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研究報告会レポート

第4回ヘルスケアビジネス研究報告会レポート「デジタルヘルスケアについて学ぶ」

#いまマーケティングができること

第4回 ヘルスケアビジネス研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:デジタルヘルスケアについて学ぶ
日 程 :2021年1月31日(日)13:00-17:00
場 所:ZOOMによるオンライン開催
進 行:香川 勇介 氏 日本マーケティング学会理事・サロン委員、中央大学大学院 戦略経営研究科(博士後期課程)
司 会:真野 俊樹 氏 中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授
演 者:タッシル 恵子 氏  米国医療通訳&コーディネーター
    須藤 隼 氏 昭和大学精神医学教室 医師 / HIMSS Japan committee メンバー
    阿部 吉倫 氏 Ubie株式会社 代表取締役 / 医師
    菅原 幸子 氏 株式会社ドラビズon-line 編集長

 
【報告会レポート】
 ヘルスケアビジネス研究会は、真野俊樹教授をリーダーに日本のヘルスケアビジネスを探求する研究会である。第4回となる今回の研究会では、「デジタルヘルスケアについて学ぶ」というテーマで講演とディスカッションを実施した。昨年から続くコロナ禍を考慮してオンラインでの開催となったが、50名を超える参加者の下、貴重な情報共有の場となった。グローバル化やデジタル化が進展する現代社会の中で新型コロナウイルのパンデミックは、デジタルヘルスケアに対する関心を更に高めている。今回の研究会では、マーケティングとヘルテックの関係を探求すべく、ヘルステック先進国のアメリカでヘルステックを体験している方、ヘルテックに詳しい実務家を交えて実践的な発表、討議の場となった。
 
講演1:タッシル 恵子 氏 米国医療通訳&コーディネーター
『米国のヘルステック事情』

 米国でフリーランス同時通訳者として活躍しているタッシル氏は、新型コロナの世界的流行の中、Zoomを活用し、カリフォルニア州からの参加となった。自己紹介に続いて、コロナ禍の米国で今、何が起きているのか紹介頂くと共に、米国のヘルステック・デジタルヘルス産業の近況について報告頂く。また、米国でのe-診療の事例、米国最大規模の統合ヘルスシステムであるカイザーパーマネンテの紹介を頂く。デジタル化の恩恵により、アプリを活用したオンライン診療やPCR検査などヘルスケアサービスが短時間、低コストで受けることができる。米国でのデジタルヘルス市場の急成長は、高齢化や慢性疾患の増加などによる医療費の増大、テクノロジーの高度化など様々な要因が関係している。この流れは、新型コロナウイルのパンデミックで加速しており、この加速は止まらないだろうと言われている。タッシル氏は、講演の最後に、ニューノーマルの時代へ向けて、「AI&TECHNOLOGY」によって「つながりと気づき」という新たな時代が到来したと述べた。
 
講演2:須藤 隼 氏 昭和大学精神医学教室 医師 / HIMSS Japan committee メンバー
『米国 Health care IT ~その成り立ちとHIMSSを中心に~』

 医師であり、今冬にHIMSS日本支部Japan communityの立ち上げメンバーでもある須藤氏からは、アメリカのヘルスケアITの概況とHIMSSについて発表頂く。米国の市場規模は、2019年に約20兆円から5年後の2024年には約40兆円と2倍になると予想されている。須藤氏は、米国で多種多様なヘルスケアITが隆盛する背景として、国策という行政主導が大きいと指摘する。行政が予算を付けて積極的に介入する背景には、米国における医療費の急増がある。2009年オバマ政権では、医療関連予算は1,500億ドルに昇る。更に“Meaningful Use”としてインセンティブと罰則により導入促進を図った。後半ではHIMSS(ヘルスケア情報管理システム協会)について紹介頂く。HIMSSは全世界で、教育コンテンツ、電子カルテ認証、資格、展示会などを世界中に展開している。2019年に米国オーランドで開催された展示企業には1,323社、総参加者は42,532人、参加者国籍は40か国以上であった。2020年冬に、HIMSSのJapan communityが発足した。更に、須藤氏から、米国ヘルスケアITでの最大のトピックであるInteroperability(相互運用性)やHL7 FHIRについての解説と、日本の独自規格(SS-MIX)との比較などについて紹介を頂く。
HIMSSの活動や概要については、3月5日から全8回開催されるDEGITAL HEALTH NOWでも紹介されるので興味のある方はコンタクト下さい。
 
講演3:阿部 吉倫 氏 Ubie株式会社 代表取締役 / 医師
『AI問診による医師等の働き方改革とCOVID-19対策』

 医師の阿部氏は、2017年5月にUbie株式会社を共同創業した。AI問診を導入することで、医療従事者の果てしない事務作業や患者の受診機会の逸失を解消することができる。医師の時間外労働の主な理由は、「外来・手術の延長」、「カルテ作成」などがある。阿部氏は、外来時間の延長によるカルテ作成時間の延長は、医師が本来行うべき診療ができず大きな問題であると述べる。AI問診ユビーの導入事例から、現場の実際の声を紹介頂く。現場の医師から、導入による診療時間の短縮や患者さんの滞在時間の削減が得られたとの声が寄せられている。導入件数は、200病院を越えている。更に、AI問診ユビーの特徴の他、新機能のユビートリアージ、ユビー閉域網VPN、対応診療科拡充などを紹介頂く。後半では、COVID-19への対応とAI問診ユビーを活用したCOVID-19対策、導入事例、そしてAI問診ユビーの今後の機能開発予定についても紹介頂く。阿部氏は、AI問診ユビーは、生活者とかかりつけ医の間に存在する谷を解消すると述べる。Ubieは、日本の地域医療課題である、2025年問題や地域医療構想の未達を解消するに留まらず、日本の医療を世界に展開すべくフィリピンやシンガポールにも進出している。
 
講演4:菅原 幸子 氏 株式会社ドラビズon-line 編集長
『オンライン診療・服薬指導の規制動向 ~特にオンラインが拓く薬局ビジネスの潮流~』

 菅原氏は、株式会社ドラッグマガジンで「月刊ドラッグマガジン」編集長を務めその後、株式会社ドラビズon-lineを起業しWEBメディア「ドラビズon-line」を運営している。菅原氏は、オンライン診療・服薬指導の規制動向、薬局での事例とそこから広がるビジネスの可能性について紹介頂く。薬局の近未来予想として、アプリの活用やオンライン服薬指導などを活用した新たなつながりの可能性や薬剤師の常駐廃止の是非など取材を通じて得られた調剤薬局の現状について共有頂く。調剤薬局の社長らの声からは、調剤薬局の将来の方向性について、デジタル化を活用した新たな価値共創を目指す強い意欲を感じられた。最後に紹介頂いた「ドラッグストア・薬局が成長するか、生き残るかは、”必要とされるかどうか”だ」という言葉は、調剤薬局の前向きな姿勢が伺えた。
 
 講演の後には、真野教授と講演者、Web参加者で、デジタルヘルスが日本に留まらず世界でどの様に動き出しているのか、活発な質疑、議論が交わされた。調剤薬局の役割やオンライン診療の取組み、日本の医療業界でのプラットフォーマー登場の壁、中国で進む巨大プラットフォーマーの状況など、多くの論点が議論された。今後のヘルスケアビジネス研究会の役割を再認識することができた。ディスカッションのまとめとして真野教授が、ヘルスケア・マーケティングでは、薬の販売や診療という近視眼的なマーケティングでなく、サービスとしてのヘルスケアを捉えることが必要であり、患者、医療機関、卸、薬局、製薬企業などネットワークを通じた関係性を認識することが重要であると述べた。ヘルスケアビジネス研究会では、マーケティングを拡張させ経済的、社会的な役割としてのヘルスケアビジネスの探求を改めて認識する機会となった。今回の研究会では、真野教授によるコロナ禍における社会的動向を概観した後、具体的な事例報告からヘルスケアビジネスの課題と今後の展開について議論を深めることができた。コロナ禍の開催を反映し、各発表内容には、新型コロナウイルスへの対処など多くの知見が盛り込まれ参加者の活動の一助になったと思われる。
 
 本研究会では、ヘルスケアビジネスについて新たな知見の共有や討議を通じて、日本のヘルスケアビジネス推進に寄与したいと考えております。ヘルスケアビジネスに興味を持つ多くの方々のご参加をお待ちしております。
 
(文責:佐藤 幸夫)

 
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