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研究報告会レポート

第3回ブランド&コミュニケーション研究報告会レポート「ブランドとイノベーション ~イノベーションからブランドはどのように生まれるのか?~」

第3回 ブランド&コミュニケーション研究報告会
テーマ:「ブランドとイノベーション ~イノベーションからブランドはどのように生まれるのか?~」
報告者:関西学院大学 経営戦略研究科 副研究科長・教授 玉田 俊平太 氏
日 程: 2016年3月15日(火)
場 所:中央大学後楽園キャンパス 中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)

 
【狙い】
 第3回研究会のテーマは「イノベーション」です。マーケターがイノベーションを語ることは多いとはいえ、それがどのような意味で語られているのか、また、ブランドとイノベーションとはどのような関係にあるのか、こうしたことを考えるためにまずイノベーションについてその基本を考察する機会を持ちたいと考えました。
 今回、イノベーション論の日本における第一人者、玉田俊平太教授からイノベーションについて基本的な考え方を学び、ブランドとイノベーションの関係について考える機会になりました。
 玉田先生の近著『日本のイノベーションのジレンマ』(翔泳社、2015年9月刊)は大きな反響を呼びました。また日経ビジネスオンラインで「しゅんぺいた博士と学ぶイノベーションの兵法」という人気コラムを連載していらっしゃいます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/author/15/062400010/?rt=nocnt
 
【概要】
講師の玉田先生からは以下の流れと内容でご講演をいただきました。

  1. イノベーションとは何か:シュムペーター、フリーマン、ロズウェル、ガーディナー、ドラッカー、ポーター、クリステンセン、などのイノベーションに関する所説をまとめたうえで、パビットらの『イノベーションの経営学』における、イノベーションの定義「機会を新しいアイデアへと転換し、さらにそれらが広く実用に供せられるようにする過程」が紹介された。つまり、「イノベーションの概念には、アイディアの新しさに加えて、そのアイディアが顧客に広く受け入れられて普及すること、つまり、「経済的成功」が暗黙的に含まれている」ことになる。また玉田先生からイノベーションの訳語として「創新普及」が提案された。
  2. イノベーションの企業にとっての意義:イノベーションは企業の競争優位の源泉であると同時に、外部環境の変化に適応するためにもイノベーション能力が不可欠である。
  3. 破壊的イノベーションとは何か:競争の感覚をとぎすまし、顧客の意見に注意深く耳を傾け、新技術に積極的に投資してきた既存優良企業(持続的イノベーター)であっても、特定の種類のイノベーション(破壊的イノベーション(disruptive innovation))には対応できず打ち負かされてしまう。この現象を、クリステンセンは「イノベーションのジレンマ(Innovator’s Dilemma)」と名付けた。破壊的イノベーションとは「既存の主要顧客には性能が低すぎて魅力的に映らないが、新しい顧客やそれほど要求が厳しくない顧客にアピールする、シンプルで使い勝手が良く安上がりな製品をもたらす」ものである。
  4. なぜ優良企業であっても破壊的イノベーションには対抗できないのか:「優れた経営」こそが、業界リーダーの座を失った最大の原因である。既存企業(持続的イノベーター)は、経営判断を誤ったからではなく、合理的な経営判断を繰り返しているうちに、破壊的イノベーターに打ち負かされてしまう。業績が優れた企業には、顧客が求めないアイディアは切り捨てるシステムが整備されている。その結果、このような企業にとって、顧客が求めず利益率が低い破壊的なビジネスモデルに十分な資源を投資することは極めて難しいのである。また、成功している企業は、株価を維持し、従業員に機会を与えるために、成長し続ける必要がある。さらに、会社の規模が大きくなると、同じ成長率を維持するためには、新しい収入の金額を増やす必要がある。そのため、将来は大規模な市場になるはずの小さな新興市場に参入することが次第に難しくなってくる。破壊的イノベーションは、当初は小規模な市場でしか使われないが、いずれ主流市場で競争力を持つようになる。

 
【報告者の略歴】
玉田俊平太氏玉田 俊平太(関西学院大学経営戦略研究科副研究科長・教授)
博士(学術)(東京大学)。米ハーバード大学大学院にてマイケル・ポーター教授のゼミに所属、競争力と戦略との関係について研究、クレイトン・クリステンセン教授からイノベーションのマネジメントについて指導を受ける。筑波大学専任講師、経済産業研究所フェローを経て現職。研究・技術計画学会評議員。平成23年度TEPIA知的財産学術奨励賞「TEPIA会長大賞」受賞。著書に『産学連携イノベーション―日本特許データによる実証分析』(関西学院大学出版会、2010年)、監訳に『イノベーションへの解』(翔泳社、2003年)、『イノベーションのジレンマ』(翔泳社、2000年)など。
<主な著書>
『イノベーションへの解(監修)』(翔泳社) 2003
『巨大企業に勝つ5つの法則(共著)』(日本経済新聞出版社) 2010
『イノベーションのジレンマ(監修)』(翔泳社) 2001
 
(文責:田中洋)

 
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