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研究報告会レポート

第10回ブランド&コミュニケーション研究報告会レポート「サステナブルな社会に向けたブランド・コミュニケーション」

#いまマーケティングができること

第10回ブランド&コミュニケーション研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:サステナブルな社会に向けたブランド・コミュニケーション
ゲスト:西尾 チヅル 氏(筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授)
日 程:2022年3月19日(土)10:30-12:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 第10回研究会では、環境マーケティング研究の第一人者である西尾チヅル教授(筑波大学)をゲスト講師としてお招きし、サステナブルな社会に向けたブランド・コミュニケーションのあり方についてご講演をいただいた後、参加者を交えたディスカッションを行った。
 

 
 西尾教授のご講演では、前半にはサステナビリティをめぐる国内外の情勢、および、産業界での動きについて紹介された。日本政府は2018年に第5次環境基本計画として、「カーボンニュートラル社会」や「サーキュラーエコノミー」の実現を掲げ、企業にとってはサステナブルな社会を実現するための積極的取り組みが不可避の課題となっている。
 一方で、環境配慮型マーケティング(エコロジカル・マーケティング)の実践には様々な課題もある。従来のマーケティングは、顧客のニーズに合わせた製品開発・販売を旨とするが、エコロジカル・マーケティングでは、顧客のニーズのみならず、環境負荷の低い製品を開発し、それを消費者が正しく消費し、正しく廃棄(リサイクル)するという、多面的で、複雑で、長期的な視点が必要となる。特に、従来のマーケティングでは対象でなかった資源回収のためのリサイクルチャネルをどう構築するかは大きな課題である。消費者の目から見ても、複雑な構造が理解しにくく、成果が見えにくく、一方でコストや労力がかかることから、理解と協力を得るのは容易ではない。
 後半では、消費者のエコロジー行動をどう動機づければよいのかに関して、西尾教授の研究成果を基にした提言が行われた。西尾教授の最近の調査によると、環境対策について「一人一人が意識を持って行動しなければならない」と考える人は増えており、大震災やコロナ禍を経て、消費者の社会への意識が高まってきていることが示された。しかしながら、行動レベルでは、ゴミの分別やマイバッグの利用などの法制度化されたエコ活動には積極的であるものの、コーズ・リレーティッド・マーケティング等の企業の社会貢献活動に対する理解や協力意向は低水準で、意識と行動のギャップが存在することが指摘された。
 また、エコロジカル消費は、使命感や倫理観によって促すばかりでなく、消費活動が消費者にとっては自己表現の一種でもあるという視点も必要である。西尾教授は、エコロジー行動を実践することが消費者個人の価値体系においてどれくらい重要であるか(「エコロジー関与」)の重要性について以前から提唱されてきた。同時に、近年の調査では、「周囲のみんな(家族・友人)が協力している」という社会規範の影響が極めて大きいことも指摘された。
 最後に西尾教授は、消費者の地球環境への関心や社会貢献の意識が高まる中、ブランド・コミュニケーションにおいては、いかにしてエコロジカル・マーケティングをストーリーとして位置づけていくか、消費者の役割を明確化すると共に、成果を可視化して消費者の関与を高めていくかが重要であると指摘されて講演を終えられた。
 フロアからは、エコロジカル・マーケティングの海外での状況や、消費者から理解を得るための方法などについての質問があり、活発な議論が行われた。
 
(文責:上智大学経済学部・ブランド&コミュニケーション研究会リーダー 杉谷 陽子)

 
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