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第105回マーケティングサロンレポート「日本マーケティング本 大賞2019」準大賞 受賞記念 『右脳思考』マーケティングサロン ~右脳思考を読み解く~

第105回 マーケティングサロン:オンライン
「日本マーケティング本 大賞2019」準大賞 受賞記念
『右脳思考』 マーケティングサロン 
~右脳思考を読み解く~

 
日程:2020年2月6日(金)19:00-21:00
場所:芳林堂書店高田馬場店8Fイベントスペース
ゲスト:早稲田大学ビジネススクール教授 内田 和成 氏
    早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄 氏
サロン委員:佐藤 圭一・金 泰元・八尾 あすか・尾崎 文則・芦田 裕
 
【サロンレポート】
 「日本マーケティング本大賞2019」にて準大賞を受賞された『右脳思考』の著者、内田 和成 先生と、最新刊『世界標準の経営理論』を同年12月に発売された入山 章栄 先生をお迎えした、「日本マーケティング本大賞2019」準大賞 受賞記念マーケティングサロン。
> 日本マーケティング本 大賞の詳細はこちら
 
 戦略コンサルティングファームのトップだった著者の内田和成先生が右脳・左脳の使い分け方、使うタイミングなどご紹介するとともに、優れた経営者からの学びについて入山章栄先生とディスカッションされるという、早稲田大学ビジネススクールの人気教授のお二人をお迎えした夢のトークイベントに申込が殺到、席数を追加しての開催となりました。
 
右脳思考解題(内田和成先生)
 優れた経営者は、経験や直感を大切にしている。勘・感覚は右脳的、ロジックは左脳的。ビジネスは左脳重視の世界だが、ロジックに加え、感情や勘、すなわち右脳を働かせることで仕事をより効率的に進め、成果をあげられる。
 右脳、左脳の両方を上手く使うためには、右脳→左脳→右脳という順番で考える「サンドイッチ構造」を意識するといい。例えば「IoTの戦略を考えてくれ」という課題を与えられた場合、いきなりIoT戦略を調査するというアプローチはせず、①まず自分の経験や頭の中にあることをサーチしたり、友人に話を聞いたりして、当社でIoTが使えそうなのはどこかというあたりをつける。ここでは勘や感覚といった右脳を使っている ②次に、商品案を具体化してインタビュー調査等で検証するフェーズ、ここでは左脳を使ってロジカルに考える ③最後に提案をプレゼンするフェーズでは、ロジックだけでは相手に響かないことが多く、相手の感情に訴えるよう右脳を使ってアウトプットする。
 右脳と左脳を交互に使う「思考のキャッチボール」を空飛ぶ自動車の例で解説すると、左脳でロジカルに、採算が取れるかリスクや安全性は、と考えると、空から自動車が落ちてきたら大変なことになる、と実現困難に思えるかもしれないが、右脳で発想するとまた違う可能性が見えてくる。例えば、飛ばす場所が過疎地だったら、墜落リスクはそこまで大きくなく、買い物難民へモノが届けられる、救急車の替りになる、離島なら観光で使えるなど、ロジックだけでは見出せないターゲットやニーズを思いつくことができる。このように左脳と右脳とでキャッチボールするように考えることで、発想を広げながら考えを深めることができる。
 
右脳または左脳の活性について(入山章栄先生)
 学者の目線から右脳、左脳の活性化について3つお伝えする。まず右脳の中でも「直感、勘」に関する研究として、ノーベル経済学賞も受賞したダニエル・カーネマン教授の理論がある。人間はまず先に直感が働き、そのあとで冷静さを取り戻し論理的に考えるというものだ。一方で最近の研究では、直感の後に論理ということでなく、両方が並行して、まさにキャッチボールのように行ったり来たりして作用しており、論理思考を深めると直感も深まるという研究が出てきている。優れた経営者で勘が冴えている方は、論理的な勉強も熱心されているケースが多い。
 次に、神経科学分野のマックス・プランク研究所のギゲレンザーらの研究では、今までは過去のデータを多く投入し分析することで未来が予測できていたが、今は過去の延長では予測ができない変化が激しい時代となり、多くの情報変数を入れて分析すると、むしろ予測精度が悪くなってしまうと示した。不確実性が高まっている現代では、どの変数が未来でも通用する変数かを見極めて、情報変数を選別する必要があり、より右脳的な判断が重要になっている。
 最後に、右脳の中でも「感じる」という感情の分野の研究について、人の心理には認知と感情があるが、人間は論理では動かない。近年はエモーショナルインテリジェンスという言葉も注目を集めているが、特にこれからの時代、AIやRPAなどが論理的な処理をするようになると、人には、より感情の部分、右脳的な思考が求められるようになる。
 
対談より(内田和成先生×入山章栄先生)
・ディスカッション、相手を説得するときのスタイル
 入山先生は、相手の話を聞きながらディスカッションをまとめていくスタイル。話をまとめる時は、話の構造を俯瞰して体系化しフレームに落とし込む。整理することで相手に気付きを与える。
 内田先生は、自分の意見を伝えてみて反応を見ながら、また相手の言いたいことを代弁しながらフレームに落とし込むスタイル。
 相手を説得して行動に移してもらうには、相手が何を欲しているかを踏まえた上で、相手に響くような伝え方をすることが大切。例えば新規事業がやりたいと思っている人に、本業建て直しを勧める場面では、「新規事業をやらずに本業をやりなさい」と言っても受け入れてもらえない。例えば「新規事業についても十分触れた上で、その前に本業をやりましょう」や「新規事業はスモールスタートで走らせながら、その間に本業をしっかり建て直しましょう」など、自分の提案が受け入れられるよう工夫して伝える。また口先だけでなく、相手の気持ちに本当の意味で寄り添って(=相手の靴に自分を合わせて)話をするうちに本音が引き出せ、実行に繋げることができる。
 
・発想法
 内田先生は、「ひらめき」が起こる時の構造について、あらかじめ持っていた「問題意識」がキーとなり、その周辺分野の情報を蓄積して脳の「データベース」が備わる、その「問題意識」と「データベース」が作用して、ふとしたきっかけで「ひらめき」が起こるのではないか、と解説。入山先生は、神経科学で言われている脳の弛緩と緊張の話と通じると説明。脳神経科学では、緊張がゆるんだ時に、脳のシナプスが繋がりひらめきが起こりやすいと言われている。入山先生ご自身も一日中研究のことを考えていても、その場ではひらめきは起こらず車を運転している時にひらめくことが良くあり、またデザイン思考で有名なIDEOのトム・ケリー氏もシャワーを浴びている時にひらめくとのことだった。 
 昔から、アイデアを思いつく場所として「三上」=馬上(馬に乗っている時)・枕上(寝ている時)・厠上(便所)という言葉があるが、自分が良くひらめく時の環境を知っておくといい。最近は、すきま時間にすぐスマホを見てしまうが、ぼーっとする時間を意図的に作ることも有効。
 
QAより
Q:運や勘はどうすれば掴めるのか。天才には勝てないとも感じるが、努力で後天的に身に着けることができるものか。自分のアイデンティティを見つめることがヒントになるのか?   
A:(内田先生)自分自身もどこが自分の居場所(=生存領域)かを探し続けてきた。自分にとっての理想の場所は、自分にとって心地よく、相手からも必要とされ、そしてお金にもなるという場所。教育者の藤原和博さんのお話では、100人に1人の存在(1/100)になるのは努力でできるが、1万人に1人の存在(1/10000)になるのは努力だけでは難しい、しかし1/100の領域を2つ持って掛け合わせると1/10000のユニークな存在になれるとのこと。自分がやりたいことをやりながら、ユニークになれる場所を楽しみながら探す旅、と捉えるといいのではないか。
A:(入山先生)自分のやりたい仕事を「アナウンサー」などの名詞で定義するのではなく、「話すのが好き」など、本能的に、自分がどんなことをしたいかという観点で広く捉えていくのがおススメ。自分自身も元々経営学に興味があったわけでなく、最初は経済学者を目指したが、経営学の領域のほうがブルーオーシャンだと感じて経営学者を選択した。「知らなかったことを知って、それを編集・整理して人に伝えるのが好き」というやりたいことがやれる環境を本能的に選んできた。
 
Q:顧客の潜在ニーズ、インサイトを突き止めるための発想法について伺いたい
A:(内田先生)インフォメーション(数値や事実)と違ってインサイト(インフォメーションから何を導き出すか)には正解がない。なるべく多くのことを経験し自分がインサイトだと思うものを発信して、相手にぶつけて反応を見ながら、学んでいくしかない。またそのやりとりを通して自分が価値を出せる領域を見出していくといい。
A:(入山先生)徹底して観察し、徹底して知識を吸収し、徹底して行動して、多様な視点・意見に触れることが重要。(社会学者がエスノグラフィーを経営学と掛け合わせた時に今まで得られなかった発見があった話を受けて)AとBという違うモノを見た時に、共通項を抽出する、抽象化することで本質が見えてくることがある。優れた経営者は例え話が上手なことが多い。
 
終わりに
 右脳、左脳、発想法に留まらず、本の書き方や、人生の転機などのパーソナルなお話、著名な経営者の名言や田舎のご婦人との会話から得た気づきなどなど、非常に多岐に渡るテーマで、お二人のウィットに富むトークに、終始会場は笑いに包まれ、あっという間に2時間が過ぎ去っていました。
 対談では、お二人のスタイルの違いが話題になりましたが、入山先生はあらかじめ骨格を組み立ててはめ込むタイプ、内田先生は思いのままに探索しながら作り上げるタイプとのこと。実務家の視点と学術的な視点が掛け合わさり、様々な話題に脱線しながらも、人気書籍を掘り下げた解説を伺うことができ、大いに脳が活性化された贅沢な時間となりました。 内田先生、入山先生、ありがとうございました!
 
集合写真
集合写真
 
(文責:サロン委員 芦田 裕)

 
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