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研究報告会レポート

第7回フードビジネス・イノベーション研究報告会レポート(大阪リサプロ祭り)「宗教×フードサービス -イスラームとハラール、ムスリム市場を中心に-」

第7回 フードビジネス・イノベーション研究報告会(大阪リサプロ祭り) > 研究会の詳細はこちら
講 演:宗教×フードサービス -イスラームとハラール、ムスリム市場を中心に-
     阿良田 麻里子氏(立命館大学 食マネジメント学部 教授)
 
日 程:2018年8月25日(土) 14:40-16:10
会 場:関西学院大学 梅田キャンパス

 

【報告会レポート】
 大阪リサプロ祭り(合同研究報告会)の中で、第7回フードビジネス・イノベーション研究会を開催しました。
 
 今回のテーマは「宗教×マーケティング」。日本の人口減少やアジアの経済発展が続く中、規模の大小に限らず日本企業の海外進出が本格化するとともに、多くの外国人が観光や仕事で日本を訪れるようになり、国内でもグローバル化が進んでいます。こうした状況で問題となるのが宗教です。宗教は日常生活の規範であり、人々の嗜好にも大きな影響を与えるため、マーケティングを行う上で彼らの宗教的背景を理解することはとても大切です。
 
 そこで、今回は、ムスリム市場に精通している阿良田麻里子氏を講師としてお迎えし、イスラームのハラールを取り上げ、宗教に対応するとはどういうことかお話しいただきました。阿良田氏は、文化人類学や言語学をベースにインドネシアの食文化を研究しており、『世界の食文化(6)インドネシア』(農文協)、『食のハラール入門 今日からできるムスリム対応』(講談社)を出版するなどハラール食文化研究の第一人者です。
 
 イスラームは、人間の行為を①義務行為(ファルド)、②推奨行為(ムスタハッブ)、③許容行為(ムバーフ)、④忌避行為(マクルーフ)、⑤禁止行為(ハラーム)の5つに分類しており、①~④までがハラールとなります。ハラールといえば食べ物をすぐ連想しますが、飲食以外の行為にも、当然のことながらハラールとハラームがあります。
 
 ハラールであるためにはハラール認証が必要だと思っている人がいますが、何がハラールで、何がハラームかを決めるのは神だけではあり、ハラール認証が無くてもムスリム消費者がハラールだと思えば、その製品を買うことができます。
 
 一方、ハラール認識を受けたからといって安心だとは限りません。ハラールかどうかは、宗派や地域によって異なり、また、ハラール認証の基準が変わることもあります。したがって、継続的な情報収集と、万が一に備えたリスク・マネジメントが必要となります。
 
 そして、ビジネスにとって重要なのは、ハラール認証をとったからといって、その製品が売れるとは限らないということです。ハラール認証は、その製品が宗教的に問題ないことを示すものであって、それを顧客が欲するかどうかは別問題です。したがって、他の一般的な市場と同様、ムスリム市場でも、彼らの文化や制度、個人の嗜好に合わせたマーケティングが必要となります。
 

写真左より、阿良田氏の研究報告、フロアの様子
 
【報告会を終えて】
 今回は、大阪リサプロ祭りの中での開催ということで、新たな参加者を得て研究会を行うことができました。ムスリム市場に積極的にアプローチするには戦略的判断が必要ですが、「 彼らがムスリム消費者だといって否定することはない。まずはお金をかけず出来ることから始めればよい」という阿良田先生の指摘は非常に力強く、ムスリム消費者に限らず国内のグローバル化を考える上で重要なポイントだと思います。
 
(プロジェクトリーダー:小林 哲)

 
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