リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第22回地域活性化マーケティング研究報告会レポート「ふるさと納税の返礼品を軸にした地域プロモーションとファンマーケティング」

第22回地域活性化マーケティング研究報告会 > 研究会の詳細はこちら

テーマ:ふるさと納税の返礼品を軸にした地域プロモーションとファンマーケティング
報告者:株式会社JTBパブリッシング 地域交流プロデュース部マネージャー 
    兼 洲本市魅力創生課上級特命専門官・東京事務所所長 青木 洋高 氏
    洲本市 企画情報部魅力創生課長 塩寺 肇 氏

日 程:2021年12月4日(土)13:00-14:40
場 所:Zoom使用によるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 青木氏は、JTBパブリッシングにおいて、これまで旅行情報誌「るるぶ」などの編集・発行に携わり、2017年から「editor’s fav 『るるぶキッチン』」という飲食店舗を新規事業として立ち上げ、食材を起点として地域と関係を深め、店舗をメディアとして機能させる形での地域活性化に取り組んできました。近年、兵庫県淡路島の洲本市との関係を深め、そのふるさと納税の活性化にも貢献されています。
 そこで今回は、洲本市企画情報部魅力創生課長塩寺肇氏から、洲本市のふるさと納税の取り組みでの成果をご報告いただきました。その上で、青木さんから洲本市とJTBパブリシングの協働での取り組みを詳細に、また、ふるさと納税の返礼品を軸にした地域プロモーションとそこから顧客を地域ファンにしていくマーケティングの意味付けが説明されました。
 
報告概要
 淡路島の中央に位置する兵庫県洲本市は、ふるさと納税を基幹事業に位置付けている。2020年度では寄附額で全国8位、5年連続で兵庫県1位(金額、件数とも)と急成長している。返礼品(特産品)が類似する淡路島の他の2市と比べても圧倒的な寄附が集まっている。市にとっては、財政面での貢献が大きいことはもちろんのこと、ふるさと納税を軸にして、寄附者に返礼品(特産品)を通して、市の認知度を高め、地域のファンにつなげることに力を入れ成果をあげている。特に寄附者へのお礼状施策などきめ細かいフォローによってリピート化を図った。
 さらに、ふるさと納税のPR重点地域を東京・首都圏とし、都内でのアンテナショップの運営や、飲食店や社員食堂など企業連携でのプロモーションやイベント出展を積極的に行った。2020年には株式会社JTBパブリッシングと包括連携協定を締結して、同社が運営する「るるぶキッチン」をはじめ、とくに首都圏マーケットにおけるプロモーションを強化した。2021年2月からは常設の市の東京事務所を、同社のオフィス内に設け業務を委託して運営している。また、返礼品開発の分野でも連携を深め、市の特産品を活かした「おせち料理」の返礼品開発などでは市内の多くの事業者を巻き込んだ取り組みを加速させている。2020年度は洲本市の認知度が3割程度と低い首都圏から4割を超える寄附を集めることに成功した。
 寄附者への大規模アンケート調査では、返礼品の満足度が高いことだけでなく、これら返礼品を通して寄附者は地域を理解して関心を抱き、旅行の需要を拡大させ、移住の候補地にまでつながることがわかった。返礼品事業者にとっては、新しい顧客との接点拡大につながり、需要が拡大し、雇用の拡大にもつながっていた。なかには、ふるさと納税をきっかけに、新たな商品開発に取り組むなど、事業領域の拡大に取り組む好例も見られた。自治体ごとの寄附額ばかりに注目が集まりやすいが、ふるさと納税を目的ではなく、きっかけにして、いかに寄附者を地域のファンに変容させることができるかを証明したものである。
 
【報告会を終えて】
 洲本市のふるさと納税担当部署が「魅力創生課」というネーミングであることは、まず市の意気込みが感じられ、さらに連携の際の対話のきっかけづくりに奏功しているように伺われます。
 ふるさと納税の急伸長活性化要因として、塩寺氏の取組みがまさにマーケティング戦略的であり、全国の寄付者(消費者)と地域の生産者をつなぐ機能を十分に認識され、きめ細かく地道であることがあげられます。すなわち、行政一般にはまだまだ少ない顧客セグメンテーション(洲本を知っている消費者/知らない消費者の区分や、新規顧客開拓と実績者のリピーター化)、ターゲティング(東京など首都圏を寄付者開拓の重点地域とする)、ポジショニング(玉ねぎなど豊富な食材の特徴明確化)といったマーケティングの基本が着実に取り組まれて成果をあげているということでしょう。
 さらに全国に支店を持つ大手都市銀行や、スーパーマーケットでなく高感度なファッション専門店企業、そして旅行メディアであり食の展開に力を入れているJTBグループ企業との連携づくりなど他の地方行政にない戦略的な企業連携の取り組みが高く評価されます。
 今後、このふるさと納税の成果としての寄付者コミュニティの洲本市への愛着・共感をさらに活かし、洲本市へ訪れ、洲本市で食を楽しむようにつなげていくマーケティング展開が期待されます。具体的には、玉ねぎなどの食材のストーリー性の深掘り、料理への仕立て(シェフの移住促進を含む)、どこで食するかのシーン形成(例えば松原のある海岸、レンガ造りの建物群のテラス、コンパクトに活性化した商店街)、城下町としてあるいは温泉地としての要素の活用などからプランが構想できるのではないでしょうか。
 淡路島:洲本市が、大阪・神戸といった大消費地に近い農業地域といった立地の強みを活かし需要を安定化させながら、一層特徴的なマーケティング展開で地域活性化が進展することが真に期待されます。
 
(プロジェクトリーダー:宮副謙司)
 
洲本市のふるさと納税のウェブサイト
洲本市のふるさと納税のウェブサイト
出所:https://www.city.sumoto.lg.jp/site/furusatotax/

 
Join us

会員情報変更や、領収書発行などが可能。

入会についての詳細はこちらから。

member