2016 年 35 巻 3 号 p. 45-62
本論文は,クラウドソーシングやクラウドファンディングなどの技術を通じて,数多くの顧客がこれまでにない規模で価値共創に参画するプラットフォーム型のサービス・イノベーションの普及過程に焦点をあてる。企業でも顧客でもない,社会を構成する他者による反発がサービス・イノベーションの社会受容を阻む際,プラットフォームの運営管理に関する権限を持つ「レギュレーター」が果たす役割について議論する。理論上の貢献としては,従来のサービス研究における価値共創の議論,イノベーション研究におけるユーザー・イノベーションの知見に,規制科学(レギュラトリー・サイエンス)の視点を取り入れた,価値共創の「アクター・モデル」を提案する。また,実務上の知見として,レゴを通じた価値共創プラットフォーム「LEGO CUUSOO」の事例研究から,「第一のアクター」である企業,「第二のアクター」である顧客,「第三のアクター」であるレギュレーターの役割に関する仮説創造型の議論を展開する。