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研究報告会レポート

第4回デザイン思考研究報告会レポート「製品開発にデザインを活用すると何がいいのか(日本マーケティング学会 ベストドクターコース賞(2017))」

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テーマ:「製品開発にデザインを活用すると何がいいのか(日本マーケティング学会 ベストドクターコース賞(2017))」
講演者:株式会社プラグ 代表取締役社長 小川 亮 氏
日 程: 2018年5月25日(金)19:00-20:30
場 所:青山学院大学 青山キャンパス 17号館8階17810教室
    (青山学院大学 国際マネジメント研究科 協力)

 

【概要】
 表現としてのデザインから、問題解決としてのデザインに注目が集まるなか、プロトタイプ”と呼ばれる試作デザインへの関心が高まっている。アイデアを早い段階で可視化する“ラピッドプロトタイピング”がなぜ製品開発プロセスにおいて有効なのか。3年にわたり、実務と実証研究を通じて検証してきた点を踏まえ、「文字で書いたコンセプトは絵と比較して容易に順位が入れ替わる危険性が高いこと」「コンセプトテスト段階において“触れる”という行為はかなり重要だということ」の2つの発見点についての報告をもとに、デザイン思考を実務的に導入するにあたっての企業内部に存在する課題について問題提起がされた。
 
【研究報告】
 研究会では、製品開発プロセスがステージゲートを代表とするリニア型のプロセスからノンリニア型に変化している環境要因について紹介された。リニア型では
 
1. 開発課程で発見されたことをさかのぼって再開発することができない
2. 1970年代からの開発プロセスで、他社も同じようなやり方をしている
3. 上市から逆算されて進むことが多いので開発条件を従来から変えられない
4. モノのサービス化が進んでおり単なる商品アイデアでなく事業アイデアが求められている
 
といった課題が内在している点からイノベイティブな製品開発には新たなプロセスとしてノンリニア型の開発プロセスが必要とされている点が指摘された。
 またノンリニア型の方法論としてデザイン思考の概念と台所をテーマにした観察からの製品開発、トイレットペーパーの開発の事例が紹介された。その後、コンセプトテストの既存研究について触れ、コンセプト評価・開発にデザインを活用することで、市場性の高いコンセプトが選択できること、またデザインを使った消費者調査を通じて、改善や使い方の新しいアイデアが生まれやすくなること、触れることのできる試作品の重要性が実証研究を通じて紹介された。
 
 後半では、サービスドミナントロジックを鍵とした製品価値の変化についてふれ、1930年から現在に至るまで、企業と社会がデザインに求める価値の変化を、商品デザイン、資産デザイン、意味経験デザインと3つの区分で提示し、デザイン思考が求められる背景についての歴史的視点での解釈がなされた。
 


 
 最後に、デザイン思考を企業で活用するにあたり、5つの障壁があることが指摘された。
 
1. プロセスは戻ってはいけない壁(許容)
2. 発売は延ばしてはいけない壁(時間)
3. 今までのリスク&リターンの壁(財務基準)
4. 自社定義の壁(そんなものは○○ではない)
5. 製品開発目的の壁(棚維持・企業姿勢PR)
 
 日本マーケティング学会らしく、アカデミック分野と実務分野、両分野の参加者が積極的に意見を変わし、デザイン思考を社内で実践したときの課題や開発プロセスとして導入していくにあたって5つの障壁以外にも存在する課題について、積極的な議論、問題提起が行われた。

 
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