マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
論文
ブランドマネジメントに関する慣性の強化と緩和
― 創造的原点回帰によるブランドのあるべき姿の再構築 ―
大竹 光寿
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2017 年 37 巻 2 号 p. 96-111

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抄録

本論文では,ブランドマネジメントに関する慣性が強化・緩和される条件を明らかにする。とりわけ,当該企業が技術革新や新たな業態の誕生といった市場環境の変化に直面しているのにもかかわらず,ブランドを革新することが難しくなってしまうという慣性に着目する。西川産業株式会社のコンディショニングマットレス「AiR(エアー)」の事例を通じて明らかにされるのは,そのような慣性が,ブランドに対する知識という市場に蓄積された資源とそれを構築する過程で蓄積された組織能力の存在によって強化されており,ブランドのあるべき姿への共通の理解が組織内の求心力を高める一方で,それがブランドの革新を阻んでいる点である。こうした組織内に生じた慣性は,変化する市場環境を機会として認識した革新の推進者による個人的かつ直接的説得や,新たに設立された組織からの間接的影響などを通じて,資源と環境に対する多くのメンバーの主観的認識が変化することで緩和されていく点が示される。

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© 2017 The Author(s).
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