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第107回マーケティングサロンレポート「デザインの力を教育に 〜クリエイターが教育事業で起業するということ〜」

#いまマーケティングができること

第107回 マーケティングサロン:オンライン
「デザインの力を教育に 〜クリエイターが教育事業で起業するということ〜」
日程:2020年6月18日(木)18:30-20:30
場所:Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト: 株式会社コトバノミカタ 代表取締役 本下 瑞穂 氏
サロン委員:小宮 信彦・瀨良 兼司
 
【サロンレポート】
 「デザインの力を教育に」を実践し、経済産業省の女性起業家応援プロジェクト「第5回LED関西」のファイナリストにも選出されている本下氏から、「クリエイターが教育事業で起業すること」について、起業の経緯や事業内容を中心にお話いただきました。
 

ゲストの本下瑞穂氏
 
起業の経緯
 グラフィックデザイナーとしても活動されていることから、冒頭では「『表現にこだわる人』であるクリエイターが教育事業で起業した経緯」について、書き下ろし漫画による紙芝居仕立てでご説明いただきました。
 教育事業への関心は、「TED Conference」のケン=ロビンソン氏による動画で「学校教育は子どもの創造性を阻害してしまっている」というセンセーショナルな言葉に感動をしたことがきっかけでした。ご自身もお子さんをもつ母であり、ひとりのクリエイターとして、「創造性がはぐくめる教育がしたい!」という想いから、コトバノミカタを設立しました。
 関西でも教育熱心な土地柄である宝塚での起業、そこでは「デザイナーのつくった教材を誰が買うと思います?」という厳しい声や、教員免許を持っていないことから講演会がキャンセルになるなど、教育業界の現実(現状)を知ることになりました。「デザイナーだけでは、教育事業をやっていけない」ということを認識し、様々な方のご協力を得ながら、仲間を集めてチームで事業を展開していき、現在に至ります。
 
事業内容
 コトバノミカタは、「デザインで、考える力、伝える力を育む。」というミッションのもと、教材・文具の企画開発・販売を中心に、研修やコンサルティング等を事業領域としています。とくに、デザイン原稿用紙シリーズの「読書感想文が、よく書ける原稿用紙。」「小論文が、よく書ける原稿用紙。」は、脳科学の知見を有するメンバーも参画してデザインがなされています。
 
「読書感想文が、よく書ける原稿用紙。」
 デザイン原稿用紙の第1弾として、①マンガ解説、②メモ用紙、③清書用紙のセットになっている商品です。マンガ解説では、「あたますっきりメモ」によって、読書感想文を「本の説明」「心に残ったこと」「自分のたいけん」「これからしたいこと」に分け、「しつもんくん」というキャラクターが「5W1H」に関する質問をしていくという構成になっています。
 ご自身も「作文が嫌いだった」という本下氏ですが、母親コミュニティでの交流において、文章を書くことに苦手意識を持つ子どもが、自分以外にもたくさんいることに気がつきました。とくに小学校で出される夏休みの読書感想文は、毎年のように、困っている子どもが出ています。読書感想文だけではなく、文章を書く事に苦手意識をもつ子どもが多くいることもわかってきました。この現状をどうにかしたいということから、「読書感想文が、よく書ける原稿用紙。」が生まれました。マンガ解説にメモ用紙と清書用紙が付属しているだけで、なぜよく書けるのか?そこには、「あたますっきりメモ」と「しつもんくん」という工夫がありました。
 困っている子供たちの多くが、本の情報について、「事実」と「自分の頭の中にある感想」を分けて考えることができないことを踏まえて、それらを「あたますっきりメモ」で分ける内容になっています。また、「しつもんくん」という親しみやすいキャラクターからの質問によって、情報の整理の仕方を自分から取り組み、子どもがどんどんコトバにしてくれるようにデザインされています。
 子どもの感想文作成を見守る親も、「しつもんくん」のように子どものサポートをすることで、関わり方が明確になりました。実際に、活用した子どもが読書感想文コンクールで受賞、テレビ番組や大手書店でも取り扱われるなどの成果をあげています。
 

 
「小論文が、よく書ける原稿用紙。」
 デザイン原稿用紙 第2弾では、小学生を対象とした読書感想文から、中高生を対象とした小論文に展開させています。弓道部員の「ディオティマさん」というキャラクターのもと、小論文の書き方を弓道に見立てて解説しています。「的を射た文!」を書くために、「的(テーマ)」「弓(主張)」「矢(文章構成)」になぞらえて描かれています。
 この商品も、先ほどの母親コミュニティから、「小論文で困っている」という声があったことがきっかけでした。中高生を対象としていることから、的と弓と矢の図形で整理しながら、小論文の書き方(進め方)について、イメージを掴むことができるレイアウトで作られています。本下氏からは、ユーザーである中学生の声もご紹介いただきながら、ご説明いただきました。
 
コトバの「見方」を変えるおはなし
 事業内容をご説明いただいた後は、「クリエイターがコトバをどう見ているか」についてご紹介いただきました。対象を①しる、②かんがえる、③つたえる、という「コトバの便利なところ」について、「コトハちゃん」というキャラクターのご案内のもと、参加者を交えたゲームを行いました。サロン参加者には、Zoomのチャット機能を活用して、実際に子どもたちを対象として行なっている内容を、模擬授業形式で体験していただきました。画面に映し出されている記号や漢字(ひらがな)が表している「色」について答えるという内容です。画面には、緑色で書かれた「青」、赤色で書かれた「みどり」など、色と対応していない文字が映し出されました。文字情報と色の情報が異なることで、脳の中で混線が起こる「ストループ効果」を援用したゲームを体験しました。
 このゲーム内容を振り返りながら、デザイナーは、「ストループ効果によって不具合が起こらないように、デザインをしていること」や「意味やイメージをもって教材や授業を行っていること」をご説明いただきました。また、コトバには、「きくコトバ」「みるコトバ」「ふえるコトバ」「コンピューターのコトバ」など、いろいろな見方があることを踏まえながら、コトバの見方を考えるとともに、コトバを味方にすることの大切さをお伝えいただきました。
 
新規事業
 最後に、コトバノミカタの新規事業「かんむりひめプロジェクト」の概要と今後の展望をご紹介いただきました。「かんむりひめプロジェクト」は、2019年に武庫川女子大学の日本語日本文学科設樂研究室との産学連携プロジェクトです。漢字の部首に着目し、子どもたちに漢字に親しんでもらうだけではなく、海外の日本語学習者にも漢字を楽しく学んでもらいながら、人と人、人と自然が仲良くなることに貢献することを目的として取り組まれています。辞書の扉の向こうに広がるブシュニアの国の漢字の妖精という可愛らしいキャラクターが登場する絵本の制作やワークショップの開催を、日本語専攻の大学生と協働しながら行っています。今後は「戦隊モノ」などのシリーズ展開を行うことで、子どもも楽しみながら、未就学児が漢字に興味を持つきっかけになることが期待されます。
 新型コロナ禍である現在では、オンライン講座も実施しており、オンラインによる教育コンテンツの可能性についても、実際に取り組まれている事例を踏まえてお話いただきました。
 
【サロンを終えて】
 本下氏はご自身のことを「アウトサイダー」や「はみ出し者」と称されていましたが、ご講演からは、実体験に基づいたユーザーとしての発想とデザイナーとしての表現力、そしてクリエイターとしての推進力をうかがい知ることができました。また、原稿用紙をモチーフとした着物でご登壇いただくとともに、学生時代の作品からは、発想や表現力が豊かな本下氏の人となりを垣間見ることができました。
 今回ご紹介いただいた取り組みに対して、立ち上げ当初は様々な批判も受けたようです。しかし、実際に子どもたちが使ってくれたことをきっかけにして、母親コミュニティを巻き込んだ企画開発を進めていくことができ、徐々に認めてくれたというお話が印象的でした。
 また、起業や新規事業の立案において、まずは家族や友達、コミュニティで話をしてみる。そこから「なぜか次につながり広がっていく」という展開は、パートナーシップの構築が、あらかじめ計画されているのではなく、取り組みながら紡がれることを物語っていると思いました。コトバノミカタでは、「すべての人が自分のコトバを、自分の人生をかがやかせる未来へ」の実現に向けて、引き続き仲間も募集しながら取り組まれています。
 最後に、ゲストの本下様、積極的に参加いただいた皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。
 

集合写真(画面左上が本下氏)
 
 Zoomでの遠隔開催によって、リアルなイベントとしてのサロンにはなかなかご参加頂けない学会員の方々や、関西以外の遠方からの参加者も、気軽に参加できる機会となりました。質疑応答の時間では、オンライン開催ならではの活発な意見交換が行われ、あっという間の120分でした。関西マーケティングサロンでは今後も、オンライン開催のメリットを生かし、マーケティング・サロンの新たな活性化にチャレンジしてまいりますので、引き続き多数の参加をお待ちしております。
 
(文責:瀨良 兼司)

 
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