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第111回マーケティングサロンレポート「新型コロナ危機の下で分極化するアメリカ社会でソーシャル・マーケティングは通用するのか?」

#いまマーケティングができること

第111回 マーケティングサロン:オンライン
「新型コロナ危機の下で分極化するアメリカ社会でソーシャル・マーケティングは通用するのか?」
 
日程:2020年8月1日(土)10:00-12:00
場所:Zoomウェビナーによるオンライン開催
ゲスト:テンプル大学フォックス経営大学院 ウォッシュバーン・チェア 教授 小田部 正明 氏
司会進行:日本マーケティング学会 副会長 / 大阪市立大学 経営学研究科 教授 小林 哲 氏
サロン委員:小谷 恵子・清原 康毅

 
【ゲストプロフィール】
小田部 正明 氏(テンプル大学フォックス経営大学院 ウォッシュバーン・チェア 教授)
 千葉大学卒業後、ミシガン州立大学でMBA,1987年に博士号(Ph.D.)取得。その後、米テキサス大学オースティン校にて准教授、教授を経て、エドワード・クラーク大使百年記念フェロー教授に任命される。1998年にテンプル大学フォックス経営大学院ウォッシュバーン・チェア国際経営&マーケティング教授となり現在に至る。
 

左:司会の小林先生 右:小田部先生
 
【サロンレポート】
 今回のサロンは冒頭でアメリカ人と日本人の思考の違い(アメリカ人はyes/no思考、日本人は中間的な思考)の説明から始まった。その後、現状のアメリカが抱える構造的問題、二極化する社会、それらの社会に対する企業のソーシャル・マーケティングの取り組みについて説明頂き、最後に質疑応答の流れとなった。
 
(1)アメリカの現状
 現在(7/31時点)、アメリカはコロナ患者数及び死者数が世界最大である。患者数は日本の約65倍である。アメリカの4月の失業率は1月と比べ約4倍になっており、日本(1.08倍)と比較すると非常に高い。そしてGDPや株価などの経済へも影響を及ぼしている。
 
(2)アメリカの構造的問題
 この経済の低迷や失業率の高さには、「トランプ政権の新コロナ対策の無能さ(何もしてない)」、「終身雇用・長期雇用契約の慣習もなく労働者の法的保護も少ない」、「労働者(レストラン等のサービス業、組立作業員等)の失業率が高い」などのアメリカの構造的問題がある。失業率は、黒人、ヒスパニック系ばかりでなく、学位を持たない白人(トランプ大統領の圧倒的な支持層)も高い状況となっている。
 
(3)二極化する社会的不満
 アメリカではこの状況に対し、不満が二極化している。Type1(反マスク派)とType2(マスク派)である。Type1(反マスク派)は、主にトランプ大統領の支持層。学位を持たない白人男性。社会的責任より個人の自由を主張する。主にミレニアル世代(20代~30代)に多い。
 Type2(マスク派)は、黒人やヒスパニック系のマイノリティ。この層は経済的格差を痛感しており、コロナの感染率、死者数共に多い。教育のあるアメリカ人もこの層に入り、個人の自由よりも社会的責任を重視するようになってきている。
 
(4)消費者行動の変化
 現在、消費をけん引しているのはミレニアル世代である。この層はインターネットやSNSを使いこなす世代である。この世代の台頭により、オンライン販売は歴史上最高レベルに成長した。そしてソーシャルメディアの企業業績への貢献は、初めて上昇を示している。
 
(5)企業の対処策
 この状況下において企業は①ブランド保証 (Brand Assurance)や②Type IとType II層の消費者への配慮などの対処策を講じている。
① ブランド保証
 ブランド保証とは「価値の維持」、「安全性の確保」、「消費者との強い繋がりの維持」などである。「価値の維持」は航空会社が発行しているマイレージの価値を維持する為、有効期間を延ばすような取り組み。「安全性の確保」は従業員に対する健康保険やマスクの提供など、安全性の確保への努力を伝えることである。
② Type IとType II層の消費者への配慮
 企業はソーシャル(社会的)メッセージを消費者に向け発信。ターゲットを明確にする企業と全般的なターゲットに向けたメッセージを発信する企業に分かれた。ウォルマートはType1を、ナイキはType2を明確なターゲットにしたメッセージを動画で発信した。一方、アップルやアメリカの不動産大手のRE/MAXはターゲットを明確にしないメッセージは発信した。ターゲットを明確にしたメッセージであれば非ターゲット層からの批判を浴び、逆にターゲットを定めていないと「メッセージで何が言いたいか分からない」と広告雑誌からの痛烈な批判を浴びていた。このような状況においてメッセージの発信が、本当に影響力があるのか考えさせられる。
 この問題は地方行政でも対立を生んでいる。ジョージア州知事とアトランタ市長は訴訟まで発展している。アトランタ市ではコロナ患者の急増により、マスク装着を条例で義務付けた。一方アトランタ市が属するジョージア州知事は州の住民にマスク着用は義務付けないと方針を出した。これはジョージア州知事がType1(トランプ派)である事に対し、アトランタ市長はType2(反トランプ派)であり、根深い問題となっている。
 
【質疑応答】
 質疑応答では、「今回の社会の二極化(ソーシャルムーブメント)は以前からもあったのか」、「ソーシャル・マーケティング活動によって企業のブランド価値は上がったのか?」、「アフターコロナ、withコロナ時代の今後のトレンドはどうなりそうか?」など多数の質問が寄せられた。
 
【サロンを終えて】
 普段、あまり意識していないアメリカ情勢ですが、小田部先生の話は非常に興味深く聞く事ができました。アメリカ人と日本人との思考の違い、トランプ派/非トランプ派の政治問題、そしてそれがマスクを装着するかしないかまで発展するとは。マーケティング大国アメリカは本来ターゲティングが得意なはずなのに、このコロナ禍ではそれが機能しなくなっている。悩めるアメリカの実態が良くわかるサロンとなりました。
 最後になりますが、今回のサロンの特徴は何といっても小田部先生がアメリカからご講演頂けた事だと思います。ウェビナーだからこそ実現できたサロンだったと思います。ご講演頂きましたゲストの小田部先生、司会の小林先生、参加いただいた皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。
 

参加者への質問
 
(文責:清原 康毅)

 
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