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研究報告会レポート

第3回インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会(春のリサプロ祭り)レポート「インダストリーイノベーション時代のブランディング研究」

第3回 インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会(春のリサプロ祭り)
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テーマ:インダストリーイノベーション時代のブランディング研究
日 程:2017年3月18日(土)14:45-16:15
場 所:中央大学ビジネススクール
 

 以下の2つの報告とその後、それを受けて、参加者を4つのグループに別け、議論した。
1)報告①「インダストリーイノベーションとして捉えるデジタル・トランスフォーメーションの様相」
 関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科 教授 森 一彦 
2)報告②「ブランディングへの示唆を含む企業の取り組み」
 博報堂研究開発局 主席研究員 徳永 朗
3)議論=2つのテーマ報告を受けて、フロアの参加者の方々と小グループに分かれての議論

 
【概要】
 今回は、2016年度の日本マーケティング学会カンファレンス、八尋俊英 株式会社日立コンサルティング、代表取締役社長の講演が起点となり、「IoT,AIなどにより全ての人・モノ・コトがつながる環境が到来する中で、変化する価値をどう捉え、どのように活用していくのか」という問題意識から構成されました。
 

IoT、AI、ビックデータに関する 経済産業省の取組について (2016年5月24日 経済産業省)
 
 第4次産業革命として指摘されているのは、テクノロジーの進化と普及によりリアルとサイバー空間が融合し、ヒト、モノ、都市、企業などすべてがつながり合うことです。その中で、企業の在り方は、産業の垣根を超えて、複合業態システムへと融合し、そのプラットフォームの中でサービス化へとシフトしていく様相を見せています。そこでは、自社と顧客(企業)のリソースを統合し、相手の事業やオペレーションに踏み込んでのサービス共創が求められてきます。また、消費者の関心は、次第に「所有」よりも「利用」へと焦点が移り、ユーザー経験(エクスペリエンス)をどう価値化していくかを巡り、ユーザー起点からの事業価値の再編が行われていく状況も様々な形で見られるようになってきています。
 

 
 こうした現状を事例ベースで辿り、変化の様相を認識するとともに、より新たなレベルで問われてくる企業と顧客の関係を、ブランディングという視点から新しく捉え直そうとしています。ブランディングは、顧客との関係性を築きながら、事業価値をリードしてきた概念であり、さらにプラットフォームという視点からもいくつか新しい可能性への展開を見出してきているからです。
 
 以下の報告では、報告①「インダストリーイノベーションとして捉えるデジタル・トランスフォーメーションの様相」森一彦(関西学院大学専門職大学院 経営戦略研究科)から構成しています。報告では、以下の3つの視点から報告をしました。
 
視点1)サービス化
 事例として紹介されたのは、日立製作所の英国「英国インターシティ(都市間高速鉄道)」
そこでの共有した事業目的は、車両を納車したり、鉄道を敷いたりすることでなく、人が快適に移動でき、生活できること。この事業目的に沿えば、仮に遅延したら代替手段を提供する、モニタリングして不具合を管理する、など交通のマネジメント全体が求められてくる。「過密ダイヤでも安定的な輸送時間短縮が可能になったので、朝食を子どもと共にしてから出勤できるようになった」こんなエピソードが地元紙に載った。そこでは、鉄道の安全管理だけでなく、同時に社会的イノベーションも実現しようとしている。
 
 こうした事例などをもとに以下のようなサービス化への特徴を指摘しました。
・生産システムが需要サイドにつながることで、サービス化が急速に広がる。
・モノの所有よりも、モノや場所を使ったサービスの提供、最終的な目的を達成できることに価値が移行する。
・ユーザー起点からの事業シフトが起き、ユーザー経験(エキスペリエンス)が価値化への焦点となり、使用目的=共有からの事業価値の再定義が行われていく。 
 
2)リソース統合へのプラットフォーム
 事例としては、コマツのコントラクター、クボタの農業機械、また、通販サイトZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが紹介されました。特に、ZOZOTOWN では、WEARアプリを利用してコーデをアピールでき、ファン投票機能やコメント、インスタとの連携などでユーザー同士やユーザーとブランドを繋ぐ仕組みも提供されている。ユーザー同士のつながりは、従来のトップモデルや読者モデルの役割を果たし、コストかからない販促の仕組みとなっている。新しい情報のつなぎ方、つなぐ意味が生まれている。
 
・そうした事例などをもとに、サービス化の中で、顧客(企業)のリソースを統合し、相手の事業やオペレーションに踏み込んでのサービス提供(モノの提供、レンタル、売却、回収)が行われ、そこでは自社のリソースを相手先と融合させる、共通のプラットフォーム性が重要になるという特徴を指摘しました。
 
視点3)エコシステム
 事例として、全日空( ANA)での関連情報を集約するビジネスプラットフォームが紹介されました。航空産業は、ほとんどの人が安全運航/快適輸送が事業の本質と思うが、しかし、自社だけでは強みは形成できず、関連のビジネスプラットフォームでのエコシステムが、重要となっています。
 チケットのネット予約に始まり、顧客のプロフィールだけでなく、他の情報とつなぐことで旅全体が見える化された。全日空では観光手配やお土産などの情報との連携で、顧客サービスだけでなく、ホテル・タクシーの供給準備などにもそれらを活用し、機材・便数の最適化、輸送効率、ひいては財務状況の改善までその情報の活用は及ぶとのことを事例報告しました。
 
・こうした報告から、従来的な産業の輪郭は曖昧となり、様々な要素がつながり合う全体のエコ・システムを前提にして、他社資源と自社資源を統合、重ね合せながらユーザーへの「提供価値」を高めていくという特徴を指摘しました。
 

(文責:森 一彦)

 
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