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研究報告会レポート

第13回ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会レポート 地方創生と「つなぐ力」 -「お好み焼きアカデミー」の取り組みと地域資源活用と産業化

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テーマ:地方創生と「つなぐ力」 -「お好み焼きアカデミー」の取り組みと地域資源活用と産業化
講演者:広島経済大学 経済学部 教授 細井 謙一 氏
    オタフクソース株式会社 ウッドエッグお好み焼き館 館長 松本 重訓(まつもと しげのり)氏

日程・場所:2017年2月20日(月)14:00-17:30 広島経済大学 立町キャンパス
      2017年2月21日(火)10:30-12:00 オタフクソース株式会社本社 

 
 第13回のソーシャル・メディア&ビジネス研究会では、地方の抱える社会課題の一つである自立経済の構築に注目し、広島地区の独自の食文化であるお好み焼きを中心としたネットワーク構築と海外を含めた普及を行う一般社団法人お好み焼きアカデミーと、広島県を拠点に事業展開を行う「オタフクソース」(一般社団法人お好み焼きアカデミー事務局)をとりあげた。
 地域企業、地域商業者、行政そして大学が連携し、日本全国にお好み焼き市場を広げ、同時に商業、メーカーが連携し地域産業として育成していく活動と、さらに世界に向けてその活動を展開する仕組みについてお話しを伺った。
 
第1部 オタフクソース株式会社 ウッドエッグお好み焼き館 館長 松本 重訓氏の講演
 講演者の松本氏が所属する、お好み焼き館とは、お好み焼きに関する情報発信や、お好み焼き店の開業のサポートを行う部署である。
 広島地区には現在、5社ののソースメーカーがあるが、そのうちの一つがオタフクソースである。オタフクソースは、1938年に醸造酢の製造を開始し、そこからメーカーとしての活動をスタートさせている。現在でも食品酢の生産を行っている。特にらっきょう漬けに使用する酢はトップシェアである。酢の醸造、そして配合の技術を活かしてソース分野に参入した。
 ソースは味噌などと同じように地域による嗜好差が大きな商品である。しかしこのオタフクソースは全国で販売されている。広島焼きの甘さの効いたソースが全国に市場を形成できた理由が、お好み焼きを食べる顧客、料理する顧客を育てること、そしてお好み焼きを提供する飲食店を育てることである。さらに、これらの活動は、子供のコミュニケーション、家族コミュニケーション、心と体の健康、地域観光と言った、社会、地域の課題(ソーシャル課題)と連動させている。
 お好み焼き店舗のマネジメントレベルをあげるため全国で開業者向けに行う、「開業セミナー」、子供達にお好み焼きを食べてもらうため地域を専用車で巡回する「団らん号」、大学祭でお好み焼きを調理、食べてもらうための機材貸し出し、指導などである。これらの活動をさらに発展されるため、地域キャベツ農家との連携なども試行している。
 

 
第2部 お好み焼きアカデミーの取り組み
 細井先生からは、広島お好み焼きの歴史、お好み焼きの進化、普及のプロセスと、観光資源としてのお好み焼き店舗を活用した取り組み、お好み焼きアカデミーの設立について講演を頂いた。
お好み焼きアカデミーは2014年4月に設立された、一般社団法人である。原爆投下によって焼け野原となった広島において庶民の食べ物として郷土食であった「一銭洋食」が復活し、広島復興に向けて活動する人々を支えた食べ物として「広島焼き」として発展していった。このとして広島焼きにとらわれずお好み焼きを、平和、復興の象徴として位置づけ、お好み焼きを世界に広げ、食糧危機、地域のコミュニケーションの促進など社会課題解決を目指した活動を行っている、代表理事の佐々木茂喜氏は、オタフクホールディングス株式会社の代表取締役社長である。
 

 
 広島県内にお好み焼き店は1767店舗、広島市内にその約半分の892店舗が集中している(日本全国では16000店舗)。広島市内のお好み焼き店はコンビニエンスストアの数より多いとのこと。一方で、広島県内のお好み焼き店の廃業率は低くない。新規参入も多いが廃業も多い。競争の激しさと共に商業としてのマネジメント能力が低い店舗も混在している。
 お好み焼きアカデミーは、日本や世界にお好み焼き市場を広げつつ、特に個店間のネットワークによる共生基盤を整えつつ、その基盤を調味料、食材などへも拡張することによって産業基盤につなげる試みである。
 2014年5月に設立され、その年にはニューヨークでの食イベントへお好み焼きアカデミーとして出展。2015年には、お好み焼き検定にむけたガイドブックの発行。そして昨年は広島市内のお好み焼き店の特性を細井先生が開発した特性尺度に従って各店舗が自己評価を実施。その評価を一覧にした配布物を作成している。
 多様な個性を持つお好み焼き店が、同じ物差しで一覧できることによって、外国人・日本人観光客にとって有効なツールとなり、複数の店舗をめぐるような行動の促進につながっている。広島の人々は、なじみの店をもっているため、それ以外の店舗を知らない、訪れないという飲食行動を、このツールによってなじみの店以外を訪問するなどの新たな行動の創造につなげている。
 


 
(報告書作成:廣田 章光)

 
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