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研究報告会レポート

第1回デザイン思考研究報告会レポート「コト(経験)、モノ(製品)、ミチ(流通・普及)のデザイン-地域創生×デザイン思考」

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テーマ:「コト(経験)、モノ(製品)、ミチ(流通・普及)のデザイン-地域創生×デザイン思考」
ゲスト:有限会社 セメントデザイン 代表 金谷 勉 氏
日 程:2016年9月20日19:00-20:30
場 所:有限会社 セメントプロデュースデザイン 本店

 

【金谷勉氏 略歴】
 京都精華大学卒業後、企画制作会社に入社。その後広告制作プロダクション「株式会社ズーム」へ。1999年10月「CEMENT PRODUCE DESIGN」を設立。2002年 法人化。大手企業のデザイン事業と、近年は地域創生の分野で活躍。「次世代の日本」をテーマに、商品の魅力、産技術の魅力、産地の魅力を創造し事業化する拠点「coto mono michi」を東京青山にオープン。
 

 
【研究会実施概要】
 事務局よりデザイン思考の概要について報告を行った後、金谷氏から具体的な取り組み事例を紹介頂いた。金谷氏が代表を務めるセメントデザインは、各産地、地域の中秋企業を対象に、資金、資源が少ない状況の中から事業創造に結びつけ成果を上げている。1時間強のお話しの後は、会場からの質問を頂きながら議論を進めた。石井淳蔵先生からは、価値を創造するアプローチと、価値を広げるアプローチとの連係の重要性が指摘された。同時に価値を広げて行くアプローチにおける価値を受容した顧客の特定と、同時に顧客が見出した価値の確認の重要性が指摘され、デザイン思考とマーケティングを結びつける手がかりとなる議論となった。
 

 
 当日紹介された事例の中からいくつかを紹介しよう。
 
●Happy Face
 金谷氏がはじめて手がけた製品が「Happy Face」。東大阪の金属加工メーカの技術を活用した金属クリップである。金属加工メーカとしては消費財開発の足がかりとなった。発売後15年経つ今も売れ続けるロングセラーである。金属加工メーカが持つ薄型金属に高精度でプレスを行う技術を、文具のクリップに結びつけるだけでは、その技術の用途を創造したことにはならない。笑顔(スマイル)の形状のクリップにすることによって、使い手に従来の書類を束ね留めする機能以外の価値を生み出しはじめて社会にポジションを確立できた。この商品はその後の価値創造のモデルとなり、在庫、原価の仕組みを理解するきっかけになった。
 

http://store.coto-mono-michi.jp/
 

●Sabae Mimikaki
 2013年グッドデザイン賞、2016年「おもてなしセレクション」を獲得したメガネ産地鯖江市と協働開発「Sabae Mimikaki」は、イタリア製メガネセル(セルロースアセテート)の素材と鯖江のメガネ製造業が持つセルとメタルの組合せ技術をうまく活用した商品である。価格は耳かきとしては破格の一本3900円。素材単体では天然素材(綿花)を原料とするため人体のアレルギーが少ないが、柔軟性が高く熱に弱くさらに価格も高い。メガネ以外に用途がなさそうな素材である。肌に触れるが高価格帯商品が存在しない耳かきへの用途を開発。さらにその着想だけでなく、ギフト耳かき市場のデザイン、売場における存在感を示すおよびギフトとしての価値を高めるため、あえて箱形のパッケージをデザインした。
 

http://store.coto-mono-michi.jp/
 

●face to face
 熱海の木工加工企業は、木工の直線加工の技術、加工機械の資源しか存在しなかった。もともと旅館の建具(木製品)の製造を事業としていたが旅館の減少と木製製品需要の減少に伴い事業の縮小を余儀なくされていた。事業の後継者が有するレーザー加工機とその技術を活かしてデザインされた製品が、「ウッドプレート(face to face)」。素材は吉野杉を使い、片面はカッティングボード(まな板)として、もう片面は料理プレートとして使用できる。料理プレート単に料理を並べることができるだけではない。そこにはどのように盛り付ければ良いのかが彫刻してあり、誰もが料理の綺麗な盛りつけができる価値を生み出した。販売面では、プレートをギフトそして展開しつつ、旅館への取引(営業)資源を活用し星野リゾートへの納品と業務用用途への展開をも実現した。
 

 
●おわりに
 金谷氏の活動の特徴は、単なる色、形のデザインだけではなく、新たな経験を創造するところにある。経験と製品と流通・普及を連動してデザインする活動であることを確認すると共に、そこに存在する思考法と具体的手法についてお話しを頂いた。成果の要点は今回のテーマでもあった、①コト(技術)、モノ(意匠)、ミチ(売場)と、話の中で提示された、②点、線、面にある。①については、技術を活かすにはモノ、ミチの組合せが必要であること。②においては点から線へ、線から面への展開を一般的に考えてしまう。しかし中小製造業、伝統技術の場合は、際だった点を、売れすぎず、売れなさ過ぎずの規模で創造し続けることによって、技術の存在を維持できることが示された。これらの成果は、日本型のスタートアップ育成の活動、育成のプログラムとしても評価できる。
 当日は台風16号の影響で鉄道ダイヤも乱れる中、多くの方々に参加頂き、報告会後の懇親会も時間を大幅延長して23時頃まで金谷氏および学会員間の交流が行われた。
 金谷勉氏、セメントデザイン社員の皆様、参加者の皆様に心よりお礼申し上げます。
 
(近畿大学 廣田 章光)
 

 
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