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第36回マーケティングサロンレポート「湘南ベルマーレは何を売っているのか? ―Jリーグクラブを経営するということ」

第36回 マーケティングサロン
「湘南ベルマーレは何を売っているのか? ―Jリーグクラブを経営するということ」

日程:2015年9月24日(木) 19:00-21:00
場所:日本マーケティング協会 東京本部
ゲスト:株式会社SEA Global 代表取締役、
    特定非営利活動法人湘南ベルマーレスポーツクラブ 理事長 水谷 尚人 氏

サロン委員:
 京ヶ島 弥生(フロスヴィータ)
 長崎 秀俊(目白大学 准教授)
 佐々木 竜介(毎日新聞社)

 

【サロンレポート】
 1993年に、地域密着の理念のもと掲げ開幕したサッカーJリーグは、日本におけるスポーツのあり方を変えました。現在では多くのチームがそれぞれのホームタウンになくてはならない存在となっています。
 湘南ベルマーレは、神奈川県西部をホームタウンとする市民クラブです。2014シーズンに、J2史上最速で優勝を決め、今シーズンからはJ1に戦いのステージを移し、昇格初年度ながら年間8位と健闘しました。
 スポーツマーケティングに注目が集まる中、親会社を持たないプロサッカーチームがいかなる経営をしているのか、その実情を、株式会社SEA Global 代表取締役 湘南ベルマーレスポーツクラブ 理事長である水谷尚人氏にお伺いしました。
 
●《市民クラブ》湘南ベルマーレ
 15/18。これは何を意味する数字でしょうか。2015年シーズン、JリーグのトップカテゴリーであるJ1には18チームが所属しています。このうち15チームが親会社、もしくは責任会社と呼ばれる企業・団体が存在するのに対し、小口のスポンサーに支えられる残りの3チームは市民クラブと呼ばれます。
 1968年に誕生した藤和不動産サッカー部にルーツを持つ同チームは、98年に親会社が撤退したことで市民クラブとして再出発しました。
 赤字が出ても補填してくれる親会社を持たない市民クラブは、黒字とするために少しでも多くの市民にファンになってもらって、スタジアムに足を運んでもらう必要があります。
 そのために「ベルマーレブランドの構築」と「サポーターとの対話」を重視しているとのことです。
 
●「ベルマーレ」のブランド
 スポーツチームでは監督が変わるとプレースタイルが変わることがたびたびあります。しかしサポーターにとって、自分が応援するチームのプレースタイルがころころ変わるということは、好ましいものではありません。
 湘南ベルマーレの場合、どのようなサッカーをするかは組織(フロント)が決めているそうです。それが「攻撃的で走る意欲に満ち溢れた、アグレッシブで痛快なサッカー」です。新しい監督を選ぶ際には、ベルマーレが目指すサッカーを理解してもらう。新しい選手を入団させる際も、このようなサッカーが出来るかどうかを問いかけるそうです。
 こうして同じスタイルのサッカーを継承することで、サポーターは「変わらない自分たちのサッカー」に愛情が持てるようになる、とのことでした。
 
●サポーターのと対話
 「攻撃的で走る意欲に満ち溢れた、アグレッシブで痛快なサッカー」というベルマーレのスタイルは、サポーターにも共有されているそうです。年1回、サポーターと対話する機会を設けて、クラブが行いたいことを説明するとともに、サポーターからの意見も聞いています。そうすることで夢、感動、一体感、そして憧れがサポーターの中に熟成されるそうです。
 プロスポーツチームなので、成績がいいほうがサポーターも喜びます。しかしながら予算に限りのある市民クラブが大企業がバックに付くチームと対抗するには、限界があります。常勝は望めないため、対話を行うことでサポーターに「俺たちのサッカー」と感じてもらうことで、継続的な支持を得ようとしています。これはまさしく関係性マーケティングの実践です。
 
●湘南ベルマーレが売っているもの
 湘南ベルマーレは、NPO法人を設立しビーチバレーやトライアスロン、サイクル(ロード)、ラグビー(セブンス)などのチームを運営、サッカーにとどまらないスポーツの振興を通じて地域に貢献しています。このNPOでは、地域内施設の指定管理業務を請け負うことで、地元密着をアピールするとともに、アマチュア選手の働く場所を作っています。
 小学生を対象にした巡回授業は、活動エリアが平塚市1市から湘南エリアの7市3町に広がった時点から開始され、現在では全地域で実施されています。「世代と地域をつなぐ総合型地域スポーツクラブとしてチャレンジする人の成長を支え、夢と感動を提供する。」のミッションのもと、プロサッカーチームにとどまることなく、活動を広げているとのことでした。
 
【サロンを終えて】
 Jリーグ発足以前、日本のスポーツは永く企業に支えられてきました。アマチュアはもとより、プロ野球でさえ、多くのチームは親会社の支えなくしては経営が成り立ちませんでした。あれから22年、日本に文化としてのスポーツが根付く上で、湘南ベルマーレのような市民クラブが、企業として黒字経営をしている意義は大きいと考えられます。
 非営利組織のマーケティングが注目される中、大きなヒントが見つかるのではないでしょうか。
 
集合写真
集合写真
 
(文責:佐々木 竜介)

 
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