2018 年 37 巻 4 号 p. 119-131
本稿の目的は,同族企業を5つの経済モデルから概観し,今後のマーケティング研究に同族企業の行動原理やその特徴から生まれる新しい視点を提供することにある。本稿では,同族企業特有の企業行動が「社会情緒資産理論」で主張される社会情緒資産を目的として採用されていると考える。
マーケティングと企業の業績の関係について様々な研究が行われてきたものの,日本企業の大部分を占める同族企業の視点からの研究はあまり見られなかった。同族企業の行動原理やその特徴は,非同族企業とは大きく異なっているため,財務的利益のみを追求することに焦点を当てたマーケティング計画やそれを前提としたマーケティング研究は同族企業の文脈には即さない。本稿では,これらを理解し,それに即したマーケティング研究を行うことで,よりリアリティを持ち,有効な調査を行うことができると考え,同族企業の行動原理と特徴への理解を深めていく。