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研究報告会レポート

第3回マーケティング・ツールとしての知的財産研究会(春のリサプロ祭り)レポート「マーケティング・ツールとしての知的財産情報と知的財産権」

第3回 マーケティング・ツールとしての知的財産研究報告会(春のリサプロ祭り) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「マーケティング・ツールとしての知的財産情報と知的財産権」
日 程:2017年3月18日(土) 13:00-14:30
場 所:中央大学後楽園キャンパス

 

【報告会レポート】
 第3回の研究報告会では、前半、伊藤特許事務所・弁理士でAIPE認定シニア知的財産アナリスト(特許)の井上貴夫氏に「マーケティング・ツールとしての特許情報と特許マーケティング理論(概論)」というテーマで、後半、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社・知的財産グループ シニアヴァイスプレジデントの小林誠氏に「マーケティング・ツールとしての知的財産権とその活用」というテーマで発表頂きました。
 
 前半の井上氏からは、マーケティングに特許情報を活用する意義について、特許情報は、技術情報の一部であり、洗練された情報であるため、特許情報をマーケティングに活用することにより、例えば、競合新製品の先読み、多面的分析による新付加価値ベースの新製品開発が可能となることをご説明頂きました。
 また、知財情報戦略が、知財情報解析をフル活用して知財経営に資する戦略提言を図ることと定義される点については、特許情報ではなく知財情報と称するのは、製品情報、企業情報及び市場情報等の非特許情報をも取扱対象とするためと説明頂きました。なお、解析は、検索ステップ(前工程)と、分析ステップ(後工程)とからなるとのことです。
 次に、3Cをベースに知財情報戦略に基づく特許マーケティングの理論概要と実践事例については2つの事例を解説頂きました。1つ目は自社・他社の知財情報と市場情報の補完による有望市場/用途探索調査の解析事例、2つ目は自社・他社の知財情報と市場情報の補完によるアライアンス/売込先候補探索調査の解析事例です。
 さらに、サイテーション法に基づく特許マーケティングの理論概要と実践事例についてご説明頂きました。サイテーション(他社被引用)とは、例えば、自社出願を引用した他社後願に着目した方法であり、特に異業種・異分野の他社出願にヒントを見出すものであり、サイテーション法は、国内外企業に共通に適用でき、効率性・網羅性を有する点について解説頂きました。今回は特に、サイテーション法を活用した有望用途探索調査の事例についてご紹介頂きました。
 後半の小林氏からは、まず、特許データを用いた新規事業開発テーマの検討について解説頂きました。具体的には、特許データを用いて、“技術”を起点に応用・用途展開を分析し、特定の製品・領域に捉われない、新規事業開発を検討方法について、以下の2の手法を紹介頂きました。
 
① テーマスケープ分析
 これは、特定領域の特許データ母集団からマップを作成(可視化)し、関連技術の特徴・用途を俯瞰的に分析する手法のことです。他社の注力領域・技術開発動向を踏まえて、新規参入領域を検討でき、ホワイトスペース、ブルーオーシャンを発掘できるとのことです。ケーススタディとして、化学メーカーがライフサイエンス事業に新規参入する際の具体的な事業・製品領域の検討事例を紹介頂きました。
 
② 被引用分析
 これは、対象特許データの引用・被引用による技術的関係性に着目し、異分野での応用・用途展開を分析する手法のことです。客観的(審査官)判断による事実から、技術的関連性の内容を把握し、特に異分野における技術開発ニーズから、具体的な応用・用途展開を検討できる。ケーススタディとして、電機メーカーの保有する半導体関連特許を起点に、異分野への具体的な応用・用途展開の検討事例を紹介頂きました。
 
 続いて、市場拡大を目的とした知的財産の活用について解説頂きました。
具体的には、ケーススタディとしてGoogleの事例を紹介頂きました。Android事業を保護するために、自前出願、企業買収、特許購入等のあらゆる手段を用いて特許ポートフォリオを充実させたGoogleが、さらに知的財産の活用として、他社との包括クロスライセンスの締結やOSS団体への参加を通じて、技術のオープン化(無償)によるビジネス・エコシステム構築を図っていることを解説頂きました。さらに、Googleのビジネスモデルにおけるオープン・クローズ戦略を説明し、市場拡大とシェア向上を同時に実現していることを紹介頂きました。
 最後に、デザイン・ドリブン・イノベーションと知的財産権の複合的活用について解説頂きました。具体的には、ケーススタディとして、アップルのデザイン重視の知財戦略(デザイン・ドリブン・イノベーション)と、アップルとサムスンの訴訟事例を紹介頂き、特許権(技術)だけではなく、意匠権(デザイン)や商標権(トレードマーク)も組み合わせて複合的に活用することで、事業・製品価値を向上させることができることを解説頂きました。
 
【報告会を終えて】
 知的財産(特に特許)の基本知識がないと理解が難しいテーマであったにも関わらず想定以上の方々にお集まり頂き、多数の質疑応答がありました。
 引き続き、本リサーチプロジェクトを続けて行きたいと考えております。
 
(報告者:プロジェクトリーダー 杉光 一成)

 
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