マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
論文
ダイナミック・ブルー・オーシャン戦略
― マーケティングと経営戦略論の邂逅 ―
川上 智子池上 重輔
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2017 年 37 巻 2 号 p. 55-69

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抄録

本稿はブルー・オーシャン戦略という共通言語を手掛かりに,マーケティング論と経営戦略論という異なる背景知識を有し,アカデミズムとプラクティスのキャリアも異なる研究者が対話し,2つの研究領域を架橋する試みである。
実務の現場では常態ともいえる事前計画と事後創発の共存する局面について,マーケティング論・経営戦略論の分野では,それぞれ研究蓄積が進んでいる。先行研究のレビューから得られる知見に基づき,本稿では,組織内の経営層と現場,組織と市場,組織と第2の市場という3つの局面で,事前計画と事後創発のギャップが生じることを示す。
さらに2つの事例分析に基づき,ブルー・オーシャン戦略が事前計画と事後創発の共存をマネジメントする有力なツールとなり得る可能性を指摘する。ただし,現時点でのブルー・オーシャン戦略には,マーケティングの本質ともいえる上市後に「価値と文脈を同時に創出する」点が明示的に反映されていない。
そこで本稿では,マーケティングの視点をより強化し,市場における事後創発の要素を加味した「ダイナミック・ブルー・オーシャン戦略」を新たに提示し,新たな理論展開の可能性を示唆する。

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© 2017 The Author(s).
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