本論文では,気分や情動などの感情が経済行動の意思決定に及ぼす効果について,行動経済学や神経経済学の分野でも特に近年盛んに研究されているプロスペクト理論の観点から説明を行い,プロスペクト理論と感情の問題の関係や,それに関する神経科学的知見について説明を行った。本論文では,まず感情の定義や感情研究の経緯を簡単に述べ,感情操作や感情測定の方法について説明した。次に,意思決定現象を説明するプロスペクト理論の概説を行い,感情の経済行動の意思決定への効果についてのプロスペクト理論に基づく説明とそれに関連する実験例の紹介を行い,さらにプロスペクト理論と感情に関する神経経済学の知見をもとに感情の意思決定への効果についての理論的考察を行った。最後に,これらの知見の消費者行動研究やマーケティング実務への含意について考察した。