ」は1991年に、「働く女性の健康をサポートする」ことを目的に、「フルーツグラノーラ」として発売されました。意外なことに、2016年には発売25周年を迎える、実は下積み期間の長いブランドであることがわかりました。2011年までは、30億円台で頭打ちが続いていましたが、2012年から2015年のわずかな期間で200億円にまで急成長した、大変興味深いブランドです。
 
フルグラの4つの特徴
① オーツ麦、玄米等の穀物を主原料とする栄養価に優れたグラノーラがベース
② 楽しさ抜群の生地食感
③ フルーツをミックスすることで生まれる味覚のハーモニー
④ 食物繊維、鉄分、ビタミンなどの栄養バランス
 
フルグラのマーケティングの特徴
 「フルグラ」のマーケティングにはいくつかユニークな特徴があることがわかりました。例えば、新商品投入や商品改良はせず、商品そのものには手を加えずに、通年商品としてどのように育成するかに主眼が置かれて展開されていました。また、派手なテレビ広告も投入しない方針とのことでした。ともすれば、新製品の投入やコミュニケーションにコストを投資することが、マーケティングの定石と考えられがちですが、フルグラのように、腰を据えて大切に商品を育成する姿勢には学ぶべきことが多く感じました。
 
機会と課題
 「フルグラ」を再生する上で着目された点は、シリアル・フルグラ未体験者が77%もいるという事実でした。シリアルは、まだ伸びシロが大きいマーケットであるにも関わらず、おいしくなさそう、食事らしくないといった大変ネガティブなイメージの強いカテゴリーであったため、トライアルが阻害されており、その結果、小さな売場でしか取り扱われないカテゴリーとなっていました。そのため、いかにしてシリアルカテゴリーのイメージを刷新するかが当時の課題であったと説明されていました。
 
「売れる環境をつくり、店頭で普及させる」
 以上のような課題に対する打ち手として、戦略PRをうまく活用することで、売れる環境をつくり出しつつ販路を拡大していったという説明がありました。特に力を入れたのはBtoBのメディアとのことでした。BtoBのメディアに「フルグラが売れている」という内容のコンテンツが掲載されることで、ドラッグストア等これまで取扱いの無かったチャネルに販路が広がったと説明されていました。戦略を描き、戦略に沿ったストーリーをつくり、メディアとお客様に信じてもらえるファクトを開発し、コンテンツにしてアプローチするという一連の流れの重要性を、「グラノーラをブームにする」キャンペーンや「No.1宣言」など様々な成功事例を用いて、わかりやすくご説明頂きました。
 
ビジネスのドメインを朝食に変更
 藤原氏に課せられたミッションはフルグラを100億円に育成させることでしたが、当時のシリアルの市場規模は250億円。そこで、着目したのが17兆円規模の朝食市場でした。藤原氏はビジネスのドメインを朝食に変更し、従来の競合とのシェアゲームから脱却する方向に舵を切り替えました。ドメインを変更してからは、パンなどの主食を止めてもらってフルグラにスイッチさせるような押しつけがましいマーケティングはせず、今食べている朝食(ヨーグルトやパンケーキ)の「オトモダチ」として、朝食をより良いものに変えるというマーケティングを実践されたとのことでした。フルグラをシリアルと別物として切り離し、朝食と結びつけるという戦略によって、従来のネガティブなイメージが払拭され、全く新しいカテゴリーとして市場に定着することに成功しました。
 
ディスカッション
 活発なディスカッションの中で「初めからフルグラは大ヒットするという確信があって進めていたのか?」という質問がありました。その中で、藤原様は「フルグラを育成しようというトップの強い意志があった。組織というより、会長直轄のプロジェクトとして進行してきた。うまく行かないこともあったが、兎に角目標に向けて邁進した。」と回答されていました。松本会長のような強いリーダーシップは、継続的にブランドを育成するにあたり、大きな原動力となりそうです。
 
集合写真
集合写真(前列左から3番目 藤原かおり氏)
 
【サロンを終えて】
 これまでもカルビーは、「ベジップス」や「じゃがりこ」といった、新しいカテゴリーを市場に導入してきた経緯がありますが、どれも技術的なイノベーションが背景にあったような印象があります。一方で、フルグラは技術も商品そのものも25年前と変わらないのに、ドメインを変更し、従来のカテゴリーと切り離すという戦略によって、新たなカテゴリーを創造したということが大変興味深かったです。イノベーションの可能性について改めて考えるきっかけとなりました。
 
 当日は、藤原様に持参頂いたフルグラや、ポテトチップスなどカルビー社製のシリアルやお菓子を囲んで、大変和やかで話しやすい雰囲気でのサロンとなりました。貴重お時間を提供してくださった藤原様に、この場をお借りして御礼申し上げます。
 
(サロン委員:金子大介)

 
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