マーケティングジャーナル
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制御動機づけられた消費者の選択行動
飯野 純彦
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2015 年 34 巻 3 号 p. 161-180

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抄録

店頭の陳列を見渡せば,非常に多くの商品であふれている。このような状況を目の当たりにした消費者は,比較検討して選択することが面倒になり,妥協した選択をしたり,購買そのものを延期することが予想される。選択肢が多くなると迷いが生じてかえって購入率が下がるというような現象は「決定麻痺現象」と呼ばれ,質問紙実験を用いて実証されてきた。またIyengar and Lepper(2000)は,フィールド実験を通じてこうした現象が現実の消費者行動でも発生していることを指摘している。消費者行動を能動的な問題解決行動であり,目標志向的と捉えると,自ら目標を制御する「制御動機づけられた消費者」の選択行動を考えることで,前述したような予想される行動の回避策が提案できる。そこで本稿では,第1に「妥協効果」研究を整理することで,制御動機づけられた消費者が妥協的な選択行動を回避すべく,新たな妥協効果の軽減要因を検討している近年の研究を紹介する。また,選択肢が多すぎる現象に対しては,主に,「選択肢の数」に焦点をあてた研究と,「品揃えの大きさ」に焦点をあてた2つの研究視点から,制御動機づけられた消費者の選択行動における対応策を考えることができる。しかし,これらの既存研究の多くは,消費者の意思決定が時間や空間といった「心理的距離」にどれほど依存しているかを考慮していない。そこで本稿では,時間軸に焦点をあて,第2に「異時点間選択」研究について,経済学的視点と心理学的視点から整理する。特に,近年注目されている心理的距離を考慮した「解釈レベル理論」研究について詳細に議論し,時間軸を考慮した,より制御動機づけられた消費者にマッチした品揃えを提案する新たな研究を紹介する。

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© 2015 The Author(s).
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