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研究報告会レポート

第10回ソロモン流消費者行動分析研究報告会レポート 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第7回)

第10回 ソロモン流消費者行動分析研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第7回)
日 程:2016年10月13日(木)18:40~21:10
場 所:法政大学 市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階 研究所会議室5
 
構成:
1. 18:30〜19:40 第13章 ステイタス―なぜモノが集団のシンボルになるのか?(50分講義、20分質疑)
 講師:北村 真琴(東京経済大学 経営学部 准教授)
(19:40〜19:50 休憩)
2. 19:50〜21:00 第14章 サブカルチャー―日本人は全員納豆好き?(50分講義、20分質疑)
 講師:大竹 光寿(明治学院大学 経済学部 准教授)
 

【報告会レポート】
 今回の研究会では、『1からの消費者行動』の13章と14章について模擬講義が行われました。編者のひとりである法政大学の西川先生から、今回のテーマである「社会的存在としての消費者」について説明がなされ、本書における2つの章の位置付けが確認されました。
 アイスブレイクの後は、「ステイタス」に関する北村先生の講義です。教科書のショートストーリーの内容に加えて、先生ご自身の海外経験を踏まえて、現代社会にみられる社会的地位に関わる消費が紹介されます。そこで織り交ぜられるのは、顕示的消費や文化資本といった概念を理解する上で手がかりとなる事例です。その後、ステイテスとしてのモノの消費が検討されていきます。消費の外部効果、すなわち消費者の需要における他者の影響については3つに整理され、それぞれの影響をうまく利用したPOP広告の例が示されました。また、一貫したイメージを備えた複数のモノが組み合わせられるというディドロ効果については、実際に行われた消費者調査をもとに、参加者の皆さんに問いかけながら講義が進められていきます。
 さらに、流行に関する理論としてトリクルダウン理論が取り上げられ、この理論に対する反論や修正について検討されました。モノは、所属する階級や出自を示す手段となり、より上の階級に移動したり、そう見せかけたりできるようなモノが流行する点が説明されました。こうした流行に関する理解を踏まえて、有閑階級や上流階級が持つ3つの資本(経済資本、文化資本、社会関係資本)が、事例を通じて解説されていきます。所属する階級は、モノに加えて、審美眼や教養といった文化資本にも現れることが説明されました。
 古典的な議論を踏まえたステイタスに関わる様々な概念や理論に関する講義でしたが、具体的な事例が織り交ぜられた講義は、初めて消費者行動論を学ぶ方にとっても理解し易かったのではないでしょうか。大学で講義を担当する執筆者一同も、難しい概念や理論を噛み砕いて理解を促す講義に圧倒されました。
 
北村先生(講義風景)
 
 研究会の後半は、本レポートの執筆者、大竹による「サブカルチャー」についての講義です。最初に、サブカルチャーという言葉が意味するものは単に「オタク文化」に限られない点を、事例を交えて紹介しました。『ソロモン消費者行動論』(丸善出版)で示された枠組みを踏まえつつ、サブカルチャーの定義を確認し、その代表的なものとしてマイクロカルチャー(趣味)とエスニシティ(人種・民族)を取り上げていきます。物事の良し悪しや好み、ライフスタイルを共有する集団には、特有の言葉や暗黙のルールといった文化が共有されていることを、AKB48のファンクラブ「二本柱の会」などを事例に確認します。また、大型二輪車ハーレーダビッドソンを事例に、ブランドコミュニティについて説明を加えていきました。
 続いて、日本国内におけるエスニシティの多様性を確認し、外国から来た人が現地の文化に適応するプロセスや、特定のエスニシティと関連付けられたモノがその起源を離れて他の集団に受け入れられること(脱エスニック化)などを紹介しました。最後に、マイクロカルチャーやエスニシティには、過度に一般化されたイメージ、すなわちステレオタイプが社会一般で共有されている場合があること、また、ステレオタイプを利用したプロモーションについても検討しました。
 私個人としては、サブカルチャーに関する概念や理論を、実務と関連づけて講義していく難しさを痛感しました。講義終了後には、実務家の方々から、ブランドコミュニティに関する研究について関心を持っていただき、再度、意見交換の場を持つことになりました。若手の教員としては、このような貴重な機会をいただけることを光栄と思うとともに、今後の講義の改善点を浮き彫りにする機会ともなりました。
 
大竹先生(講義風景)
 
(文責:大竹光寿)

 
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