ニュースリリース

第51回マーケティングサロンレポート Choi LABO Kansai 2016 対談・交流企画「Beyond the Borders ~日本企業のアイデンティティはどこへ向かうのか」

第51回 マーケティングサロン
Choi LABO Kansai 2016 対談・交流企画
「Beyond the Borders ~日本企業のアイデンティティはどこへ向かうのか」

日程:2016年7月19日(火)19:00-21:30
場所:神戸大学インテリジェントラボ(梅田)
ゲスト:加護野 忠男 氏(甲南大学 特別客員教授、神戸大学 名誉教授)
    石井 淳蔵 氏(日本マーケティング学会 会長、中内学園流通科学研究所 所長、元流通科学大学 学長、神戸大学 名誉教授)
サロン委員(ファシリテーター):廣田章光・小宮信彦
 

【サロンレポート】
 関西のマーケティングサロンにおいて、毎年夏の恒例行事となった「Choi LABO Kansai」。今年は加護野忠男先生、石井淳蔵先生の2人をゲストとしてお迎えする、豪華な対談が実現しました。加護野先生と石井先生は、神戸大学経営学部時代からの盟友であり、大学院経営学研究科に進学後、経営戦略とマーケティングというそれぞれの領域で、日本を代表する学者となったことは、皆さんご存知の通りです。
 今回のサロンのテーマ「Beyond Borders」には、研究者と実務家、経営戦略とマーケティングという視点の違いを超えて、ともに新しい価値を創りだしていこう、という思いが込められています。2人の研究者は、それぞれの立場から、日本企業の今後の競争力向上のために、研究者と実務家双方の役割・期待をどのように見ているのか、語っていただきました。
 学会WEBサイトでの申込み受付開始後すぐに満席となった今回のChoi LABOには、非会員の方を含め、研究者・実務家の様々な方に参加をいただきました。通常サロンの講演のような一方向的なスクール形式ではなく、対談をする両先生を馬蹄形の来場者席が囲む形で、時折お2人の話に笑いが起こったり、参加者からの発言があったりする、より臨場感のあるサロンとなりました。
 
【概要】
 対談は、日本企業の経営や経営者について、2人が現在関心を持っていることからスタートしました。現在2人は、日本の企業家シリーズの原稿をそれぞれ執筆中で、石井先生はダイエーの中内功氏、加護野先生はパナソニックの松下幸之助氏の創業プロセスについて書かれているとのこと。中内氏は、他の小売企業がとかく生産性向上に注力していた昭和30~40年代に、単品レベルの商品開発による売り場づくりを重視した戦略で成功を収めました。その盛衰の歴史を振り返る中で、石井先生は、パラダイムと呼べるような時代の大きな考え方の変化が見えること、そしてそれに適合的なビジネスモデルを持つ事の重要性がわかるといいます。それを受けた加護野先生は、松下氏は、ものづくり以前に、戦いの場を上手に設定しながら戦略策定ができる「人づくり」を重視し、それを成し遂げた経営者であったと指摘。そして、事業戦略の策定には、「誰に」「何を」「どのように」に届けるか、を定義する必要があるが、それは調査から導かれる答えのように、かならずしも合理的に説明可能なものではない、と述べます。しかしながら、コンプライアンスが強化され、株主への説明責任がますます重視される今日の多くの企業では、こうした思い切った意思決定がますます難しくなっている現状があり、それが近年日本企業の競争力が低下していると言われる背景の一端であることが示唆されました。
 
 続くセッションでは、2人に聞いてみたいテーマを参加者から挙げてもらいました。会場には飲み物が配られ、全員がビールやお茶を片手にしたよりサロンらしい雰囲気で、対談が続きます。「関西のスタートアップの活性化のために、どうすべきか」というお題に対しては、純粋なベンチャーだけではなく、カルビーやパナソニックといった既存企業における新規事業開発や、それを個人が企業の内部・外部と組みながら実現する新たなマネジメントのあり方へと議論が展開。「地方創生はありうるのか」というテーマでは、一見して寂れたシャッター商店街の内側で、従来の物販振興という枠組みを超えた様々な新しい活動が生まれており、現地のコミュニティにとって重要なサービス拠点となっている、という事例が紹介され、そこからさらに、グローバルな資本主義経済から自律した、ローカルで循環的なビジネスのあり方へと話題は展開していきます。さらには、相互監視機能が働く小規模なコミュニティが、逆に外部市場においても競争力のある商品や事業を育てる可能性があることなど、豊富な事例の引き出しと、独自の切り口を持つ2人の議論は、新たな視点を取り込みながら、途切れること無く続きました。 
 
 最後に、「世界に通用する日本発のマーケティング理論・経営理論の創出へ向けた課題と希望」、その上で「マーケティング学会が果たすべき役割とは何か」を伺ってみました。対談は必然的に、それを明確に成し遂げた、唯一の経営学者である野中郁次郎先生(一橋大学名誉教授)の話に。加護野先生は、野中先生の共著者である竹内先生が卓越した英語の使い手であったことから、優れた理論を生み出すだけではなく、それを的確な英語に翻訳するプロフェッショナルを育成する必要性を指摘されました。石井先生は、信頼で結ばれた仲間が、互いの貢献を認めながら、共に知識を発展させていく、という野中先生の研究グループのスタイルに、かつて目からウロコが落ちたといいます。そして、長らく学会は互いを批判しあう場だと誤解されてきたが、このマーケティング学会は、お互いに信頼し合いながら、仲間で知識を発展させていく場になって欲しい、という学会設立に込められた思いを語られました。
 また、マーケティング学会の特徴である、実務家と研究者が共に助け合い、理論と実践が融合する場は、アメリカの学会にも無い日本の独自性である、といいます。そもそも、こうした研究者と実務家を分け隔てない仕組みは、加護野先生と石井先生が共に設立に尽力した神戸大学のビジネススクールで目指されたことでした。月が丸いと知る人類が、足元の地球の丸さに長い間気づかなかったように、必死に近くで見ようとしてもそれ故に気づかないが、離れてみて初めて分かることがある。遠くから見たらこういう姿に見える、とお互いに言い合えることが大事である。
 
 2人の若かりし頃の思い出話や冗談を交えつつ、緩やかな雰囲気で展開された対談は、いつまでもやり取りを聞いていたいと思えるような、あっという間の楽しい2時間でした。
 その内容は、誰よりも現場の実践を愛しつつ、自身は純粋な理論家として仕事をされてきた一流の研究者だからこそ、実感を持って語られる言葉で満たされていました。
 

会場の様子
 
(レポート作成:吉田満梨・岡野綾香)

 
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