マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
論文
顧客ゴールの動的変容と思考形式の影響
─ 顧客ゴール育成シナリオの可能性 ─
芳賀 麻誉美阿久津 聡
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2014 年 33 巻 3 号 p. 46-71

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抄録

本論文では,公文教育研究会を対象とした4つの研究を通して,価値共創におけるゴール変容に焦点をあてるのと同時に,個人の文化的差異(分析的-包括的思考形式)の影響も定量化し,サービスグローバリゼーションにおける課題を指摘しながら,「顧客ゴール育成シナリオ」の提供の可能性について検討,報告する。
「短期的・具体的ゴール」と「長期的・抽象的ゴール」という多目的構造を同定し(研究1),これらが短期(5か月)でどの程度安定しているか,長期(数年単位)で動的に変容するかを,国内の縦断調査(研究2)と横断調査(研究3)で明らかにした。その結果,5か月程度の短期では大きく顧客ゴールが変化しないことが縦断調査で示され,他方,数年単位の長期の継続により「短期的・具体的ゴール」と「長期的・抽象的ゴール」がそれぞれ変化し,より「長期的・抽象的ゴール」を志向する可能性があること,そして,目的志向性は強くなる傾向があることが,横断調査で示された。また,国内の縦断調査と横断調査のいずれにおいても,個人の文化的差異(分析的-包括的思考形式)が顧客ゴールの差異に関係することが定量的に把握できた。
さらに,エキスパート・インタビュー(研究4)では,「顧客レベル(継続段階)」に合わせた提供価値の変容を社内で共有,実現化のための取り組みをしていることが確認できた。
以上より,本論文では今後,「顧客ゴール育成シナリオ」の提供が可能であることを示す。

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© 2014 The Author(s).
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