2013 年 33 巻 2 号 p. 49-64
新製品開発における顧客志向の重要性について,これまで多くの論者によって強調され,売上や利益などのパフォーマンスとの因果関係が議論されてきた。ところが,企業価値の観点から顧客志向の役割を論じる研究はあまり着手されてこなかった。そこで本稿では,顧客志向が企業価値へ及ぼす影響について,先行研究のレビューを通じていくつかの仮説を導出し,日本の上場企業を対象とした調査の結果を基に検討していく。分析の結果,顧客志向は新製品パフォーマンス(売上と市場シェア)を媒介して,企業価値(トービンのq)を向上させることが明らかとなった。また,新製品優位性と企業価値は,直接的な因果関係にはなく,新製品パフォーマンスを媒介した間接的な関係であることも示された。