ニュースリリース

第119回マーケティングサロンレポート「COVID-19環境下でのシリコンバレーのイノベーション動向」

#いまマーケティングができること

第119回 マーケティングサロン:オンライン
「COVID-19環境下でのシリコンバレーのイノベーション動向」
 
日程:2020年11月21日(土)10:00-11:30
場所:Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト:株式会社デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 取締役COO 木村 将之 氏
サロン委員:海野 浩三・岡田 庄生・白井 明子・清原 康毅
 
【ゲストプロフィール】
木村 将之 氏
 2007年有限責任監査法人トーマツ入社。2010年より、デロイト トーマツ ベンチャーサポートの第2創業に参画し、200社超の成長戦略、資本政策立案をサポート、数多くの企業のIPO実現に貢献。大企業向けイノベーションコンサルティング事業を立ち上げ、現在は執行責任者を務める。Plug & Play, Alchemist Acceleratorなど世界的なスタートアップ育成支援組織でメンターを務める。シリコンバレーと日本に拠点を置き、日本発で世界を席巻する事業を生み出すことへの貢献をミッションとして活動。経済産業省が主催するシリコンバレーの情報を発信するD-Labのメンバーであり、厚生労働省、経済産業省が設置した未来イノベーションWGに有識者として招聘されるなど、精力的に活動を行う。
 
【サロンレポート】
 コロナ禍で世界の経済が大きく変動する中、イノベーションの聖地とも呼べるアメリカ・シリコンバレーの最新の様子について、現地に長く駐在しているデロイトトーマツベンチャーサポートの木村将之さんにお話を伺いました。
 
<スタートアップ投資は依然として活発>
 コロナが世界のスタートアップ企業に与えた影響は大きい。4割以上の企業が売上を40%以上も減少させ、27%の企業が4割以上の人員削減を行なっている。UBERやAirbnbも約25%の人員削減を行なっている。
 このような状況の中でシリコンバレーにおいてスタートアップへの投資が減少しているかというと、そうではない。スタートアップや大企業などのマッチングが、オンラインにより従来以上に活発に行われている。投資額も年間7兆円規模で、コロナ禍においても横ばいとなっている。その理由としては、投資家達が過去のドットコムバブルや金融危機の際の投資の方がその後のリターンは高くなることを知っているからである。
 また、1兆円を超える大型上場が続いている。例えば、ピーター・ティール氏が創業したデータ分析企業Palantirは時価総額が約1兆6千億円、同業のSnowflakeも7兆円となった。一度IPOをとりやめたAirbnbが上場するというニュースも話題になっている。
 
<イノベーションのスイートスポットとは>
 多くのイノベーションがデジタル関連分野から生まれている。デロイトトーマツが実施した270社を対象とした調査でも、新規事業のほとんどがデジタル関連であった。コロナ禍の社会変化を追い風にして、以下の3つの条件を満たしたデジタルビジネスが有望である。これを、私はイノベーションのスイートスポットと呼んでいる。
1. コロナ禍によって新たな顧客ニーズが生まれている
2. デジタル化により従来にはない規模の顧客基盤が得られる
3. コロナ禍の影響で規制緩和が行われている
 
<診断から配送まで、変革が進むヘルスケア産業>
 大きな変革が起こっている産業の一つにヘルスケアがある。コロナ禍で病院や薬局に行くのではなく自宅で診断や処方を行いたいという新たな顧客ニーズが生まれている。このような変化に応じて多くのスタートアップが生まれ、かつてない規模の投資が行われている。例えば、オンライン診断大手のTeladocが買収したのが、イスラエル発のスタートアップ企業で、糖尿病患者向けの測定機器やAIによる個別診断を行うビジネスを展開するLivongoである。風邪のような軽い病気だけでなく、特定疾患にも対応できる技術の登場に注目を集めている。
 また、Amazonの動きにも注目が集まっている。2018年に買収したオンライン薬局PillPackを中心に、オンライン診察サービス「Amazon Care」や、Alexaを用いた飲薬管理、さらには音声のデータも取得できるウェアラブルデバイス「Halo」などを活用し、診断・処方・配送・管理まで垂直統合型でヘルスケアのバリューチェーンをおさえようとしている。日本は未だに紙かFAXでの処方箋が義務付けられているが、電子化が認められればこの分野も伸びるだろう。
 
<バイデン政権は再エネに200兆円を投資>
 このサロン開催の時点で正式には決定していないが、バイデン政権になれば4年間で約200兆円の再生エネルギー産業への投資が行われるとの話もある。また、メガソーラーによる再エネのコストは近年劇的に下がっており、大きな可能性を秘めている。Appleもサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを宣言しているほか、サステナビリティに配慮したファンドも立ち上げている。
 再エネに関連するスタートアップも数多く登場しており、投資も盛んになっている。中でも、著名な投資家であるジョージ・ソロス氏が再エネ関連のスタートアップに投資を行っているのが話題になっている。
 
<ヒトではなくモノのモビリティに注目>
 コロナ禍で公共交通機関の利用に対する懸念が高まるなど、ヒトの動きは低下傾向にある。一方で伸びているのがモノの移動。オンラインショッピングの増加により、モノの移動が増えている。UBERは、コロナ前はライドシェアがビジネスの中心であり、UberEATSは成長事業であったが、現在はその勢いが逆転。フードデリバリーのPostmatesを買収するなど、業績が厳しいなかでもモノのモビリティに投資している。
 モノのモビリティの世界でも、Amazonの動きが注目されている。配送の効率化を狙い、自動運転技術を保有するスタートアップに投資を盛んに行っている。また、EVトラックの導入も積極的に行っている。
 EVといえば、Tesla社の時価総額が急増している。コロナ前に8兆円だった時価総額が現在40兆円にまで伸長している。その理由は、従来の自動車産業とは全く異なるビジネスモデルにある。Teslaはカメラが8個付いている車体を販売しているが、将来的に自動運転が可能になれば、ライドシェアサービス、つまり自分が使わない時間は出稼ぎに行ってくれる自動車を目指している。販売台数は過去最高を記録し続け、走行データもどの自動車会社より蓄積されており、今後の動きが注目されている。
 

写真:木村氏
 
【サロンを終えて】
 コロナ禍でのスタートアップの動きに関する木村さんのお話は、世界のビジネスの流れを感じられる貴重な機会となりました。シリコンバレーに長くお住まいだからこその空気感も感じることができて、これもサロンがオンライン化したからこそ実現したことのではないかと思います。また、コロナ禍だからこそ生まれる新しいビジネスや、挑戦し続けるスタートアップの話を聞くことで、元気をもらえた気がします。
 当日は質疑応答も活発に行われ、「リテール分野はどうなるのか?」「政権交代による産業への影響は」など、その内容も多岐にわたり、時間が足りないほどでした。スタートアップの動きや投資の流れをみることは、未来のビジネスのあり方を洞察することでもある。そんなことを感じたサロンでした。
 
(文責:岡田 庄生)

 
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