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研究報告会レポート

第3回鉄道沿線マーケティング研究報告会レポート「鉄道会社による社会課題解決型ビジネス ― 小田急の循環型社会を目指す新規事業「WOOMS」を例に ―」

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第3回鉄道沿線マーケティング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:鉄道会社による社会課題解決型ビジネス ― 小田急の循環型社会を目指す新規事業「WOOMS」を例に ―
日 程:2021年12月1日(水) 19:00-21:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
1. 循環型社会実現に向けたビジネスへの挑戦
正木 弾 氏(小田急電鉄株式会社 経営戦略部 課長 ウェイストマネジメント事業WOOMS 統括リーダー)

 正木氏より取り組みの背景、課題と施策、反響などについてご説明いただいた。

  • 小田急電鉄では、2021年9月にウェイストマネジメント事業WOOMSを事業化。
  • 小田急沿線は多彩な都市構造を持ち、自然資源にも囲まれている。それゆえ、エリアごとに多様な社会課題を抱える日本の縮図のような地域であり、これらに積極的に取り組み解決策となる事業を生み出すことで、他の地域における同種課題の解決にも貢献していく。
  • 経営ビジョンとして「UPDATE小田急~地域価値創造型企業にむけて~」を掲げ、「社会・地域」「経済」「環境」の3つの軸を経営判断に取り入れ事業を峻別し、次の100年に向け地域価値創造企業へと事業モデルの更新を進めている。さらに、すべての事業で「DX」「共創」「ローカライズ」の3つの発想を徹底。
  • 一方で、社会的にサーキュラーエコノミーへの転換の必要性が求められている。
  • そうした中で、循環型社会の実現に向けて、地域の現実的な課題であり、地域起点の行動が循環型社会実現への道を拓く“ごみ”に着目した。小田急沿線でも、ごみ処理費の高騰、人手不足の影響で収集事業者が見つからない、地域でも人手不足や高齢化や災害の影響で安定的な処理が困難になるなどの問題が起きており、ごみの収集・運搬に課題があることがわかった。
  • そこで、小田急電鉄として、ごみの収集・運搬を支援する新たなインフラの共創を目指し、ルビコン・グローバル社と提携。神奈川県座間市と「サーキュラーエコノミー推進に係る連携と協力に関する協定」を締結した。
  • 自治体の資源・廃棄物の収集に関する課題において、行政DXがキーワードになっている。そこで、小田急電鉄では、収集サポートシステム、および管理サポートシステムを自治体へ提供。
  • 2020年8月より座間市において実証実験。①処理場への輸送回数の削減、②最適なコース設定、③ペーパーレスによる業務効率化、を図った。
  • 効率化でうまれた余力をまちづくりに活用。新たなリサイクルへの対応として剪定枝のリサイクルを実現。市民への啓発活動の拡充として、「ごみゼロゲームを活用した啓発活動」「プロギングイベント」「パッカー車のデザイン」など楽しみながら取り組める活動を行った。災害対策への活用として、危機管理課と連携し地域の危険個所をごみ収集のルートに割り当て、台風接近時に状況をリアルタイム把握した。そのように日常利用しているシステムを用いることで、異常時の使用も円滑にできた。
  • 他企業との共創として、日揮HD、ユニ・チャームとも実証をスタート。
  • フィンランド・Sitraが選ぶ“世界を変えるサーキュラー・エコノミーソリューション”に、座間市での「循環型コミュニティの創出」の取り組みが日本初選出。ホシノタニ団地の取り組みとともに評価された。

 

正木氏・スライド
 
2. ディスカッション
ファシリテーター:加藤 肇(産業能率大学 経営学部 教授)
登壇者: 正木 弾 氏(小田急電鉄株式会社 経営戦略部 課長 ウェイストマネジメント事業WOOMS 統括リーダー)
    田村 高志(株式会社小田急エージェンシー コミュニケーションデザイン局 プランニング部長)
    松本 阿礼(株式会社ジェイアール東日本企画 駅消費研究センター 研究員)

 加藤先生をファシリテーターとして、正木氏、研究会メンバーの田村、松本の4名でディスカッションを行った。

  • ごみと関係のない人や法人はいないので、何かしら協働できる。小田急電鉄がそのような輪をつくる存在になっている。
  • 鉄道会社が、地域に内在する社会課題を解決し、地域の発展に貢献することで、鉄道会社の事業継続にもつながる。人口減少が避けられない中で、関わるまちを増やすことでマーケットを拡大していく。
  • WOOMSはかなりの反響がある。鉄道会社の新規事業は、インフラのスキル・ナレッジが活かせる、公共的な事業が相性が良いのではないか。

 質疑応答や意見交換も盛り上がり、第3回目の報告会を終えた。
 

ディスカッションの様子
 
(文責:松本 阿礼)

 
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