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第37回マーケティングサロンレポート「ホームレス状態を生み出さないニホンに」~HUBChari事業を通じた、ソーシャルビジネスの取り組み~

第37回 マーケティングサロン:関西
「ホームレス状態を生み出さないニホンに」~HUBChari事業を通じた、ソーシャルビジネスの取り組み~

日程:2015年10月9日(金)19:00-20:30
場所:グランフロント大阪 ナレッジサロン(大阪市北区)
ゲスト:NPO法人Homedoor 理事長 川口 加奈 氏
サロン委員:小宮 信彦・小林 哲・藤澤 聡子
 
【サロンレポート】
川口加奈氏 今回のサロンは、NPO法人Homedoor理事長の川口加奈さんにお越しいただきました。「ホームレス状態を生み出さないニホンへ」をコンセプトとしたNPO法人の代表をつとめています。川口さんが起業したのは大学在学中でした。なぜ今のご活動を行っているのか、きっかけからお話しいただきました。
 
事業をはじめたきっかけ
 大阪生まれの川口さんは、中学生の時に電車の乗り換えで、同級生が遠回りして避けているエリアがあることに気づきます。そこはホームレスの人の多い地区、釜ヶ崎(あいりん地区)でした。興味本位で現地の炊き出しボランティアに参加した川口さんも最初はあまり良い印象はなかったそうです。
 
 しかし、実際現場にいる一人一人のホームレスの人(川口さんは信愛の情をこめて「おっちゃん」と呼びます)の話を聞くうちに、ホームレスの人たちがなぜそうなってしまったのか、そこには貧困の連鎖や最初に経済環境の影響を受けやすい日雇い労働・非正規雇用などの労働構造が背景にあることを知ります。当時、ホームレスの人を狙った少年による暴力事件が社会問題化していた時期でもあり、川口さんは、実態をもっと知ってほしいと、当時通っていた高校の全校集会で、生徒の前で作文を読んだことが最初のアクションとなりました。
 
 その後も彼女の呼びかけで興味をもった同級生と共に釜ヶ崎を訪問するなど、活動を続けていたところ、高校2年の時に、ボランティアに関する海外への親善大使に選ばれます。川口さんは、海を渡り海外の事例を見聞きする中で、「社会を変えた気になるのではなく、本当に社会が変わることに貢献したい」と思うようになりました。
 
 大学に入学し、他大学の学生と大学2年生の時に団体「Homedoor」を立ち上げます。最初の試みは、釜ヶ崎で毎朝モーニング喫茶を提供するなどし、「おっちゃん」達と交流を続けました。
 
 この交流によりわかってきた実態は、一度失業してホームレス状態になってしまい、生活保護受給者になった後、職探しをしても、仕事についていない「空白期間」があることで再就職が難しく、3割はまたホームレスに逆戻りするというような悪循環でした。
 
 そこで、現在のHomedoorは、①失業しない、入口封じの生活支援、②出口づくりの就労支援、③啓蒙活動の3つに分けて各問題にアプローチしています。
 
会場の様子
 
現場ニーズから事業創出
 特に、②の出口づくりの就労支援については、「おっちゃん」たちの得意なことをヒアリングした結果、7割の人が自転車修理が得意なことがわかりました。彼らは日々空き缶集めで長距離を自転車や荷車で移動しているからです。そこで、レンタサイクル事業の労働をしながら自立のステップを経てもらうという、大阪の二大問題(ホームレス問題、放置自転車問題)を一挙に解決する方法を思いつきました。
 
 実はホームレス問題は、企業のCSRや街の問題解決として人気がありません。しかし、放置自転車問題に困っている商店街やビルのオーナーは多いため、その部分で共感・協力し合えることが活動を進めやすくしました。
 
 レンタサイクル事業は「HUBchari(ハブチャリ)」と名付けられました。企業などに「ノキサキ貢献」を呼びかけるこの取組みは、 3~5台の自転車設置から気軽にはじめられます。大学3年の夏休みに梅田で4カ所。自転車12台からスタートしました。その頃、就職活動のタイミングで他のメンバーは離れ、一人になった川口さん。揺れ動く気持ちもありましたが、活動継続を決意します。
 
 大学生起業家の川口さんの活動はメディアにも取り上げられ、常設のレンタサイクルスペースも持つことができました。しかし、「レンタサイクル」を伝える看板の作成すら手がまわらない程、事業開始時は困難の連続。そんな時に一人の「おっちゃん」が「昔、中退したデザイン学校でイラストを習っていた」と自発的に看板作りをはじめました。この行動を見た川口さんは事業への可能性を感じます。実際、労働で収入が入ると、家を借りて住むことができるようになります。そしてHUBchariを卒業し、再就職を果たす人も増えていきました。集う人の中には100社以上の会社を受け続けてダメだった人、人と会話をするのが久しぶりという人などさまざま。彼らはレンタサイクル事業で他者との接し方や学んだ言葉づかいが次の就職活動に役立ったと言います。現在もHUBchariでは50人の「おっちゃん」たちが日々働き、拠点は18カ所に増えました。
 
多角的な問題へのアプローチ
 このような、現場を持った就労支援のステップが大事だと川口さん。支援を必要とするホームレスの人たちに声掛けをする「ホムパト」活動では、おにぎりや毛布の配布とともに、一人一人の状況にあった情報提供をしています。また、以前ホームレスだった人の体験を共有するトークイベント、路上生活者のためのシェアハウスとカフェ機能を備えた「and house(アンドハウス)」の運営など、「ニーズの代弁者たれ!」という言葉とともに、現場の声を活動に活かし、成果を上げ続けています。
 
 最近は、会社の倒産や親の介護をきっかけに、貯金を切り崩していき、ホームレスになる人が増えているそうです。「これは、日本の色々な問題が集結した最後の結果、他人事ではなく、自分の人生というホームからの転落防止柵(ホームドア)でありたい、私たちの人生の保険として、どれだけ失敗してもやり直せる社会にしていきたい。」と語る川口さん。今後も大阪を起点に精力的なご活動を続けられるそうです。
 
サロンを終えて
 講演後の質疑応答では、参加者間で、この問題の社会への認知の広げ方や、アントレプレナーとしての視点、レンタサイクル事業の競争力や本年4月より始まった生活困窮者自立支援法について等々、多くの活発な議論がなされました。ご参加いただいた皆様、有難うございました。
 
集合写真
 
(文責:小宮 信彦)

 
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