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研究報告会レポート

第23回価値共創型マーケティング研究報告会レポート「価値共創マーケティングの鼓動」

第23回 価値共創型マーケティング研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「価値共創マーケティングの鼓動」
日 程:2018年3月18日(日)
場 所:広島大学東京オフィス(東京工業大学 CIC東京)

 

【報告会レポート】
「流通は価値共創をどう取り込むか」

藤岡 芳郎 氏(大阪産業大学)

藤岡芳郎氏 20世紀の小売業は、チェーン化することで飛躍的に成長したといえます。その代表がレギュラー・チェーン(RC)やフランチャイズ・チェーンであり、強大なバイイングパワーとともに強い小売業を確立してきたといえそうです。ところが、今日では急速な社会の変化、とりわけ電子商取引の拡大とともに、有店舗の小売業は閉塞感が強まっています。このような局面において、地域密着を可能にする小売業の姿とはどのようなものなのか、価値共創マーケティングと企業システムの視点で検討しようというのが、藤岡氏のお考えでした。
 今回の藤岡氏の報告で特徴的だったのは、チェーン型組織に注目することにあります。本部による強い統率力によって機能するRCとボランタリー・チェーン(VC)を比較し、後者の可能性に言及した点が独創的でした。新聞報道にせよ研究の動向にせよ、これまで注目してきたのは前者であり、後者への関心は決して大きくなかったといえます。しかしながら、分散した多数の小売店が独立性を維持しているVCは、規模のメリットを享受する一方で地域密着を打ち出すことが可能です。つまり、地域密着を可能にする小売業を考える際に、VCへの注目が有効になる時代を迎えたといえそうです。
 このような考え方は、本研究会活動の中で発見された知見でもあります。2017年10月の研究会(カンファレンス2017)で招聘したコスモス・ベリーズ社 三浦会長もまた、地域の家電販売店をVCとして組織化し、家電量販店との共生のスキームを実現しようとするものです。かつて、家電量販店の台頭とともに地域の家電販売店は淘汰され、両者が共存するというような捉え方は存在していなかったのですが、核家族化や少子高齢化の進展とともに、そして家電製品が深く我々の日常生活の中で機能するに及ぶようになって、家電販売店の実力を再注目することができます。同社は、家電販売店をVCとして組織化することで、顧客の要望への積極的な対応を可能にするとともに、家電販売店を支援しています。両者の共生は可能であり、その姿は商品を売るという同じ立場ではありません。顧客寄りに徹しきれない家電量販店の課題を克服する立場として、家電販売店の活躍が期待される訳です。
 このように考えたとき、食品を主とする小売業においてもVCへの注目と加盟店の顧客に対する寄与が期待されるといえます。RCが本部に基づき行動することを考えれば、VCの加盟店ははるかに顧客寄りで自由に行動することが可能であり、これを企業システムというフレームで再解釈したとき、価値共創マーケティングの示唆が当てはまるのではないか。こうした期待が示される研究内容でした。

 

「サステナブル(持続可能)な流通システムとは何か」

奈良 英治 氏(元(株)ダイエー人事部長、(株)ビッグボーイジャパン 代表取締役社長、前(株)中国シジシー 代表取締役社長)

奈良英治氏 奈良氏は、RCでの勤務ののち、VCのマネジメントに携わるご経験をお持ちの方です。RCについては、ダイエーが急成長する時代と重なります。当時の同社は、圧倒的なバイイングパワーとともに小売価格を低く設定し、消費者のための企業であることを標榜していました。社会からの支持される時代が長く続き、同社はプロ野球球団を所有するに至るなど、幅広く我々の生活に浸透していきます。奈良氏自身も、創業から成長期は、理念である「For the Customer」と顧客ニーズとしての低価格商品の提供が、大量販売とマッチした時代だったと振り返りました。しかし、生活の豊かさや心の豊かさが期待される時代を迎えるようになってからは、これら志向に対応できなかったとも考えられます。
 奈良氏はその後、シジシー・ジャパンでのご勤務にうつります。同社は全国の中堅・中小の食品スーパー220社, 約4,000店舗が加盟するVCです。加盟店が大手チェーンストアに対抗するために、単独で取り組むよりも全国規模でまとめることで、よりメリットを発揮できる業態として、同社は機能しています。事業の柱は①商品の開発と供給、②物流システムの構築と運用、③情報システムの構築と運用、④営業支援の4つであり、RCに比べればゆるやかに加盟店を支援します。
 これからのスーパーマーケットでは、集客力向上や空きスペースの活用などの提案が求められ、加盟店を支援する工夫が推進されています。ユニークなのはマルシェ機能の充実(実質的な町おこし)、消費者参加型の企画、食生活文化の普及推進をテーマとした催事の運営などがあり、加盟店が顧客に近い立場だからこそ必要とされる取り組みが豊富であることに気づかされます。
 社会から支持されるVCを検討するうえで、加盟店ならではの商品やサービスが期待されるほか、加盟する各社はそれぞれ「三方よし」(売って良し, 買って良し, 世間良し)に基づく存立を果たさなければなりません。VCは、こうした加盟企業の自覚に基づいて機能するものであり、それは決してRCのように統制された管理能力で優位性を説明するものではないというお考えが、実体験を通じて示されました。
 

ディスカッション

パネラー
  藤岡 芳郎 氏(大阪産業大学)
  奈良 英治 氏(元株式会社ダイエー 人事部長、株式会社ビッグボーイジャパン 代表取締役社長、前株式会社中国シジシー 代表取締役社長)

ディスカッションの様子 流通を概観するとき、20世紀はサプライチェーンの合理性、妥当性が強調されてきたといえそうです。規模の経済によるメリットを享受できた時代には、強力な本部機能と資本の集中によるRCの発展が可能だったといえます。大規模化する小売業は、メーカーに対して強大なバイイングパワーを有するようになり、急成長したのです。こうした時代には、VCの議論が盛んではありませんでしたが、本日の報告を確認すると、VCが決してマイナーだったとはいえない実態があります。
 また、VCがマイナーでない理由に、食品を扱う小売業だからこその特殊性や複雑性があろうかと

考えます。最終消費者の住む地域に近いところで生産しなければならない、鮮度を扱うゆえの必然が食品メーカーにはありますし、その企業の数が多いからこそ品揃えも多様になり、丁寧な取引関係のコーディネーションが求められます。VCに加盟する企業は中小規模の企業ばかりといっても、こうした実践に長けていることは言うまでもなく、各社が自主協調と独自性を発揮してこそ、VCが機能するといえます。
 このように考えたとき、VC全体の優位性とは、地域や店舗ごとの多様性を受容したうえでの意思決定が円滑でかつ、VCを活かした規模の経済の効果も獲得するという2つの視点で説明できるのではないか。こうした意見が示されました。すると、奈良氏から興味深い回答がありました。それは、強引なバイイングパワーの行使は加盟店を疲弊させ、混乱をもたらすこともあったというのです。また、For the Customerよりもさらに進化したAs Customerで働く日本のパートタイマー労働力は極めて優秀で、優れた店舗運営を可能にする知見があちこちで発見されるといいます。したがって、VCのマネジメントを考えたとき、多様性の受容は重要でも、むやみなスケールメリットの追究は効果がないといえそうです。
 このほか、奈良氏の発言でユニークだったのは、メーカーに値下げ要求することよりも、販促で○○しないか?と聞く方が、お金を出す企業が多いということでした。メーカーにとっては同じコストでも、取引条件を左右する前例を敬遠することは明らかで、そうであれば、顧客との関係構築に向けた可能性を担保するメーカーの協力を得ることが、VCのマネジメントにとって大切だとする意見が示されました。参加した多くの方々が、VCに再注目する意義を感じ、さまざまな意見交換が実現しました。
 
(文責:今村 一真)

 
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