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研究報告会レポート

第3回地域創生マーケティング研究報告会レポート「地域創生マーケティング研究の方向性と課題」

#いまマーケティングができること

第3回地域創生マーケティング研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:地域創生における顧客体験と「コト」型産業
報告者:西村 順二(甲南大学 教授)
    田中 直輔(田中直染料店 代表取締役)
    陶山 計介(関西大学 教授/一般社団法人ブランド戦略経営研究所理事長)
司 会:山口 夕妃子(佐賀大学 教授)
日 時:2021年3月13日(土)16:30-18:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 

【報告会レポート】
 今回の研究会では、今回の研究会ではどのような新しい顧客体験が従来の「モノ」に加わることによって、「コト型」産業として成立していくのか?その結果として地域にどのような魅力を付加しているのかを創業288年という伝統企業の新しい取り組み事例と理論的アプローチを試みながら、ディスカッションを通じて参加者35名前後のみなさまと議論を深めていきました。
 
1. 解題「地域創生の意味すること」
 地域創生の意味することを、人を媒介としたモノとコトの融合による地域創生の可能性という視点から検討された。コトや体験という消費行動を、S-Dロジックの枠組で考えてみること、そしてコト消費における便益遅延性への着目によって、モノを中心とした新価値を対象としたニーズの対応だけではなく、地域ブランドの醸成や地域交流人口の満足度向上などに対応できることが提言された。地域創生において、顧客と地域企業が価値を共創していく、それもモノを購入することで完結していた従来の消費行動から、購入後の体験やコト経験の中で、その共創がうみだされる、そして、それはキーとなる人を媒介して生じてくること、これらの重要性が指摘された。
 
2. 「染色体験とファンづくり:染色材料という『モノ』の『コト』化」
 京都の染色は地域ごとで特徴があり、その地域に合わせた染色材料を販売する染料店が生まれてき。、1733年(享保18年)に田中直染料店は、創業された。 8代目よりモノだけではなく、コトへの転換となる取組が行われるようになり、染料だけではなく、助剤、用具、生地、関連書籍の販売を行うようになった。現在の9代目より、「天然草木染」の普及活動を強化する一方、「染めりえ倶楽部」を発足し、商品を販売するだけではなく、顧客に対して「楽しさ」「喜び」「面白さ」「有難さ」を伝え、顧客と一緒に「コト」を体験することを実践している。その実践において大切にしていることは、
① 手軽で楽しい染色の提案 ② お客様と共に歩める体制づくり(コラボレーション)③ お客様以上にお客様目線を大切にということで社員自身がお客様目線で考えるということを重視している ④ お客様の信用を裏切らない ⑤ 完成品(染色した商品)を販売することによって染色の魅力を発信する ⑥ 染色による新たな可能性の追求ということで、染め直し染色の開発 であり、「田中直染料店」ならではの魅力をモノ・コトとして提供しているとの報告があった。
 
3. 「地域創生と顧客体験、 『コト』型新産業の創出」
 地域・都市を創生するためにはそこでの「体験」を通じた価値創造が重要であるが、それは、「企業や自治体などから消費者・生活者や住民に対して一方的に提供されるのではなく、地域・都市を構成するステークホルダーが相互作用の中でそれぞれ主体的に価値創造に関与すること」というS-Dロジック(Vargo and Lush 2004)」の考え方が有益であると指摘された。
 モノに価値を埋め込み、価値を決定するのは消費者や生活者であり、企業など価値提供者も彼らとの価値を共有する価値共創という視点をもつことが大切である。そうした顧客体験とそれを通じた顧客価値の認識においては「モノ」は必要であるが、それだけでは「コト」にはならない。さらに「地域ブランド」を考えたとき、住民・企業・団体・組織が期待する日常世界と観光客・来街者が期待する非日常世界とをいかに組み合わせてブランド体験を共有し、ブランド・コミュニティとして地域を活性化させていくのかということを考えることが鍵となる。つまり、地域創生のためには日常と非日常のブランド資源を関係者の間で活用するとともに、そこで実現されるブランド体験を地域内外のコミュニケーションを通じて地域のブランド・ムーブメントをつくっていくことが必要であると指摘し、その取り組み事例として新潟県燕三条や広島県竹原市・大崎上島町を紹介しながら、地域・都市内のステークホルダー間のインターナルブランド・コミュニケーションや外部にむけて展開されるエクスターナルブランド・コミュケーションをインテグレートしていくことが求められている、と述べて締めくくられた。
 
【研究会を終えて】
 最後にフロアからの質問も交えながら、ディスカッションを行いました。オンライン開催ということで不手際があり、お聞きの皆様にはお聞き苦しい点も多々あったかと思います。この場をお借りして、お詫び申し上げます。本研究会を立ち上げて2年を迎えました。研究成果として2021年9月出版を目指し研究メンバー全員で執筆しています。引き続き本研究会に関心を寄せて頂き、ご参加いただければと思います。本研究会にご参加いただいた皆様ありがとうございました。
 
(文責:山口 夕妃子)

 
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