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研究報告会レポート

第18回価値共創型マーケティング研究報告会(春のリサプロ祭り)レポート「マーケティング研究におけるサービス視点 -サービス・ドミナント・ロジックとサービス・ロジックの比較-」

第18回 価値共創型マーケティング研究報告会(春のリサプロ祭り) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「マーケティング研究におけるサービス視点 -サービス・ドミナント・ロジックとサービス・ロジックの比較-」
日 程:2017年3月18日(土)14:45-16:15
場 所:中央大学後楽園キャンパス

 

【報告会レポート】
報告1「マーケティング研究におけるサービス視点 -サービス・ドミナント・ロジックとサービス・ロジックの比較-」

大藪 亮(岡山理科大学 総合情報学部 准教授)

大藪先生 大藪先生は、最初にVargo and Luschが主張するサービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)を理解するためのポイントをご説明になりました。また、S-Dロジックを積極的に批判するGrönroosがサービス・ロジック(Sロジック)を主張し、価値共創の議論は大別して2つの存在があることをご説明になりました。そのうえで、S-DロジックとSロジックの共通点、相違点を整理していただきました。この相違点を検討する上で欠かせない視点を3つ(「価値」「価値共創」「価値提案」)挙げていただき、双方にどのような解釈の違いがあるのかをご説明戴きました。
 本日の大藪先生のご報告で重要なのは、S-DロジックのいうValue in Contextと、SロジックのいうValue in Useには違いがあり、それは双方の研究背景と結びつけて理解する必要があるとしたことです。当初、Vargo and Luschは、価値共創によって生じる価値をValue in Useと示していましたが、修正して以降はValue in Contextで統一されています。そのため、2つの概念に隔たりを感じさせない印象もあったのですが、Grönroosの積極的な批判から、その違いは浮き彫りになってきたといえます。Sロジックが企業と顧客のダイアド関係に強い関心を持ち、企業側の直接的な相互作用を重視しているのに対し、S-Dロジックは、価値は文脈に依存すると示しており、ダイアド関係に留まらない関係も射程に入れています。また、サービス交換の広がり(ネットワーク)を捉えようとする議論が豊富で、こうした視点をSロジックは持ちません。実務へのインプリケーションを多く含むのはSロジックであり、他方、S-Dロジックは実務への含意を開発することを目的としていません。そのため、S-Dロジックは、現象を捉えるための視点として議論が広がっています。つまり、実践的な視点はSロジックから得られる可能性が高いといえます。こうした研究の展開を確認していただきました。
 

報告2「新しいマーケティングの領域と論理 -価値共創マーケティングの構築-」

村松 潤一(広島大学大学院 社会科学研究科 教授)

村松先生 村松先生は、S-Dロジック、Sロジックの議論によって本格化した、顧客の消費プロセスへの探究を進展させることが、価値共創マーケティングには求められるとご指摘になりました。このことを考えるうえで、従来のマーケティングと価値共創マーケティングがどのように違うかを正しく理解することが求められます。従来のマーケティングは、生産プロセスの解明に主眼を置いたものだといえます。これは、マーケティングが製造企業の問題解決アプローチとして誕生したことに始端とし、顧客を企業活動に取り込むマーケティングが志向されてきたことに象徴されます。ところが、消費プロセスに入り込むマーケティングが求められる局面においては、顧客の消費プロセスの正確な理解とそこでの関与が求められます。こうした視点の転換が必要になるといえます。
 こう考えていくと、マーケティングは時空間に目をやる必要があります。いつ、どこでマーケティングを考え行うのかが再検討される必要があり、パラダイムシフトが求められているといえます。このことを考えるうえで、村松先生は4Cアプローチ(Contact, Communication, Co-Creation, Value in Context)が有効であると指摘しています。この順番でマーケティングを再検討すると解りやすく、消費の文脈に関与することが可能だといえます。
 さいごに、顧客にとっての価値に寄与する企業活動を考えようとすれば、あらゆる企業がサービス企業である必要があります。むしろ、サービス企業としての自覚が必要になるのであり、顧客の生活世界での価値の共創が求められるといえます。村松先生は、価値共創マーケティングを考えるうえで必要となる視点の転換について、独自の考え方を加えながら提示していきました。
 

報告3「小売業における文脈インサイトの動向 -各社の事例にみる新しい解釈の試み-」

今村 一真(茨城大学 人文学部 准教授)

 価値共創マーケティングへの関心が高まるとはいえ、企業活動はそれより以前から継続しています。ですから、パラダイムシフトが急に企業活動に反映されることはないといえます。しかし、企業は問題意識を持ちながら活動を変化させて対応しているといえます。こう考えると、価値共創マーケティングについて事例を用いて議論しようとする場合、①すでに価値共創マーケティングが実践されているが、理論的含意抜きに存在している例や、②事例を細かくみていくと、価値共創マーケティングへの転換が意図されていると解釈できる例が存在します。このような分類に基づき、①②それぞれについて、事例に基づく議論を進めました。
 事例のうち①は食品スーパー、②はコンビニエンスストアの事例を用いた議論であり、両者とも顧客のアクティビティにインパクトがあると考えることができます。ここでいうアクティビティとは、買い物するために店に行くといった行為や、購入したものを使用・消費するといったものです。研究報告から明らかなのは、①は、従業員の飽くなき顧客理解によって品ぞろえを変化させ、購買後のアクティビティを最適化させるといった効果を発揮すると解釈できるものでした。②は、店舗が有する機能を異業種とのコラボによって進化させることで、品揃えが変化するだけでなく、顧客の日常生活のアクティビティにおける無駄を改善し、アクティビティを再構成する力があるといえます。②における新たな挑戦は、店舗を利用する顧客のアクティビティを再構成する効果があり、店舗の利用によってアクティビティの順番が変わるとともに、生活の質を高めることが可能になります。②において企業は、顧客の生活動線内での活動にどのような価値が付与できるかどうかを検討している訳ですが、顧客から見れば、動線内の機能向上に寄与し得るか否かということになります。機能向上に寄与し得ることが明確で、顧客からの理解が進むと、アクティビティは再構成され最適化が進みます。企業側からみれば、小商圏における戦略の転換に過ぎないかもしれませんが、新たな視点でみたとき、確実に顧客の消費プロセスにインパクトを与える取り組みが推進されているといえます。こうした議論から、消費の文脈にインサイトする企業活動の開発が可能になるのではないかと考えられます。このような視点に基づき、新しい研究の成果を示しました。
 

謝辞
 今回は、リサプロ祭りへの参加ということで、アクセスも良く落ち着いた環境で研究会を開催させていただきました。広い会場を確保していただき、当初は戸惑いもあったのですが、多くの参加者に恵まれ盛会になりましたことを、心よりお礼申し上げます。
 本研究会は、次年度も年間4回の開催に加えカンファレンスでもブースを出すことができればと思います。皆さんの関心にお答えできるよう企画して参ります。また、共同研究のご提案や報告のお申し出もお待ちしておりますので、遠慮なくお問い合わせください。
 
会場の様子 会場の様子
会場の様子
 
文責:今村 一真(茨城大学 人文学部)

 
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