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第49回マーケティングサロンレポート「ベンツ・VW・トヨタといかに戦うか?-VOLVOのマーケティング戦略-」

第49回 マーケティングサロン
「ベンツ・VW・トヨタといかに戦うか?-VOLVOのマーケティング戦略-」

日程:2016年6月30日(木)19:00-21:00
場所:中央大学 後楽園キャンパス
ゲスト:ボルボ・カー・ジャパン株式会社 マーケティング・ディレクター 関口 憲義 氏
サロン委員:新井 教之・香川 勇介・金子 大介・山本美慶
 
【サロンレポート】
 今回のサロンでは、ボルボ・カー・ジャパン株式会社マーケティング・ディレクターの関口憲義氏をお迎えして、競合ひしめく日本市場でどのように戦い、VOLVOのブランド力を高めていくのか、その戦略についてディスカッションしました。
  
関口氏
 
【概要】
VOLVOの現状
 VOLVOの製品ラインナップはシンプルに絞り込まれており、現在は世界で50万台を販売しています。これは、プリウスの国内販売台数の約2倍に相当します。一方、日本国内では現在1万4千台を販売し、これは国内で販売される輸入車のシェアの約5%に相当する規模です。どちらも決して規模が大きいとは言えませんが、VOLVOは「安全」という理念の基に、個性的なブランドを形作ってきました。特に国内では、メルセデスやBMWといったドイツ車はもちろん、トヨタを筆頭とした8社の国産メーカーに囲まれ、四面楚歌といった環境の中で、限られた資源を有効活用してブランド力を高めつつある大変興味深いブランドです。
  
VOLVOのフィロソフィー
 VOLVOが「安全」のブランドであることは明快で、「車は人によって運転され、使用される。したがってVOLVOの設計の基本は常に安全でなければならない」をフィロソフィーにしています。また、唯一「2020年までに新しいVOLVO車が関わる交通事故による死亡者や重傷者をゼロにする」を標榜としたVision2020を掲げています。
 
VOLVOの課題
 冒頭、関口様よりVOLVOには3つの主な課題があるというお話がありました。第一に「アクティブ・セーフティー」への移行です。VOLVOが「安全」のブランドであることは変わりませんが「安全」の定義を変えていくというものです。これまでVOLVOの「安全」は四角くて、硬くて、壊れないという言わばぶつかっても死なないというものでしたが、今後は「ぶつからない安全」に変えていく必要があるという課題です。第二に、ドイツ車との差別化です。VOLVOはプレミアムカーのポジションを目指しています。しかし現状では、競合に比べ一定の機能的価値はあるものの、情緒的価値は水準より低い状態であり、今後情緒面を中心に更に価値を高めていく必要があるという課題です。最後に、環境です。環境は、世界共通の自動車メーカーの課題であるというご説明がありました。
 
フラッグシップモデルのXC90が体現するもの
 日本のプレミアムカー市場は実質的にはドイツ車とレクサスで構成されています。その中で、VOLVOはオルタナティブとして選ばれているのが現状で、ドイツ車でも日本でもなく「VOLVOだからこそ」選ばれる理由をつくる必要があるというお話でした。そして、選ばれるための重要な要素を組み込んだフラッグシップモデルのXC90が体現するのは、人を中心とするクルマづくりであり、それはすなわち、妥協性のない安全性、高い環境性能、つながるクルマ、人が感じる心地よさであるというご説明がありました。XC90が体現する要素において特に特徴的だったのが、人が感じる心地よさという点です。その核になっているのが、北欧の要素を取り入れた人間中心のシンプルなデザインです。XC90の外観はトレンドを取入れた現代的なフォルムですが、内装は北欧家具のイメージを取入れた質感の高い白いデザインで、ドイツ車の黒いイメージと比べると、明るく心地よいデザイン性が感じられます。また、センターコントロールパネルもボタンを極力減らしてたった8個のボタンという構成になっています。とある競合プレミアムカーに53個のボタンがついていることを考えると、非常にシンプルなデザインであることがわかります。
 
コミュニケーション戦略の選択と集中
 VOLVOは競合と比べて少ないコミュニケーションコストで戦わなくてはなりません。そのため選択と集中を徹底しているというお話がありました。全体を俯瞰すると、VOLVOのメディア戦略は各メディアをブランドと送客という2つの役割のどちらかに分け、基本ワンテーマで切れ味を良くすることにより効率を高めるよう定められています。また、トーン&マナーはスウェーデン由来の「スカンジナビアン」に統一されており、メッセージは「安全」「Made by Sweden」「人間中心のデザイン」という枠からはみ出さないようにして、必ずいずれかの要素を組み込むというポリシーに基づいて設計されます。
 
コミュニケーション戦略のソリューション事例
 コミュニケーション戦略の選択と集中に於いて、関口様が取り組んだ具体的な事例のご説明がありました。まず、メディア戦略についてはTV中心に再編されたとのことでした。これはTVが最も効率が良いからであり、最も到達効率の良い量で定期的に出稿することで高い費用対効果を得られるからというご説明がありました。XC90のTVCMは、メッセージを北欧の雰囲気という情緒面の伝達に絞り、尺もあえて15秒に絞って展開したとのことでしたが、この事例からも選択と集中への徹底がうかがえます。また限られたコストでどう戦うかというテーマの中でユニークだった事例が、コンテンツ戦略におけるソリューションです。コンテンツの二次、三次利用を推進するという内容ですが、ここでもメディアの絞り込みが徹底されています。例えば、雑誌媒体は読者層と顧客の属性が近い二種に限定し、その雑誌媒体を二次、三次利用して、抜き刷りの店頭での活用や、自社ホームページやSNSでも展開していく内容です。また、アンバサダーを積極的に活用されているとのことでした。SNSでの情報発信はもちろん、アンバサダー主体の動画コンテンツを制作し、DVDに刷って店頭で活用するなど、ここでも二次利用が推進されています。特にピーターバラカンさんの動画は、その語り口から非常に高い信頼感を生み出し、ディーラー様で大変好評な企画になったとのご説明がありました。
  
ディスカッション
 活発なディスカッションの中で「安全性というだけでブランドは成立するのか?」という質問がありました。その中で、関口様は「「安全」はこれからも変わらずブランドのポリシーであり続ける」ということ、そして、「VOLVOの安全技術は世界最先端であり、それらはスウェーデンの事故に関する40年間の膨大なデータに裏付けられた技術である。」ということを回答されていました。そうした知識と技術は、長年「安全」にこだわってきたブランドだからこその強みであり、明快な差別点であると感じました。
  
ディスカッション
 
【サロンを終えて】
 関口様のお話をうかがい、VOLVOというブランドは非常に実直でシンプルなブランドであると感じました。スウェーデンという国の国民性が背景にあるのかも知れませんが、創業以来一貫して「安全」というフィロソフィーに従って技術やブランドを磨き続けるひたむきな姿勢には、ある種ゆるぎない信念を感じました。また、シンプルという点に於いては、製品ラインナップ、「北欧」のイメージや人間中心のデザインといったブランドの構造、戦略と集中という戦略面に於いてまであらゆる点に見受けられました。そうした実直でシンプルなブランドだからこそ、「安全」という核心部分を語られたときに凄味を感じるのかも知れません。
  
 当日は、和やかな雰囲気の中、様々な動画や事例を交えながら具体的なご説明をいただき、楽しみながら理解を深めることができました。貴重お時間を提供してくださった関口様に、この場をお借りして御礼申し上げます。
  
集合写真
  
(文責:金子 大介)

 
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