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第77回マーケティングサロンレポート「ヒトツブカンロによる新市場開拓」

第77回 マーケティングサロン
「ヒトツブカンロによる新市場開拓」
日程:2018年6月29日(金)19:00-21:00
場所:日本マーケティング協会アカデミーホール
ゲスト:内山 妙子 氏(カンロ株式会社 執行役員 コーポレートコミュニケーション本部長)
サロン委員:京ヶ島 弥生・長崎 秀俊・森口 美由紀
 
【サロンレポート】
 ヒトツブカンロは2012年にカンロ創業100周年の事業として誕生したブランドです。カンロ飴の印象が強い同社が世に送り出したのは「ピュレグミ」にベルギー産チョコレートをコーティングした「ピュレショコラティエ」や、飴の生地に和三盆を使用した「プレミアムカンロ飴 和三盆」など、これまでのカンロのイメージを大きく変えるものでした。これらを通常のチャネルではなく、東京駅地下の商業施設「GRANSTA(グランスタ)」に直営店をオープンさせ、販売したことも新たなチャレンジでした。そしてこの老舗メーカーによる新しい試みは多くの人に受け入れられ、ヒトツブカンロは売上を伸ばし、同時にコーポレート・ブランドのイメージをも変えていく結果を生み出しました。
 今回のサロンでは、その改革の当事者でもある内山妙子氏に、その経緯と戦略、企画実行、そしてこれからの展望をお聞きしました。
 
 
【講演者プロフィール】
カンロ執行役員 コーポレートコミュニケーション本部長 内山 妙子 氏
武蔵野美術大学短期大学部グラフィックデザイン科卒業後、カンロ入社。デザイナーを経てマーケティング業務に従事。2012年カンロ100周年事業として直営店「ヒトツブカンロ」の立ち上げに参画。
 

【概要】
100周年と市場のシュリンク
 創業106年、カンロ飴を始めとする菓子・食品の製造販売の老舗、カンロ株式会社。100年以上たった今でもスーパー、コンビニの店頭に数多くの商品を供給し続ける同社も、創業100年を迎えるころ、時代の変化への対応に苦慮し、新しい価値を創造しあぐねていました。
 菓子市場の中でも、飴・キャンディ市場は1800億円(生産金額ベース・全日本菓子協会)のマーケットに多くのプレイヤーが参入していますがトップメーカ―でもシェアは10%強、市場全体は膠着状態で、個々のブランド力は弱く、コモディティ化が著しいと言います。同社はカンロ飴だけでなく、ピュレグミ、健康のど飴や香料・着色料不使用キャンディの先鞭をつけるなど、市場の活性化にも貢献をしてきていますが、2010年当時の消費者は「飴よりチョコの方が高級」「カンロは古くさい」という厳しいイメージを持ち、カンロ飴、のど飴から、新しいカンロブランドへの認識が更新されていませんでした。自分たちの強みは何かを自問する中で、社員は「非常に高品質な飴を作っている」という高い意識、プライドを再認識し、そのギャップを埋めるべく100周年を機に、研究開発の実力を最高のプレゼンテーションで見せるための新商品開発に着手しました。
 
ヒトツブカンロの立ち上げ
 100周年記念事業として着手したことは、「自分たちが美味しいと思うキャンディー」を「ギフト」という別のポジションに置くことから始まりました。「料理通信」と共同開発された「メゾンドコンフィズリーシリーズ」がおいしさとクオリティでヒットを飛ばしたきっかけで、JR東京駅丸の内地下の「GRANSTA」に直営店を出店することとなりました。スーパー、コンビニで手軽に入る菓子としてではなく、アッパーなコンビニエンスストアともいえる「GRANSTA」で 丸の内OLに手に取ってもらえる商品を開発していきました。商品そのものだけでなく、コンセプトとデザインをつなぎ、パッケージやショッピングバッグ、店舗デザインなども、統一感を持たせるよう、細部に気遣いが感じられます。2012年、創業100年目に開店を果たしましたが、パブリシティも多く取り上げられ、開店当初から多くの来店客で賑わいました。当初の狙いのOLだけでなく、長距離移動者のおみやげや、ホワイトデーの男性客など、リアル店舗だからこそ観察できる購入者像もあります。
 2017年には店舗とコンセプトもリニュアル、「キャンディをギフトへ」のフェーズから、「ヒトからヒトへつながるヒトツブ」とし、ポップアップショップの展開などにもつながってきています。現在では来店者数が年間100万人を超えるまでになり、ますますの発展が期待されます。
 
糖から未来をつくる。
 2017年に新CIを導入しました。糖質制限が「ブーム」とも言えるこの時代にあえて「糖から未来をつくる。」としたのです。糖質は悪いものではなく、個々の人がその人に必要なものを適量摂ることは、私たちのからだにとって、重要なことです。研究開発力にも定評がある同社の糖質に関する研究をバックボーンに、あえてコアコンピタンスに「糖質」を置き、ミッションは「糖を基盤とした事業を通じて人々の健やかな生活に貢献する」と置きました。
 同社には誇れる研究開発力があり、「糖」の性質を理解し、如何にその特性を引き出すことが出来るかを研究開発の最重要課題と位置付けています。これからもロングセラー商品のカンロ飴レシピ変更や健康のど飴ブランドの新商品投入など、研究成果をおいしさに転換した商品を作り出し届けていくでしょう。
 
ヒトツブカンロの今後
 フラッグシップショップとして東京駅店が機能し、今後さらに東京ミッドタウンやソラマチなどで成功したポップアップショップの可能性を追求します。またプロダクトブランドとコーポレートブランドの連携により、さらに安全・安心・高品質な企業イメージを高めることに資する事業として発展させていきます。同社商品のキャンディやグミによる店頭の活性化がますます期待されます。
 
オウンドメディアとしての「ヒトツブカンロ」~質疑応答から
 最後に、参加者との意見交換、質疑応答がありました。キャンディの市場が縮小化傾向にある中で、あえて「糖」を基軸とした多角化に走らず、キャンディ、グミを中心に据えた戦略に、惹きつけられた参加者も多かったようです。また「ヒトツブカンロはストアブランドか?ファミリーブランドか?」という問いに対し「ストアブランドである」との明確な回答がありました。これまではカンロ飴やピュレグミなどのプロダクトブランドと、新CI導入で刷新されたコーポレートブランドで価値を発信してきたカンロですが、今後は新たにストアブランドを立ち上げ価値をつけていくことで、新しいカンロの形が見えてくることでしょう。
 

【サロンを終えて】
 コンビニ店頭で、キャンディ類のコーナーを見てみたら、今やキャンディよりもグミがその面のほとんどを占めていました。そしてそこに並ぶメーカー名は、カンロ、UHA味覚糖、ノーベル、カバヤ、明治、森永・・・。私たちが子供のころ親しんだキャンディメーカーが、しのぎを削っていました。時代に即応した商品を供給しながら、あえてコアコンピタンスに“時代の悪者”「糖」を据え、新商品を生み出していく。その企業が主戦場とする市場のコア素材である「糖」への逆風を、コモディティだからこそ、あえて質や研究開発にこだわり、商品で示して行く。今後益々カンロ飴というロングセラーブランド、ロングライフ企業の展開から目が離せません。
 

集合写真(前列中央 内山妙子氏)
 
(文責:京ヶ島弥生)

 
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