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研究報告会レポート

第3回宇宙航空マーケティング研究報告会レポート「あなたなら、人工衛星画像をどうプロデュースするか?」

#いまマーケティングができること

第3回宇宙航空マーケティング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら

テーマ:あなたなら、人工衛星画像をどうプロデュースするか?
日 程:2021年3月11日(木)15:00-17:00
場 所:Zoomによるオンライン開催

 

【報告会レポート】
はじめに(リモートセンシングの歴史)
三好 弘晃(日本電気株式会社 宇宙システム事業部)
 リモートセンシングは1970年代から軍事技術を礎に始まった40年強の新しい技術分野である。米国のLANDSAT衛星が黎明期をささえ、その後は各国でその技術を発展させる形で様々なリモートセンシング活動が行われていった。
 2000年以降、各国の軍事予算の縮小に伴い、デュアルユース化の流れが追い風になり、高解像度画像情報という新たな分野が登場した。1999年には1m解像度画像の商用化が始まり、一般の人も利用できるようになったが、現実には、衛星データは高価であり、ビジネス利用としてはかなり高い価格設定となってしまうため、従来の安全保障利用のアンカーテナンシーの枠を超えられていない。
 2010年以降はNEC、Axelspace、Synspectiveなどが経済性を高めて市場参入するが、利用分野に目を転じるとPOC(Proof of concept)止まりが多く、思ったように市場が拡大していないのが現状である。
本日はどのようにしたら人工衛星画像が社会により浸透するか、それを果たすために乗り越えるべき課題について議論していきたい。
 

 
人工衛星画像の利用動向
坂口 英志(一般財団法人 リモート・センシング技術センターソリューション事業第一部事業開拓課 課長)
 地球観測とは地球観測衛星を打ち上げて、地球の陸、海、大気など、地球の様子を宇宙から観測することである。地球観測衛星に搭載されるセンサは主に太陽光の反射を観測する可視近赤外放射計(光学)と合成開口レーダーの2つがあげられる。近年は多くの事業者が、小型の地球観測衛星を活用し、複数衛星群による衛星画像の提供計画が実現に向けて動き出している。また、画像提供サービス(解像度、頻度、提供までの時間、価格など)のレベルも急速に向上しており、利用可能な人工衛星画像の増加とAI技術の発展に伴い、AI技術を用いて解析結果を提供する新たな解析事業者も出現してきている。既存の解析事業者と共に、様々な分野で実利用に向けた実証をおこなっており、今後ますます人工衛星画像の利用が進んでいくと思われる。
 

高分解能レーダー衛星ASNARO-2と洋上風況解析サービスへの取組
稲場 高節(日本地球観測衛星サービス株式会社(JEOSS)営業課長)
 ASNARO-2は経済産業省の補助事業としてNECが開発・製造し、2018年に打ち上げた高分解能レーダー衛星である。NECが保有・運用しており、JEOSSを設立し、画像提供事業を展開している。レーダー衛星は天候に左右されず、夜間でも撮像が可能なため、災害時の被害状況把握などに活用が期待されている。
 全世界の撮影能力を生かす新たな取り組みとして、東京海洋大学と連携し、ASNARO-2画像を用いた洋上風況解析に関する研究を行っている。
 
竹山 優子(東京海洋大学 助教)
 東京海洋大学は合成開口レーダーを用いた海上風況の解析に取り組んでいる。
 風の強い粗い海面では散乱されたマイクロ波が衛星側に返ってくるという特性を生かし、間接的に海上の風を観測することができる。洋上風力発電の候補海域における高精度で詳細な風況を入手したいという需要があるが、現状は衛星が活用されていない。昨年度の経済産業省事業の実証事業を通じ、精度の確認ができたことを踏まえ、科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)で研究を継続中である。
 

 
地球観測データを用いた沖合養殖上の選定手法に関する研究
川井 匠(立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 修士2回生)
 近年、水産物需要が国際的に高まってきている。将来の水産物需要を満たすためには養殖業にさらなる成長を見込む必要がある。中でも「沖合養殖」は沿岸養殖の100倍を超える潜在的な開発機会が見込まれており、次世代の革新的な養殖形態として期待されている。そのような背景から養殖業の潜在的な「供給」と「需要」の観点から経済的安定性を考慮した沖合養殖場の選定手法を考察することを目的として、地球観測データと地上データを統合して分析を行った。沖合上の潜在的な供給分析、地上における潜在的な需要分析、養殖場候補地の経済的安定性分析の三つのステップから、従来の供給面だけでなく、需要面にも着目した未開拓の養殖適地を選定することが可能であるといえる。
 
全体質疑・意見交換
Q. POCで止まっている例が多いといわれているがそれはなぜか?ビジネスとして衛星データを活用できる有望なセグメントはどこか?海外はプラネット社が先陣を切っているとのことだが、そこが勝ち組なのか?
→(NEC 三好氏)衛星データは事業のあるフェーズのみにしか使えないという制約があることがあげられ、また、衛星データを撮るためのコスト(センサー、ロケット、オペレーション等)が高いので自前でやろうとすると初期投資が高くなかなか厳しいという点があるため、POC止まりになっているのではないかと考えます。
有望なセグメントについては、リスクや機会損失を軽減できる保険は有望と考えます。あとはGoogle Earthなど画像がコンスタントに使われる広告の分野は訴求効果があるため有望ではないかと考えます。
海外の成功事例については公開されていないところもありますが、初期投資がかかるのでやはり“しんどい事業”です。現時点ではcivil用途(災害・防災)と共に、安全保障用途のアンカーテナントで採算をとっているところが多いです。
 
Q. ASNARO-2海外画像販売の実績が少ないという課題について、AIDMAモデルというのがあるが、衛星画像でいうと何をすればもっと売れると考えるか?
→(JEOSS 稲場氏)海外販売網自体があまりなく、そもそも商材として認知されていないというところが課題なので、まずは認知していただくところから始めないといけないと考えております。そのうえですが、やはり画像データだけで売ることには限界があり、画像を利用してお客様の求める情報を提供するアプリケーションによる提供とするなど、売り方も工夫していく必要があると思います。
 
Q.衛星データを活用したいと思ったきっかけなどはあるのか?
→(東京海洋大学 竹山氏)日本では洋上風力発電という言葉があまりない頃から、ヨーロッパではデンマークやドイツなどで洋上風力がすでに盛んでした。その当時ヨーロッパではCバンドの合成開口レーダーの衛星を活用して成果を上げていたので、まずはCバンドをつかって日本沿岸を分析したいと考えたのがきっかけです。
→(立命館大学 川井氏)所属しているテクノロジー・マネジメント研究科で経営学×テクノロジーを学んでいます。先生から研究アイデアとして最近は衛星データの活用がホットな話題と聞き、また自分自身も宇宙や魚、海、釣りに興味があったためです。
そのうえで調査を行っていく際に沖合にマーケットを移す必要があるという点と衛星データの活用がマッチしたため、衛星データを活用したいと考えました。
→(NEC三好)お二人の話を聞くとイノベーションを生む手段として衛星のデータ利用の機運が世界中にあると感じました。お金が回る仕組みに変えるにはどうしたらよいと思いますか?
→(立命館大学 湊氏)どのセグメントも有望だと思います。ビジネスのデザインの仕方が大事であり、データに関するものなので人の意思決定をよりよくすることが価値づくりとなります。今回の2つの事例も一回決めたらそこで価値づくりが終わるという課題があるので、イニシャルの意思決定だけでなくオペレーションのフェーズでの意思決定を意識していく必要があるのではないかと考えます。
→(JEOSS 稲場氏)ご指摘のとおりです。洋上風力向けの風況把握の研究も最初の立地調査で活用した後にどう活用するかが課題です。例えば災害分野だとしても、災害がないときはどうするの?となります。本日のこのような場でアイデアを皆さんからいただければと思います。
→(東京海洋大学 竹山氏)湊先生からのご指摘のとおりです。まずは洋上風況マップの整備がメインの研究でしたが、日々使われるようなものにしていきたいと考えています。実現可能かどうかはまだ難しいですが、日々の運用の予測シミュレーションの精度を上げるのに衛星画像が役立つのではないかと考えています。ただし、今の合成開口レーダー衛星の時間分解能ではまだまだ足りないという課題もあります。
→(NEC 三好氏)撮像頻度が上がると、それに対して利用できるシーンが増えますが、初期コストが上がります。そのバランスに損益分界点が見えてくるのではないかと考えます。

 
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