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研究報告会レポート

第11回ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会レポート「マザーハウスの社会共生経営 ― お客様の心を動かす商品、お客様とともに生きていく商品を作る ―」

第11回 ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「マザーハウスの社会共生経営 ― お客様の心を動かす商品、お客様とともに生きていく商品を作る ―」
講演者:株式会社マザーハウス 取締役副社長 山崎 大祐 氏

日 程:2016年5月17日(火)19:15-20:45(その後、会場にて懇親会)
場 所:株式会社マザーハウス本店

 

株式会社マザーハウス 取締役副社長 山崎大祐氏 略歴
 慶應義塾大学総合政策学部にて経済学を専攻し、竹中平蔵氏のゼミに在籍。卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。日本法人で4人しかいなかったエコノミストの1人として市場分析や投資関連事業に従事する傍ら、大学時代にゼミの後輩だった山口絵理子さんを手伝い、マザーハウスの立ち上げに参画。2007年、ゴールドマン・サックス証券を退社し、マザーハウスに入社。現在、同社の副社長として活躍する。
 

●はじめに
 ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会(第11回)は、株式会社マザーハウス 取締役 副社長 山崎大祐氏をゲストにお招きした。研究会会場はマザーハウス本店の売場をご厚意により提供頂き、マザーハウスの商品、スタッフが自ら手がけた内装に囲まれた会場で、山崎氏のお話をより深く理解する研究会となった。
 
会場のマザーハウス本店
会場のマザーハウス本店
 

●「ソーシャルを言い訳にしない」
 マザーハウスは、2006年に、社長を務める山口絵理子氏が設立した、バッグ、アクセサリーなどを製造、販売する企業である。現在、国内18店舗と海外に7店舗の直営店を持つ。また、バングラデシュにレザーバッグ工場としては国内三番規模の180名の従業員を抱える自社工場を持つ。さらにネパール、インドネシアに生産機能を持っている。
 マザーハウスでは、「ソーシャル・ビジネス」という言葉を社内で極力使用しないようにしていたという。「ソーシャルを言い訳にしない」ことが理由だ。社会課題を解決している事業だけに頼ることなく、商品単体としても価値を高く評価してもらい、その商品の背景にあるストーリーを店舗スタッフ、店舗、イベントなどを通じて理解してもらい、メーカー、小売の基本原則に磨きをかけることを社内に浸透させるためである。
 

●途上国独自資源の発見
 企業の沿革をビデオを交えて説明を頂いたあと、企業の理念、商品企画・生産、店舗開発、社員との関係について説明を頂いた。我が国おける小売店の可能性、発展途上国におけるものづくりの可能性そして、ソーシャル・ビジネスの可能性を確認することができた。
 商品企画・生産については途上国と言う共通点はあるが、バングラデシュ、ネパール、インドネシアへの展開は、その国、その地域でしかできない可能性を見出す中で必要な地域を選定している。製品としての付加価値の源泉は、この資源の発見と新たな製品価値の組合せを創造することにある。そこに途上国という要件がはいることで社会課題の解決にもつながる。一般の商品企画と考え方は同じであるが、安価な労働力という資源以外に途上国独自の資源を発見できるかにある。
 

●ストーリーを伝える
 全て直営の店舗がマーケティング上、重要な役割を果たしている。山崎氏の言葉を借りると「商品の向こう側にストーリーがあり、そのストーリーを伝える」ことが重要である。店舗およびそのスタッフは、ストーリーを伝える役割を担っている。店舗は路面店が多く、しかも内装は店舗スタッフが手がけるという。路面店が多い理由は各店舗独自企画のイベントを実施し易くするためである。研究会当日は時間を2時間ほど繰り上げて頂き会場の本店を閉店すると、社員の皆さんが手慣れた動作で手際よく会場を設営していった。聞けば、各店舗の顧客向け、あるいは顧客とは関係なくオープンなイベントを月に何度も実施しているという。例えば、副社長の山崎氏と多様なゲストとの対談をトークセッション形式で行う「マザーハウス・カレッジ」、あるいは、中心商品の革素材に触れてもらう機会をつくる「オリジナルレザーカバーづくり」などである。
 
会場の様子
 
●顧客との関係をつくる
 ストーリーを伝える工夫は店舗だけではない。旅行代理店のHISと組んで、バングラデッシュの直営工場でバッグをつくるツアーを定期的に実施している。これらの活動は顧客との関係を構築し、マザーハウスのファン育成と維持につながっている。それ以外にも年に1回実施されるマザーハウス商品を持つ顧客しか参加できない「お客様総会」を開催している。この「お客様総会」第一回目は30名の参加者からスタートし、現在は200人の規模になっている。この会では、顧客からの質問に丁寧に回答の場を設けているという。このような顧客との関係とその距離が広がらない仕組みを構築している。
 このように、社会課題に注目をしつつも、その課題を直接解決するのではなく、課題の中に有効な資源を見出し、その資源を商品、サービスの価値に結びつけていく仕組みをうまく構築している。
 

 
 研究会の後半はフロアからの質疑へ。マザーハウスの社員の方々にも登壇を頂き、山崎氏と共にお話しを伺った。バングラデシュでの生産活動、経営者として「これだけは行わない」と決めていること、ソーシャル・ビジネスの可能性など多様な質問が提示された。引き続き会場をお借りして行われた懇親会では、日本マーケティング学会副会長の古川一郎先生の乾杯発声の後、山崎副社長、社員の方々、参加者を交えて活発な意見交換が行われた。
 

 
おわりに
 外資系製造業、金融機関、エアラインなどさまざまなキャリアを持つ社員の方々が集まるマザーハウスだが、どの社員の方々も商品やその背景についての知識が豊富であり、会社の理念についても全員に浸透している印象を受けた。
 「発展途上から世界に通用するブランドをつくる」理念のもと、「お客様の心を動かす商品、お客様とともに生きていく商品を作る」ことを目指し、全社員が一体となり取り組んでいることがうかがえた。
 今後、日本を代表する世界ブランドが生まれ、途上国の新たな可能性が開けることを期待している。
 山崎副社長、マザーハウス社員の皆様、参加者の皆様に心よりお礼申し上げます。

 
集合写真
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