電子商取引の拡大に伴い,価値の提案,創造,獲得を内容とするビジネス・モデル革新が広い関心を集めるようになった。既存の戦略論を,より具体的な活動システム・ベースにまで深めて議論するビジネス・モデル論はアカデミアとビジネスを架橋する新たな研究分野となっている。小売経営論も例外ではない。顧客のニーズを充足する市場戦略(業態・出店戦略)とそれを運営・実行する業務システム(店舗運営・商品調達・商品供給)が小売事業モデルを構成する基本要素となる。筆者による一連の研究を手掛かりに,従来の小売形態発展論を超えた小売事業モデルの分析枠組を再検討し,価値創造のメカニズムを考えてみる。