2014 年 33 巻 3 号 p. 5-31
本論文は,企業と顧客の価値共創に関して,「共創志向性」という対概念を示すことによって,なぜ特定の企業/顧客が価値共創に参加するのかという根源的な問題を読み解く手掛かりを提供する。価値共創に関する議論は,サービス・ドミナント・ロジックの基本的前提によるサービス概念,価値の捉え方,顧客観といったモノの見方にとどまらず,組織の共創能力,価値星座,目標のプロセス管理など,近年,それに関連する研究が積み上がっている。そうした中で,我々は,使用価値/文脈価値が生み出されるダイナミクスに着目し,その事前規定性と事後創発性という性質を指摘することによって,双方の共創志向性が,ダイナミズムを駆動する主たる原動力であることを示すとともに,それらを鳥瞰する概念枠組みを提示する。