ニュースリリース

第61回マーケティングサロンレポート「スマホの商品企画 ~ユーザー・エクスペリエンスの視点~」

第61回 マーケティングサロン
「スマホの商品企画 ~ユーザー・エクスペリエンスの視点~」
日程:2017年6月6日(火) 19:00-21:00
場所:神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ
ゲスト:安達 晃彦 氏(ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 UX商品企画部門 UX商品企画2部 統括部長)
サロン委員:依田祐一・瀨良兼司
 
【ゲストプロフィール】
安達晃彦氏 一橋大学商学部(竹内弘高ゼミ)を卒業後、ソニー株式会社に入社。Sony Electronics(米国)を経て、2005年にSony Ericson商品企画部。高機能スマートフォン Xperia シリーズの商品企画・開発に長年従事。
 

【サロンレポート】
 今回のサロンは、高機能商品の1つであるスマートフォンのマーケティングに焦点を当てています。技術革新が進み、また強力な競合と対峙しつつ、グローバル端末としてのXperiaシリーズは、着実な事業成果を挙げている商品です。今回、メーカーの商品企画・開発プロセスにおけるユーザー・エクスペリエンスやブランドなどについて、実践内容を交えて、お話いただきました。
 
スマートフォン市場の現状
 冒頭、スマートフォン市場におけるメーカー別シェアや月次推移について、日本だけではなく、欧州の現状もあわせて共有いただきました。日本に関しては、販売オペレーターである三大キャリア各社の特徴が、iPhoneの導入順に色濃く反映されているのが印象的でした。欧州に関しては、各国で市場における競争環境やユーザーの購買傾向が異なっており、SIMフリーの市場動向についても話題提供がありました。
 
Xperiaシリーズ
 Xperiaシリーズの中でも、Xperia XZ Premiumは、2017年2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC(Mobile World Congress)において、「Best New Smartphone or Connected Mobile Device at MWC 2017」を受賞しています。
 ご講演では、その特長的な機能であるMotion Eyeカメラシステム(スーパースローモーションや先読み撮影が可能)について、撮影されたコンテンツをご共有いただいき、人気芸人とのコラボレーションによる「おもスロ芸人選手権」の取り組みなどもご紹介いただきました。また、「だから私は、Xperia。」というコンセプトとXperiaの機能や魅力についても、Webサイトを中心に展開している、リアル・ユーザーによる生の声を届けるコンテンツを事例にお話いただきました。
 
Xperiaの商品企画
 続いて、Xperiaの商品企画プロセスについて、商品コンセプトの策定から実際のマーケティング活動までの流れをご共有いただきました。スマートフォンの商品企画は、販売を担当するオペレーター企業との兼ね合いから、1年前には商品仕様を確定させる必要があり、デバイスの仕組みを加味すると発売まで2年以上かかるのが実情とのことでした。そのため、先の未来を予想しながら投資を始めなければならないという特徴があります。
 Xperiaの商品企画部門は、ものづくりに従事している開発のグループに属しているため、開発チームが決めたコンセプトをできるだけピュアなかたちで、販売を担当するマーケティング部門に伝える必要があります。その際、日本での展開の場合は日本語で伝えられるため比較的スムーズに行われる一方で、文化の異なる海外の場合では、開発側の意向がうまく伝わらなかったり、逆に思いもしなかった訴求の仕方を行ったりすることがあるようです。
 
今後の展望
 最後に、今後のスマートフォンのトレンドに関する話題を提供いただきました。Xperiaでは、デザインに関して非常に重視しているものの、スマートフォン市場の成熟化が進み、テレビと同様に画面占有率が高くなっていることで、外観のデザインによる勝負が難しくなっているとのことでした。このような危機感から、Xperiaシリーズとしても、日常ビジネスとしてのスマートフォン事業は継続発展させていく一方で、「ポスト・スマートフォン」によるお客様への体験を考えているとのことでした。
 実際に、ソニーモバイルコミュニケーションズ社では、スマートフォン以外にも、壁やテーブルがスクリーンになるXperia Touchや、耳元に装着してハンズフリーでコミュニケーションが可能なXperia Ear、コミュニケーションロボットのXperia Hello!など、Xperiaスマートプロダクトシリーズの展開を進めています。
 その他にも、昨今のエレクトロニクス業界では、AIを活用した様々なソリョーションがトレンドになってきていることから、GoogleやFacebook、Amazonなどのグローバルな巨大エレクトロニクス企業との協業の可能性についても、その展望を共有いただき、ディスカッションへと入りました。
 
ディスカッション
 ディスカッションでは、参加者がテーブルごとに所感や疑問点の共有を行いました。その間、安達氏には各テーブルを回りながら、XperiaのMotion Eyeカメラシステムについて実演をしていただき、参加者の皆様も大変興味を持たれていました。
 その後、フロア全体でのディスカッションでは、参加者から、XperiaのUXに対する考えやユーザー層に関する質問、マーケティング部門の位置付けや具体的な開発プロセスに係わる質問などが出ました。安達氏には、これらの質問に対して、時折ユーモアを交えながら、丁寧かつ赤裸々にお答えいただきました。

 
ディスカッションの様子
ディスカッションの様子
  

【サロンを終えて】 スマートフォンの商品企画は、3年後の市場を予測するのが難しいことに加え、Xperiaにおいては、iPhoneという強力な競合の存在を常に考慮する必要があります。このような市場環境を踏まえて、Xperiaの商品企画では、3年後を見据えながら、各国の販売レビューや競合の動向、通信事業者や部品メーカーなどのパートナーとの対話によって、市場の変化を常にキャッチアップし、場合によっては大幅な方針転換を決断して、商品ラインナップの再構築を行うこともあるなど、次の一手を紡ぎだすための試行錯誤を柔軟に実践しているのが印象的でした。
 技術革新に目を向けると、今後、5Gの普及によって、さらなる高速化が進むことで、自動運転や遠隔地での操作がより安全に行えること、多くのデバイスをカバーできることから、IoTとも連動していくことが期待されています。これら新技術の導入とUXとの関係についても、貴重な話題提供をいただき、理解を深める非常に有意義な場となりました。
 最後に、ゲストの安達様とご参加いただいた皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。

  
集合写真
集合写真(前列左から3番目が安達氏)
  

(文責:瀨良兼司)

 
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