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研究報告会レポート

第8回ユーザー・イノベーション研究報告会(札幌リサプロ祭り)レポート「ユーザー創造アバター(キャラクター)がもたらす効果」

第8回ユーザー・イノベーション研究報告会(札幌リサプロ祭り)
> 研究会の詳細はこちら > 札幌リサプロ祭り
 
テーマ:「ユーザー創造アバター(キャラクター)がもたらす効果」
日 程:2018年5月12日(土)14:20-15:50
場 所:小樽商科大学札幌サテライト
 

 本報告会に先駆けて、札幌リサプロ祭り(日本マーケティング学会リサーチプロジェクト合同研究会)を企画・運営した、近藤公彦先生(日本マーケティング学会理事、小樽商科大学大学院商学研究科 教授)により、「札幌リサプロ祭りの開催にあたって」ということで、多くの参加者へのお礼をはじめ、札幌で研究会を実施する意義、今後の札幌での計画が語られた。
 

写真左より、近藤先生の挨拶、会場の様子
 

1. ユーザー創造製品がもたらす効果
西川 英彦(リーダー、法政大学 経営学部 教授)


写真左より西川英彦、白井明子氏

 ユーザー自身の開発により生まれる「ユーザー創造製品」の実践や研究は多く行われている。こうした製品は、企業の専門家が開発する伝統的製品開発により生まれる「専門家創造製品」に比べて、高い売上実績など市場成果をあげるという。こうしたユーザー創造製品が市場成果をもたらすのは、「製品効果」と「ラベル効果」という複合的な効果をもつためである。「製品効果」とは、ユーザー創造製品が高い新規性や顧客便益などをもたらすという、「製品」そのものを要因とみるモノ的効果である。一方 、「ラベル効果」とは、店頭POPでの「お客様のアイデアから生まれた」などのユーザー創造製品という出所表示が顧客に影響を与える という、「ラベル」を要因とみる心理的効果である。
 こうした中、企業アバター(企業や自治体の代表者として使用できる仮想キャラクター)においても、消費者参加型開発で生み出されることも多い。こうした代表例は、ユーザーのイラストや声の投稿から生まれた「ローソンクルー♪あきこちゃん」であろう。はたして、ユーザー創造アバターがもたらす効果は、ユーザー創造製品と何か違いはあるのであろうか。
 
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2. ユーザー創造アバターがもたらす効果:ローソンクルー♪あきこちゃん
白井 明子(株式会社ローソン マーケティング本部シニアマネジャー)

ローソンクルー♪あきこちゃん
 ローソンクルー♪ あきこちゃんは、LINE やTwitter、Facebook をはじめとするソーシャルメディア 22媒体を通して、毎日2600万人を超える顧客に、ローソンの最新情報を発信する有名な、ユーザー創造による企業アバターである。ユーザーがイラスト投稿可能なサイト Pixiv において、あきこちゃんの前からみたイラストコンテストが2010年に開始された。900 件を超える応募があり、応募作品の中に秀逸なものが多数あったため、ネット上では話題になった。
 審査の結果、現在もあきこちゃんのイラストを担当する「ゆめろぼ」氏(ハンドルネーム)が、大賞を受賞した。同時に、Pixivをはじめ2ちゃんねる等において、大きな話題をよんだ奇抜なデザインの「アキコちゃん」(カタカナ表記で書かれていたため)のイラストも、話題賞を受賞した。こうして、あきこちゃんは、イラストに長けた顧客の集まるコミュニティからのデビューという、大きな味方をつけた。さらに、同年に声も募集され、ユーザーが声優として決まった。
 こうしたユーザー創造アバターという生い立ちは、ユーザーに対して、「ラベル効果」をもたらしていたといえるだろう。あきこちゃんのイラストや声の開発過程において関わった顧客や、こうした開発経緯を知っている顧客に愛着を与えていたのだ。
 ラベル効果の中でも、メッセージの送り手である「発信源」によって、メッセージの受け手である顧客の態度形成や、購入の意思決定に影響を与えることは、「発信源効果」と言われる。発信源である、あきこちゃんが、ユーザー創造により「魅力」や「信憑性」という特徴をもったことが、効果を向上させたのである。
 他にも、あきこちゃんは、ユーザーに対してだけでなく、FC店舗やローソン社内、取引企業に、ラベル効果(発信源効果)以外の複数の効果をもらしていた。だが、ユーザー創造というラベル効果は、ユーザーに対しての効果に限定されていて、FC店舗やローソン社内、取引企業の人々への影響は見られなかった。
 

3. ディスカッション

 講演者両名での対談および参加者を交えて、ディスカッションを実施し、ユーザー創造アバターがもたらす効果を、ユーザー創造製品と比較しつつ、その効果について理解を深めた。あきこちゃんのケースでは、ユーザー創造製品がもつ「ラベル効果」は見られた。とりわけ、誕生後だけでなく、開発プロセス段階でのラベル効果が重要であった。ユーザーと共創するだけでなく、奇抜なデザインのイラストも含めて、ローソンがユーザーのアイデアを正当に評価したからこそ、コミュニティからの信頼を得て、愛着をもたらしたといえるだろう。一方、「製品効果」については、専門家創造アバターとの比較ができておらず、その効果は不明であった。
 こうしたユーザー創造アバターがもたらす効果の解明については、実験などの実証研究をしていくことが今後期待される。
 

(文責:西川英彦)

 
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