2018 年 37 巻 3 号 p. 131-146
甚大な災害がひとたび発生すると,予期せぬ場所でサプライチェーンが寸断し,企業の生産活動は停滞する。当該企業の顧客のみならず,場合によっては社会全体にまで深刻な被害をもたらす。このような事象は世界中で度々発生している。強靭なサプライチェーンを構築するために企業はどうあるべきか,世界中の研究者がその答えを探してきた。サプライチェーン・レジリエンス研究が本格的に開始されて約15年が経過し,サプライチェーン・ネットワーク内の協業がレジリエンス獲得のカギを握ることがわかってきている。そこで本稿では,サプライチェーン・レジリエンス研究のレビューをおこない,研究の潮流を俯瞰するとともに,特にネットワーク・アプローチによる研究の進展について見ていく。また,サプライチェーン・レジリエンスと競争優位獲得を結び付けたマーケティング研究について紹介する。最後に,当該研究分野における今後の課題を提示する。