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研究報告会レポート

第6回カスタマー・エンゲージメント研究報告会レポート「ボランティア・エンゲージメント-カスタマー・エンゲージメント概念の拡張(2)-」

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第6回カスタマー・エンゲージメント研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら

テーマ:ボランティア・エンゲージメント-カスタマー・エンゲージメント概念の拡張(2)-
報告者:田口 尚史 氏(茨城キリスト教大学 教授)
    大藪 亮 氏(岡山理科大学 教授)
    松本 継太 氏(白川村教育委員会 事務局)
    出口 美智子 氏(公益財団法人日本ナショナルトラスト 事業課)
日 程:2022年3月28日(月)15:00-17:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 

【報告会レポート】
 今回の公開報告会では、カスタマー・エンゲージメント概念のボランティア文脈への拡張としてのボランティア・エンゲージメントについて、研究者と実務家の双方から3件の報告が行なわれました。第一報告では、田口尚史・大藪亮の両氏から、「ボランティア・エンゲージメントの世界文化遺産への適用」と題する共同研究として、カスタマー・エンゲージメントの拡張概念としてのボランティア・エンゲージメントについて報告がありました。S-Dロジックからカスタマー・エンゲージメント、さらにはボランティア・エンゲージメントへと至る研究潮流の概説、現在のボランティア・エンゲージメント研究のリサーチ・ギャップ、ボランティア・エンゲージメントの先行要因、ボランティアの文脈価値、ボランティアの再継承の間の概念枠組みが提案されました。
 第二報告では、白川村教育委員会事務局の松本継太氏より、「白川郷合掌造り集落の保存活動」と題して、岐阜県白川村の荻町地区における白川郷合掌造り集落の保存活動について報告がありました。「結」と呼ばれる地域住民共同での茅屋根の葺き替え、「白川郷荻町集落の自然環境を守る住民憲章」(売らない、貸さない、壊さない)の制定による住民運動など、合掌造り集落の保存活動に若者を含めた地元住民が積極的に関与し、後継者を育成することによって円滑な世代交代が進められているとのことでした。白川村としては、交通渋滞緩和対策としての公共駐車場の整備・運営や、茅屋根の葺き替えおよび休耕地活用などに対する補助を通じて、地域住民の主体的な活動と世界文化遺産としての合掌造り集落の建物や景観を維持しているとのことでした。
 第三報告では、公益財団法人日本ナショナルトラスト事業課の出口美智子氏より、「われらが紡ぐ白川郷かややねプロジェクト」と題して、白川郷の合掌造り集落へのボランティア活動の概要が報告されました。世界遺産としての白川郷に対して日本ナショナルトラストが行っている地域遺産支援プログラムの一環としての「秋の一斉茅刈り」と「かややね会議」という活動の内容について紹介いただきました。独特な取り組みとしては、白川郷の現地での茅刈りのボランティア活動だけでなく、「かややね会議」と称して、年に5~6回、貸会議室などでボランティアが参加しての会議を行っているとのことでした。この会議では、ボランティア活動で現地に行った時のイベントを企画したりするなど、ボランティア自身が活動計画の立案に関与していることが特徴的でした。
 
【報告会を終えて】
 今回は、世界文化遺産の白川郷での取り組みについて報告および議論をしました。白川村の荻町地区では、合掌造り集落を維持・保存するために「白川郷荻町集落の自然環境を守る住民憲章」を制定し、地元住民が主体的に取り組むだけでなく、日本ナショナルトラストとの協働により茅屋根の葺き替えに必要な茅の刈り取り作業にボランティアを動員していました。しかし、単に茅刈り作業だけを任せるのではなく、ボランティア活動の計画策定にまでボランティアを関与させ、地元住民との交流機会を生み出すことで、ボランティア、地元住民、ボランティア組織とのインタラクションを促進させ、結果として、ボランティアの知覚価値を向上させることで、継続的なボランティアの確保を実現していました。
 世界文化遺産の維持・保全のためのボランティアの確保には、参画意識の醸成、権限の委譲、各アクター間でのインタラクションを通じたコミュニティ感覚の認知などが重要な要因ではないかと感じました。
 

田口尚史・大藪亮両氏の報告(左)と松本継太氏の報告(右)
 

出口美智子氏の報告(左)と参加者の皆様(右)
 
(プロジェクトリーダー:田口 尚史)

 
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