2014 年 34 巻 1 号 p. 21-34
ソーシャルビジネスの代表事例とされるケアプロ株式会社について,事業を必要とする社会的背景と起業に至るまでの経緯,起業から現在に至るまでの事業の変遷と現状での将来ビジョン,さらにはこれまでの事業を振り返る中での事業特性の抽出,などについて,創業者である川添高志の発言にできるだけ忠実に記述することでケースとしてまとめた。このケースを検討した結果,ケアプロの事業形態は経済産業省の定義するソーシャルビジネスの定義を忠実に満たしているものの,その事業は川添本人の個人的経験を色濃く反映したものであるがゆえに独自の発展経過をたどっていることが明らかとなった。このことから,個人的経験の優位というソーシャルビジネス一般に敷衍できるこの特性が,ソーシャルビジネスの多様な展開の源泉になる可能性が示唆された。