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研究報告会レポート

第1回医療マーケティング研究
報告会レポート
「病院経営とマーケティングの可能性」

第1回 医療マーケティング研究報告会
テーマ:「病院経営とマーケティングの可能性」
報告者:高崎健康福祉大学 健康福祉学部 准教授 木村憲洋氏
昭和大学大学院 保健医療学研究科 講師 的場匡亮氏
関西大学商学部 教授 川上智子氏

日 程:2013年6月17日(月) 9:30-11:30
場 所:東京国際展示場701・702会議室

 

【報告会レポート】

今年4月から発足した医療マーケティング研究会。第1回報告会はコトラー教授の来日カンファレンスと同日の午前中に開催されました。登壇者は2013年3月に刊行された『1からの病院経営』の編者3名。大学、病院、製薬企業、広告代理店、調査会社、研究所、メーカー、IT企業、医療教育機関他から計40名が参加され、終了後も名刺交換の長い列が続きました。

 

1からの病院経営
参考URL:https://www.facebook.com/hospital.management.1st

 

【川上智子氏による第1報告の内容】

医療におけるマーケティング概念の再考というテーマで、STP・患者志向・マーケティングの7Pという3つの概念に絞って話します。
STPは医療の機能分化に相当します。たとえば、翠会ヘルスケアグループは精神科急性期の4領域に重点化したポジショニングを行っています。精神科は患者情報を長く管理する必要があるため、電子カルテも独自開発しています。患者志向の実現には、組織の壁を超えた患者情報の収集・共有・利用の仕組み作りも必要です。
次に、広告規制のある中、病棟の外壁に巨大なピンクリボンを掲げ、広報(パブリシティ)をうまく活用している福井県済生会病院を紹介します。外来の待ち時間を利用した蘇生法の講習会等、経験価値を高めるマーケティングを職員全員参加型で実施し、患者志向を実現しています。

 

研究会の様子
研究会の様子

 

登壇者の紹介
川上智子氏川上智子氏
関西大学商学部 教授(商学博士)
神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程修了。
メーカー勤務6年の後、2000年より現職。日本マーケティング学会理事。
専攻は、日本企業経営、マーケティング、イノベーション・マネジメント。
主著に『顧客志向の新製品開発』(有斐閣)、『事業創造のための実践ビジネスプラン』(中央経済社)他。

 

【的場匡亮氏による第2報告の内容】

患者ミックスの考え方が重要です。昭和大学のある病院では、外来患者1日1,000人という計画に対し、1,300人が来院していました。そこで地域医療支援病院として紹介・逆紹介を推進し、目標を1日1,100人としました。
顧客の数を減らす。意外な発想です。しかし患者数を減らしても、新規患者と再診患者の患者ミックスが適正なら、医療の質も収益も改善できるのです。
別の病院では、救急患者が入院しなかった場合に8,400円支払う制度を導入しました。その結果、コンビニ受診は減り、重症入院患者への対応が増加しました。患者ミックスが変わったのです。
最後に、東海大学医学部附属病院は、約1,100床から約800床にダウンサイジングし、病床稼働率が70%代から99%に向上しました。患者支援センターの看護師が外来で入退院調整を行うためです。看護師獲得競争の時代、産休・育休明けの看護師を配置して、遊休化していた人的資源も活用しています。

 

登壇者の紹介
的場匡亮氏的場匡亮氏
昭和大学大学院 保健医療学研学科 講師
2007年 南カリフォルニア大学 医療経営学修士課程(MHA)を修了 病院経営学修士
ITベンチャー企業、財団法人聖路加国際病院を経て、2011年より現職。
専攻は病院経営。

 

【木村憲洋氏による第3報告の内容】

医療サービスはオーダーメイドで、カルテはCRM、規制業界で、同業他社は競合ではなく顧客を紹介し合う仲です。広告規制により、広報活動としての健康教室や公開講座のような体験型の患者教育が増えています。
病院にとって、最も重要なのは医療の質です。医療の質が上がればブランド力も高まり、結果として収益が向上します。ブランド力向上には、B2Cだけでなく、B2Bの戦略も重要です。医療は同業者が評価し、紹介するためです。
国の政策は、医療保険財政が破たんしない緊縮の方向、かつ病床数の多い大病院に集約する方向で進んでいます。経営体力がない病院はポジショニングに工夫が必要です。
医療業界では需要予測を国が行います。DPCの導入で14ケタのコードに疾患や治療の履歴が全部集約され、ビッグデータも揃っています。このように、データはオープンに利用できるのも医療業界の特徴です。

 

名刺交換会の様子
名刺交換会の様子

 

登壇者の紹介
木村憲洋氏木村憲洋氏
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 准教授(機械工学士)
東京医科歯科大学大学院 博士課程満期退学。
神尾記念病院、今井病院を経て、2010年より現職。
専攻は、病院経営、医療機関向けマーケティング。
『病院のしくみ』(日本実業出版社)、『病院経営のしくみ』(日本医療企画)、『超イロハ師長の病棟経営数字』(日総研出版)、『病院は、めんどくさい』(光文社新書)、『医療機器と検査・治療のしくみ』(日本実業出版社)他、著書多数。

 

【報告会を終えて】

医療は特殊とよく言われますが、業界の特殊性は医療に限ったことではありません。数十カ国でグローバルに展開する企業も、10年以上の基礎研究を行う企業も、そしてローカルな病院経営も、それぞれ特殊で固有です。特殊性や固有性に還元する隘路に陥らず、広く深いマーケティングの理論体系を医療に適合させ、逆に理論側も修正・拡張していく努力を積み重ねたいと思います。
生命の安全に関わる究極のサービス業である医療で、多忙な医療従事者が医療行為の傍らマーケティングを行うのは、社会的分業の観点からは非効率的です。しかしながら、日本では、MHA(病院経営学修士)のような医療のマネジメントやマーケティングの専門家を育てる制度も未成熟です。点ではなく面で、かつ重層的に、医療マーケティングの体系を確立していくことが急務です。
以上の認識から、マーケティングの学会の中に医療の研究会を発足させました。マーケティングと医療、研究者と実務家の垣根を超えた対話の場を創出し、知の体系を紡ぐプロジェクトを遂行していきたいと考えています。

 

(文責:医療マーケティング研究プロジェクト リーダー 川上智子)

 

 
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