マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
論文
量販店自社開発商品(プライベートブランド)の“ブランド性”に関する実証的検討
─ セブンプレミアムとトップバリュに関する検討を中心として ─
綿貫 真也川村 晃司
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2015 年 34 巻 4 号 p. 102-123

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抄録

最近の量販店グループにおけるPB(プライベートブランド)は単なるナショナルブランド(以下,NBとして略)の低価格代替品ではなく,品質・付加価値の向上も著しく,NBと肩を並べるものもあらわれてきた。流通・小売企業の経営の側面から見ると,高い粗利,企業としての差別化を可能とする自社開発製品を提供できるため,PBの存在は無視できない。しかしながら,PBに関するブランドエクイティの議論が十分とは言い難い。果たしてPBはブランドであるのか,コモデティとして価格機能を提供する事でドメインを形成する事が可能なのか,という議論も残されていそうである。本研究では,セブンプレミアムとトップバリュという我が国の主要小売りグループにおけるPBを取り上げ,PBのブランドエクイティ構造を明らかにし,PBの“ブランド性”について検討・評価を行った。その結果,①限定的ではあるが,PBは価格選好ではなく,情緒的な選好要因による“ブランド”と言える可能性があることが明らかになった。さらに,②購買意思決定過程の検討においても,PBは明確にブランド連想が寄与する中心ルートによる購買意思決定が行われていることが分かった。最後に,③セブンプレミアムとトップバリュのブランドエクイティ,即ち提供価値における相違についての検討を行った。両PBのブランドエクイティ構造は同質であるものの,セブンプレミアムはトップバリュに比して情緒的価値が高く,機能的価値や購買意思決定に与える影響も強いことが示唆されている事が導き出された。

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© 2015 The Author(s).
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