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研究報告会レポート

第5回アート・イン・ビジネス研究報告会レポート「ビジネスパーソンが本当に求める「アート思考」とは?」

#いまマーケティングができること

第5回アート・イン・ビジネス研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:ビジネスパーソンが本当に求める「アート思考」とは?
司 会:大西 浩志(東京理科大学)
ファシリテーター:和佐野 有紀(PROJECT501 ディレクター / 医師)
パネラー:西川 千雅(西川流 四世家元)
     若林 純(慶應義塾大学 環境情報学部 / ミュージシャン / michinaru株式会社 インターン)
     神谷 泰史(コニカミノルタ株式会社 デザインストラテジスト / TAKT PROJECT株式会社
     アートストラテジスト / 情報科学芸術大学院 博士後期課程)

日 程 :2022年3月19日(土)10:30-12:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 近年、デザイン思考を発展させて、アートの考え方や手法をビジネスへのイノベーション促進のために取り入れる「アート思考」が注目されています。一方で、日本企業によるアートへの支援や関与の水準は、欧米などの基準と比較するとまだまだ低い状況にとどまっています。そこで本研究会では、企業、およびビジネスパーソンが活動のなかにアートを取り入れ、ビジネスや社会に貢献するための理論的・実践的な方法論を検討し、その評価方法を開発することを目的に研究を進めています。
 本セッションの第一部では、リサプロリーダーである東京理科大学の大西より、乱立している「アート思考」について現状の取り組みを整理するため、デザイン思考とアート思考の比較やアート思考ワークショップのタイプについて分類し報告を行いました。
 第二部ではパネルディスカッション形式で、アート思考ワークショップを実際に提供されている方々を、アーティスト側と企業のマネジメント側それぞれから実践者を招聘し、現時点でビジネスパーソンが本当に求める「アート思考」についてディスカッションを実施しました。
 1人目のパネリストとして、大学生ミュージシャンでありmichinaru株式会社にて事業開発コンサルティングにも携わっている若林氏より、ご自身の経験からビジネス側がアート思考に求めることがステレオタイプになりやすいとのご指摘がありました。アーティストは本来多面的な存在であり、アーティストがビジネスに入っていく場合には、ビジネス・ビジョンへの共感と経営に近い場面でコンセプチュアルスキルを生かして長期的な取り組む必要性を指摘されました。
 
若林氏の報告の様子
若林氏の報告の様子
 
 2人目のパネリストの西川流・四世家元の西川氏は、日本では古来から経営者(為政者)は古典や能などのアート思考を持っていた歴史や近年の事例などをご紹介いただきました。また、企業に対して実施されているワークショップの実践例をパフォーマンスつきでご紹介いただき、踊り(ダンス)による身体性と脳活動との関連などを、オンライン参加者も実際に体験することができました。
 
西川氏の報告の様子
西川氏の報告の様子
 
 3人目のパネリストはビジネス側として、コニカミノルタ株式会社およびTAKT PROJECT株式会社にてデザイン思考とアート思考を実践されている神谷氏にご登壇いただき、コニカミノルタ株式会社にて現代アーティストの久門剛史氏と実施したアート思考ワークショップの実施事例をご紹介いただきました。コロナ禍によりビジネスの場でリモート会議などの簡便なコミュニケーションが普及したなかで、敢えてアナログな往復書簡を活用するなど、様々な工夫のご紹介とワークショップを円滑に進めるためにアートとビジネスを橋渡しするファシリテーターの必要性を指摘されました。
 
神谷氏の報告の様子
神谷氏の報告の様子
 
 参加者を交えたディスカッションでは、アート思考のワークショップを実践するためには、アーティスト側とビジネス側が共に歩み寄ってお互いに学び合う姿勢が必要であるとの見解が示されました。特に、ビジネス側の経営人材にアートに限らず多面的な教養を涵養していく取り組みが必要であること、また、アーティストはビジネスのためだけにアート活動を行っているわけではなく、ビジネス側はアーティストの活動や姿勢に敬意を払う必要を議論しました。
 今回はアート思考ワークショップの第一線での取り組みをご紹介いただき、実際にビジネスに関わっていらっしゃるマーケティング学会会員の方々にとってもアートを取り入れるための参考にしていただける機会になったと思います。
 
 参加者の皆様ありがとうございました。
 
(報告書作成:プロジェクトリーダー 大西 浩志)

 
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