第2回カスタマー・エンゲージメント研究報告会レポート「カスタマー・エンゲージメント概念の適用範囲の拡張」 |
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テーマ:「カスタマー・エンゲージメント概念の適用範囲の拡張」
報告者:明治大学商学部 教授 井上 崇通 氏
茨城キリスト教大学経営学部 准教授 田口 尚史 氏
モンペリエ・ビジネススクール 准教授 Linda D. Hollebeek 氏
日 程: 2018年12月7日(金)18:00-20:00
場 所:明治大学 駿河台キャンパス アカデミーコモン8階308E
【報告会レポート】
今回のテーマは「カスタマー・エンゲージメント概念の適用範囲の拡張」と題して、B2B取引の文脈でのカスタマー・エンゲージメントに焦点を当てました。報告者は3名。解題として、明治大学の井上崇通先生より「カスタマー・エンゲージメントの理論的進展と実務への適応可能性の拡張」というタイトルで、サービス・ドミナント(S-D)ロジック研究がカスタマー・エンゲージメント研究のメタ理論的な基盤としてどのような役割を果たしているのかについて報告がありました。カスタマー・エンゲージメント概念は、価値共創、エコシステム、アクター・ネットワークといったS-Dロジックのパースペクティブから提案された諸概念にヒントを得ているとのことでした。
次に、茨城キリスト教大学の田口尚史先生より、「カスタマー・エンゲージメント概念のB2B文脈への拡張可能性」というタイトルの報告がありました。その中で、S-Dロジックの中範囲理論としてのカスタマー・エンゲージメントの理論化プロセスについて説明があました。現在、カスタマー・エンゲージメント研究は、メタ理論としてのS-Dロジックから命題や仮説を演繹している段階にあり、今後はそれらを実践の中で実証する段階に移行するとのことでした。さらに、田口先生からはB2B取引の文脈へのカスタマー・エンゲージメント概念の拡大の可能性について提案がありました。B2B取引の供給企業であったとしても技術ブランディングを活用することで、ソーシャル・メディアへの顧客企業のエンゲージメントを誘発させることができ、さらにはそれらが最終消費者のエンゲージメントも誘発できる可能性があり、B2C取引だけでなくB2B取引においてもカスタマー・エンゲージメントは有効であろうと結論づけていました。
最後に、モンペリエ・ビジネススクールのLinda D. Hollebeek先生より、「Customer Engagement: B2C vs. B2B Foundations」というタイトルの報告がありました。Hollebeek先生は、B2B取引におけるカスタマー・エンゲージメントの先行要因と結果についての概念モデルを提案されました。このモデルによれば、顧客企業のアクター(購買センターのメンバー)が自社の経営資源を統合し、その資源統合の効果性と効率性によって顧客企業のカスタマー・エンゲージメントが生じ、その結果として、顧客企業の価値共創と顧客企業のリレーションシップの生産性が高まり、それが顧客企業のリレーションシップの質の向上を通して、最終的には供給企業の事業業績に貢献するというものでした。そして最後に、今後の研究の方向性として3つの命題が提示されました。
左から報告者の井上先生、田口先生、Hollebeek先生
【報告会を終えて】
師走の週末金曜日の夜、多くのビジネス・パースンのスケジュール帳は忘年会の予定で埋め尽くされているだろうという企画運営メンバーの不安は妄想だったようです。年末の忙しい中、第2回の公開報告会にはたくさんの実務家や研究者の方々にお越しいただきました。特に、実務家の方々からの関心が高く、Q&Aセッションではたくさんの質問があり、終了予定時刻を過ぎても質問の手が上がりました。実務家の方々の関心は、カスタマー・エンゲージメントは他の概念(例えば、ロイヤルティ)とどのように異なるのかといったことや、エンゲージメントをどのように測定すればよいのかといったことでした。これらの疑問はいずれも今後、研究者の間で答えを見つけ出して回答しなければならないものです。今後も、このような実務家と研究者たちとの共創を活発化させていきたいと思います。
報告会終了後に参加者の方々と記念撮影
(プロジェクトリーダー:井上 崇通)