リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第3回
アグリ&アクアフード・マーケティング
研究報告会レポート
「農業“経営”を考える」

第3回 アグリ&アクアフード・マーケティング研究報告会
テーマ:「農業“経営”を考える」
報告①「ビジネスとしての農業」
上原 征彦 氏(昭和女子大学現代ビジネス研究所 特命教授)
報告②「日本農業の経営課題」
齋藤 訓之 氏(Food Watch Japan編集長)
 
日 程: 2015年9月25日(金)19:00-21:00
場 所:(公財)流通経済研究所 大会議室
 

【報告会レポート】
 2015年9月25日、第3回アグリ&アクアフード・マーケティング研究会の研究報告会が、公益財団法人・流通経済研究所の大会議室で開催されました。農業もビジネスである以上、農家は当然経営者であるはずと見なされています。ところが、実際には、農業を志す人の大多数が「農作業をしたい人」であって、「農業経営を志す人」は希です。このことが象徴するように、農業において「経営の不在」が叫ばれています。「農業経営とは何か」と問われても即答できる農業者もあまり多くありません。当研究会では「農業“経営”を考える」をテーマに設定、『農業経営』を上梓された上原征彦・昭和女子大学現代ビジネス研究所特命教授と齋藤訓之・「Food Watch Japan」編集長をお迎えし、農業を経営するとはどういうことなのか、また、日本の農業が抱えている経営課題とは何なのか、について議論したいと考えました。TPPや農協改革など農業を巡る環境が激変するなか、ニッポン農業は何が必要かを日々悩む人も多いようで、会場には28が集まりました。
 

 講演では上原特命教授が、「ビジネスとしての農業」と題し、まず、明治から現在までの日本の農業について分析されました。上原氏は、①明治から第2次世界大戦までは、地主と小作人による閉鎖的共同体からなる「富国強兵型農業」②戦後から現在は、農協と小作人による共同体生産である(先進国に例のない、農業人口の流出により大農場ができなかったことが原因で)「技術活用型農業」――に変化したが、「今後は、差益売買=イチバ(市場)を通じてマーケティング、すなわち、顧客志向型の方向へ加速する。その意味でも、ブランド化が重要となってくる」と強調されました。
「ブランド」とは、固定客基準(=前に買って良かったからまた買いたい)と名声効果(=まだ買ってないが評判が良いから買ってみたい)の2つの要素があり、「固定客基準と名声効果の相互作用によって、ロングセラー化が実現する。このほど導入された地理的表示保護制度(GI)は、地域ブランドの独占権の保護を目的とするもので、地域間連携によるオリジナリティーの創出や日本全体と地域による『国ブランド』づくりなどに有用」と強調しました。
 
上原征彦氏 齋藤訓之氏
写真左から、上原征彦氏、齋藤訓之氏
 
 続いて齋藤編集長が「日本農業の経営課題」と題して講演。国内の農業の現状を、「販売農家が2005年に200万戸を割り、14年には141.1万戸まで激減するなど、農家の減少に伴い各農家の大規模化も進行。農業経営に転機が訪れている」と分析し、「現在重要となっているのは(トヨタ自動車などのような)優良メーカーの視点。販売力強化(=個々の生産者の生産量増)、BtoC(個人顧客相手のビジネス)とはまったく異なるBtoB(法人顧客相手のビジネス)のブランディング、量と質の安定、買い手の規格を満たす、生産管理技術の改善などが急務」と指摘しました。
 
 ところが、現実には変革や挑戦を嫌がって避ける生産者が多いことからBtoBのブランディングに強い農家はほとんど存在せず、「先行して実践すれば天下を取れるチャンスは大きい」と斎藤氏。「陶芸家が窯出しの際に不良品をはじき、良品だけを高値で販売するような、前々々世紀の家内制工業ではなく、科学的に管理して不良品の発生を徹底的に抑える、廉価な良品を大量に安定供給する、近代農業への早期脱皮が問われている」と結びました。
 
 講演を受けて、会場からは「農家6次産業化の理想的な形は」「BtoBブランディングでは何が一番大切か」といった質問や意見などが出ました。両氏は、農家の6次産業化では「一般農家の知識を超えているバイヤーは多い。彼らがリーダーシップを取っていくのがベターでは」(齋藤氏)、BtoBブランディングについては、「正直であること、ウソをつかないこと、説明できること」(上原氏)とコメントするなど、終了ギリギリまで活発に意見交換がなされました。
 
ディスカッションの様子① ディスカッションの様子②
ディスカッションの様子

 
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