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研究報告会レポート

マーケティングカンファレンス2017 スポーツマーケティング研究報告会レポート「スポーツ×ブランディング」

スポーツマーケティング研究報告会(マーケティングカンファレンス2017) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「スポーツ×ブランディング」〜スポーツの価値創造に向けたブランド戦略
日 程:2017年10月22日(日)9:00-10:30
場 所:早稲田大学 早稲田キャンパス8号館308教室
 

【報告会レポート】
1. スポーツブランディング総論
  早稲田大学 原田 宗彦 教授

原田宗彦教授 ブランドとは目に見えない名称、シンボル、デザイン、もしくはそれらの組み合わせである。競合他社の製品やサービスとの差別化を図ることを意図して設計された。Carter & Rovell(2006)によると、ブランドは「必要としない段階(例:コンビニで買う氷やペットボトルのお茶)」→「ブランドの紹介(例:製造者からの情報発信)」→「ブランドの個性化(例:やさしいお母さんはアイボリー石鹸を使います)」→「アイコンとしてのブランド(例:マルボロのカウボーイ)」→「同志としてのブランド(例:消費者が積極的にブランド形成に参加)」→「ブランドが政策になる(例:企業の社会的スタンスに共感)」の流れで進化していく。
 スポーツにおけるブランド価値の研究対象は多様である。例えばアスリート、チーム、イベント、都市(地域)など。将来的な研究の課題もブランド倫理やブランドコミュニティやアスリートのブランド価値などがある
 ここで、アスリートのブランディングを簡単に説明したい。ブランディングはブランド力を高めるための絶え間ない努力である。マネジメント会社はアスリートのライフサポート、マーケティング、代理交渉と競技環境の4つの側面でアスリートをサポートすることができる。また、消費者はアスリートがエンドース(推奨)した商品やサービスについて瞬時に意見や態度を形成できるので、アスリートのブランドをマネジメント際に、アスリートのパーソナル・ブランドと企業ブランドのマッチングが重要である。
 
2. スポーツブランディングの今日的視点:スポーツを通じた「共有価値」づくりとエンゲージメント形成
  (株)電通 小西 圭介 氏

小西圭介氏 「スポーツブランディング」は、「スポーツマーケティング」と同様に「スポーツ自体のブランディング」と「スポーツを活用したブランディング」2つの異なる視点・主体があるが、現実には双方が密接に関連しあっており、Win-Winの関係づくりと価値創造が需要となる。
 スポーツを活用したブランディングの観点からいうと、企業が商標・メディア販売、広告・コンテンツ活用、アクティベーションそして社会価値共創などのマーケティング活動によって、「認知獲得」→「イメージ形成」→「態度・行動形成」→「エンゲージメント形成」を実現することができる。そしてスポーツを通じて、スポーツの持つ参加・共有性や社会価値の創造、顧客とブランドを直接結びつけ、プラットフォームとしてのブランド戦略機会を拡大できる。スポーツブランディングには、客観的なブランド資産の評価と課題認識、「共有価値」の強化に向けた戦略的な取り組みステップが必要なる。
 ステップ1では、スポーツのブランド資産/顧客基盤を評価する。ここで、D.Aakerのブランドエクイティモデル(ブランド認知、ブランド連想、知覚品質、ロイヤルティとその他所有権のある資産)を使って、スポーツにおける事例とスポーツ活用企業・組織における事例を紹介した。そして、電通自主調査の結果によって、スポーツには独自のイメージ・ブランド資産が存在することを明らかになった。そのため、ブランド価値を高める差別化・ポジショニング強化を戦略的に検討すべきである。また、アスリートは高いブランド価値を持っている。なぜなら、アスリートはスポーツ/競技者を超えた人(セレブリティ)としてのブランド価値を持ち、幅広いファン・一般層に認知、影響力をもたらす存在になりうる。最後に、スポーツのコミュニティ資産/顧客基盤を特定する際に、ファン(観戦/体験者)、オーディエンス(視聴・関心者)と一般生活者/国・地域住民の各層のボリュームと期待価値を把握し、ブランド価値を高める接点機会を検討すべきである。
 ステップ2では、ブランドとスポーツの「共有価値」づくりを図る。スポーツが体験価値、自己実現価値、社会価値などをもたらすことができる。スポーツの価値を拡張し、様々なステークホルダーにとっての独自価値を共創していくことが重要となる。価値共創する際に、ブランドフィットを強調する。そして、スポーツの価値は国や地域によって異なる。これは、電通のオリパラに関するグローバル10ヶ国調査(2017)で明らかになった。
 ステップ3では、スポーツ接点を活用して、ターゲットとの価値共有とエンゲージメント形成を図る。デジタルの時代に新たなスポーツ体験の価値を提供する。例えば、SNS・センサーやVRテクノロジーなどの発展で、スポーツの参加性の向上と「見るスポーツ」の「するスポーツ化」を実現できる。ブランディングは“形容詞”のブランディングから“動詞”のブランディングに進化した。“形容詞”のブランディングは製品にイメージで付加価値をつけて、顧客を惹きつけるマーケティング手段である。“動詞”のブランディングはコミュニティ(人)を中心に、共有された目的実現に向けて一緒に価値を生み出していくアクションとダイナミックなプロセスである。スポーツ体験を通じて顧客の決定的なタイミングを捉まえ、ブランドとの「感情的な結びつき」をつくり、継続的な「エンゲージメント形成」を図る。レッドブルとキリンビールの例を紹介した。
 ステップ4では、スポーツブランディングの効果を検証・評価する。評価する際に、まず企業ブランディングの目的と期待成果を理解することが重要である。この目的と期待成果は「アウター」と「インナー」で分かられる。「アウター」は企業認知の獲得や企業のブランドイメージ向上と企業好意・支持者拡大などが含まれる。「インナー」は従業員エンゲージメント強化やマーケティング活動強化などの(中期的な)企業理念の浸透が含まれる。最後に、サッカー日本代表の協賛効果の調査結果の例を紹介した。

 
3. アスリートのブランド価値と戦略的ブランディング
  東京理科大学 新井 彬子 助教

新井彬子助教 アスリートはもはや企業の商業的メッセージを伝えるための“エンドーサー”ではなく、独自の意味を市場の中で確立した“ブランド”であり、スポンサーとの関係は共同ブランディング(Co-branding)のパートナーである。
 ブランディングは従来の情報ベースのブランド観から新たな意味ベースのブランド観へ進化している。ブランディングの課題においても価値共創と関係性の構築へのパラダイムシフトが起きている(青木,2011)。この潮流の中で、ブランドとしてのアスリートと消費者がどのような関係を持っているのかというと、パラソーシャルでありながらファンは1対1のような感覚を得られるという点でハイブリッドな関係である(Thomson,2006)。この中で、重要な概念の一つは、個人が自己概念にブランド連想を組み込んでいる程度を示す自己とブランドの結びつき(Self-brand Connection)である(Escalas, 2004; Escalas & Bettman, 2003; 2005; 2009)。
 それでは、実際ファンはそのアスリートの生き方やプレイスタイルの中に見える人生哲学や価値観を、セルフ・コンセプト(自己概念)を形成・確立するのに、役立てているのか?または、理想の自分像を見出すことによって自己概念を拡張するのに役立てているのか?この2つの問題に対して、実験研究を行った。その結果、アスリートと自分との結びつきを連想させることによって、消費者の自尊心(Self-esteem)や自己概念の明確性(Self-clarity)が向上すると明らかになった。
 そして、アスリートと自分との結びつきを強く感じているファンにとっては、アスリートのスキャンダルは自己のアイデンティティへの脅威となる。この時、自己肯定化理論(Self-affirmation theory: Steele, 1998)によると、自己のアイデンティティへの脅威を感じた人間は何らかの行動をして、その脅威を解消しようとする。さらに、文化的自己観(Markus and Kitayama, 1991)によると、「相互独立的自己観」を持つ人はブランドを切り捨てると選択する傾向がある。一方で、「相互協調的自己観」を持つ人はブランドを擁護する傾向がある。
 次は、ブランドの価値と消費文化理論(Consumer Culture Theory)の関係性を説明する。消費文化理論は近年の消費者研究において、社会文化、消費経験、象徴的価値、アイデンティティといった文化的背景と消費行動の関連性に焦点を当てた研究の統合を目指して提唱された理論的枠組み(Arnold & Thompson, 2005)である。ブランド価値の創造者は実際に企業と企業を取り巻く文化創造システムである。ブランドの価値の源泉を消費者や市場の文化に求める(Holt, 2004)。この領域において、アスリートのブランド研究はまだ不十分である。Arai, Ko & Ross(2014)はアスリートのブランド価値はパフォーマンス、容姿的な魅力、ライフスタイルによって決まると明らかにしたが、さらに、その時代、その文化圏またはサブカルチャーにとって重要な価値観をどれだけ体現しているかによって決まると思う。この点については、同性愛者である1980年のMartina Navratilova選手と2014年Gus Kenworthy選手の事例を紹介した。
 最後に、アスリートをブランディング戦略について、二点提案したい。第一ははグローバルアピールである、つまり文化圏や時代を超えて、多くの人が共感できる「スポーツマンシップ」や「ヒロイズム」といった文化的価値や、「オリンプズム」のようなイデオロギーを体現しているのか。第二はカルチュアル・アピール、つまりその時代、その文化圏にとって重要な価値観をどれだけ体現しているか、また、そのようなイメージ効果的なコミュニケーション手法によって特定の文化的グループ(サブカルチャー)にどれだけ強力に伝えられるプラットフォームを持っているかである。

 
4. スポーツを活用したSUBARUのブランドコミュニティ戦略
  (株)SUBARU 岡田 貴浩 氏

岡田貴浩氏 SUBARUとは自動車と航空宇宙のブランドである。かつての商号は「富士重工業株式会社」であったが、2017年にSUBARUに変更した。自動車は2LクラスのSUV、スポーツ車に特化しており、ボーイングの787、777の中央翼も製造している。北米を中心に販売台数を伸ばし年間100万台を販売している。選択と集中、差別化、付加価値戦略で業績も上げている。しかし、世界ではたった1%のシェアを獲得している小さなブランドである。この現状の中で、選択と集中、差別化、付加価値の戦略で生き残りをかける。
 SUBARUがお客様に提供する価値は「安心と愉しさ」である。この理念を中心に「Confidence in Motion」の実践によって、スバルファンの拡大を目指している。「安心と愉しさ」という価値を買っていただいたお客様に共感をいただくために、「総合性能」、「安全」、「デザイン」、「環境対応」、「品質サービス」と「コミュニケーション」の6つの側面で取り組んでいる。
 ここで「コミュニケーション」を中心に紹介したい。ブランド戦略深化の新しい試みのSubaru Next Story (SNS) プロジェクトを始めている。商品というハードから、日常や余暇でのスバルのある生活にまで、「安心と愉しさ」を広げていくために、スバルのある楽しいLIFEを提案する。例えば、スバルはホームページでSUBARU ACTIVE LIFE SQUAREを立ち上げている。そこで、LIFE ACTIVEなお客様に様々なクルマを使うスポーツや遊びを提案する。そして、全国の販売店でもアクティブライフイベントを開催している。例えば、SUBARUのテストコース、及び滋賀県マキノ高原で開催したファンミーティングや2016 SUPER GT富士GT500kmレース親子観戦ツアーなど。そして、モンベルと連携し、2017年に12カ所でSEA TO SUMMITのイベントを開催する。Subaru Next Storyの成果に関しては、ソーシャルメディアのフォロワー数が2015年6月26万から、2017年9月の61万まで増えた。自社の調査によると、口コミ、ソーシャルメディア、イベントなどの接点を増やすことで推奨度は高まる結果になっている。更にお客様と繋がるために、お客様とSUBARUとをつなぐ専用アプリもリリースした。
 最後に、SUBARUとスポーツについては、全日本スキー連盟を40年以上応援していると紹介した。それ以外に、日本自転車競技連盟や自転車競技、日本カヌー連盟、女子プロゴルファーも応援している。2017年にスポーツ庁はアウトドアスポーツ推進宣言を出した。SUBARUはクルマ(SUBARU)で移動してアウトドアスポーツを楽しむ市場を拡大することに貢献したい。例えば、観るイベントへの協賛(例:自転車JAPAN CUPでの宇都宮貢献)、参加型イベントの協賛(ツールド・東北@宮城など復興支援)、参加型イベントの開催(ゲレンデタクシーなどでのスキー場活性化)などである。

 
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