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研究報告会レポート

第6回観光・地域マーケティング研究報告会レポート「観光インフラとしてのバス事業戦略」
「Iターンによるまちづくり/総務大臣賞を受賞した取り組み」

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テーマ1:「観光インフラとしてのバス事業戦略」
講演者:早田 圭介 氏(株式会社YOKAROバス 前代表取締役)
テーマ2:「Iターンによるまちづくり/総務大臣賞を受賞した取り組み」
講演者:大脇 聡 氏(NPO法人「てほへ」副理事長)
日程:2014年2月27日 (木)15:00-18:00
場所:フクラシア東京ステーション

 
 

15:00~ 講演及び質疑応答 
講演者:早田 圭介 氏(株式会社YOKAROバス 前代表取締役)
テーマ1:「観光インフラとしてのバス事業戦略」

 

・YOKAROバスは自分が立ち上げたが、現在は投資ファンド(日本再生トラスト)が経営を行なっている。(*2014年2月14日の株主総会で決定。早田圭介前代表取締役が推進してきた他事業への投資の失敗などで膨れ上がった、総額2億2,000万円の負債(うち、有利子負債約7,300万円)を抱えた状態での経営再建は困難であると判断したためという報道あり)
・なせば成る=上杉鷹山の言葉が座右の銘としてやってきた。
・30年計画として展開を考えた。1~10年で人脈、11年~20年で成長、30年で人材作り。
・平戸の分析、年代別人口分布を福岡と比べる。平戸は18歳を過ぎると一気に人口が減る。大学、就職…
・そのため外資(観光での集客など)を求めるのだ。
・35歳から福岡は人口が減る。平戸は増える。そのため交流人口を増やすという結論。YOKAROバス事業を始めた。
・産業別売上、トシュツして悪いのは製造業。将来的には物作りが必要だ→野菜ノリというニンジンから作った海苔シートを作っている。
・34車両を保有。中堅バス会社になる。62名の社員、地域を愛する会社。
・過疎化と経営難でバス交通弱体化。
・平戸の人口は2006年3.8万人、2012年3.4万人
・バス会社=貸し切り価格暴落(規制緩和前の3分の1)、路線の赤字化。全国の70%赤字。
・2004年から九州大手3社の民事再生、赤字がひどいほど削られていく。
 
高速乗合バスと高速ツアーバスの違い

高速乗合バス 高速ツアーバス
法律 道路運送法(1対1の契約) 旅行業法(1対多数の契約)
集客 バス事業者 旅行代理店等
バス事業者 大手の路線バス事業者 中小零細の貸切バス事業者
ルート・ダイヤ 事前に固定 自由に設定
運行 定期運行 最少催行人員がある企画運行
乗降場所 停留所 一般道
利用客 不特定多数のバスの乗客 限定されたツアー参加者
利用料金 運賃 旅行代金

表.高速乗り合いバスと高速ツアーバスの違い
 
・交通網を強化→交流人口の増加→経済効果の波及
・年会費5000円(平戸~福岡は通常片道4,000円)社団法人YOKAROが借り上げるという契約。会員1万人で開始。
・会員1万人の運営管理をおこなう。観光協会・商工会議所と顧客共有。地域で顧客情報を一元化。DM、メールなどで情報提供。購買確率が高く、特産品を販売する。
・ファンクラブに入らないとチケットが買えない、というジャニーズのモデルを参考とした。
・法改正。貸切から乗り合いバスへ。2012年7月31日。ツアーバス、会員制バス(YOKARO)を放置できないということ。新高速乗り合いバスに統合。
・8月9日適用除外の嘆願書 平戸、武田、臼杵、阿蘇、高千穂の首長名で国交省に提出。会員制バス
・運行に向けて国交省と協議。バス停39か所を設置。
・2013年8月1日 ほぼ同じ運用形態で新高速乗り合いバスとして運行開始。
・2009年10月1日平戸~博多間を2時間40分で1日2往復 完全予約制 定員45人
・7時平戸 12:50博多、13:20平戸、19:20博多発。平戸からは日帰り可能にし、博多からは必ず宿泊という時刻表。
・観光協会は当初会員を集める際に嫌がった。赤字でも運行しますという約束をすることで協力の取り付けをした。1万人集まらなくても自分で責任を負う、ということ。
・大学生の週末帰省、家族連れが平戸住民。博多からは高齢者グループが良く利用、毎月来てくれる人たち。
・2010年9月30日、長崎4800人、福岡3000人、全国38都府県からの会員
・2013年7月31日、長崎22000人、その他52000人 8ルート
 
YOKAROバス路線図
YOKAROバス路線図
 

・乗車率は67% 週末満席である。平日乗車率アップした。
・3年目から年会費5000円
・メール登録87%、登録しないと5500円になるから。
・運営は社団法人YOKAROから(株)YOKAROに。
・全国の50万人以上の都市29自治体 約4000万人、5万人未満1224自治体、2000万人を結ぶモデルにしたい。
・2013年10路線、2016年30、2020年100路線
・全国どこでも乗り放題5000円でやりたい。
・今年度中10万人目標で、今8万人。
・女性は全体で69.3%。全会員のうち60歳以上が42.1%で、かつ60歳以上の女性は全会員の27.2%を占めている。この方々は時間とお金があり、ネットで物販もしている。
・交流人口~物産振興~商品開発へが自分のモデル計画
 
【今後について】
・福岡でのアンテナショップへの輸送は1日2回のバスで配送したい。
・キャナルシティが拠点になっているので、ショップ展開も。
・商品開発:高校生のアイデアによる商品開発甲子園も。
・損益分岐-おおむね、1ルート4,000万円。1ルート8,000人の会員が必要で、8ルートで計64,000人の会員で事業継続が可能と考えている。損益分岐点である。副収益で安定化させたい。
・時刻表の問題-キャナルシティに同時間に集まるようにしている。縦のラインは九州強いが東西が少ないので、同じ時間に集めると行ったことが無い地域への交流ももたらしている。
・乗り継ぎで交流を増やす。定着率を継続させるためにも博多に行くだけではなく、乗り継ぎを考える事で定着率を増やしているのだ。
・乗れないクレームは、人口20万人の佐世保は3カ月乗れない、ひどい人は毎日、毎週末予約する人がいて、前日ドタキャンする。150名がそんなことをした。解決策としては、予約している座席を8つまでに制限した。それによって調整しバランスを取るようにした。
・このバスはビジネスではなく、観光のためである。通勤のために使おうということもあった。
・会員の継続率は60%になっていて、今後の課題として認識している。
・営業毎に6台保持しないといけない、というルールあり。地方に6台も走らせることは客もなく不可能で、予備車も含め2台にして欲しい。整備士は必要。
・バス事業を始めようとした着想の出発点:ありがとう、といわれる事業をやりたい。病院への送迎を平日貸し切りでやる(赤字)。週末貸し切りで儲ける。
・主体が違う所と顧客情報を一元管理:個人情報の登録規約の中に、地域の情報の提供をするということを入れている。
・エンドユーザーは個人のみにしている。個人情報を活用したい。法人との契約はしない。
・北海道では観光客向け専用の路線バスがあり(ビッグクリッパー?)、JTB、日本旅行などと契約をしている(小久保)
・全国100ルートの設計は終わっている。日本商工会議所の青年部を通じてマーケティングをしている。東京は渋滞が多いので難しい。渋滞はLCC同様大敵。そこで、東京の場合は新宿など高速バスの主要ターミナルには乗り入れせず、西方面は二子玉川、東北方面は北千住、長野方面は八王子などを起点とする考え。
・インバウンドでもバックパッカー向けに用意することもありうる。韓国のエージェントはHPを韓国語にし、サポート。
・(質問)-システム面は?既存の予約システムを活用している。カード決済もできるように今はしている。60歳以上が多いので、紙媒体も活用している。
・(質問)-ルートは3時間程度にしているが…1台のバスで1日2往復ができる。ドライバーの安全性(1往復)、トイレなしでも運行可能なところ。全国でも3時間程度の高速バス運行というのはあまりない。既存の業者も脅かすことはない。
・(質問)-途中のバス停が多いが、途中下車したお客の二次交通手段は?発着の自治体がYOKAROの到着時間に合わせ、定期観光バスなども用意し始めている(平戸)。毎日一定の数が来るということは計算がしやすい。
・商店街は反対した。みな、博多に行ってしまうという危機感。反対であった。実際は博多の人が来る方が多い。
 
研究会の様子 講演者の早田氏
写真左から、研究会の様子、講演者の早田氏
 
 

16:40〜18:10 講演及び質疑応答 
講演者:大脇 聡 氏(NPO法人「てほへ」副理事長) 
テーマ2:「Iターンによるまちづくり/総務大臣賞を受賞した取り組み」

 
・1990年に小牧市でできた和太鼓集団が太鼓の練習のことも含めて考えるとまち中では活動ができない。そこで東栄町に移住。Iターンをした我々が、地域の振興の一翼を担うまでになったことが評価を受けた。
・1994年から伝統の花まつりに創作舞「志多ら舞」を奉納することになった。
・2010年5月18日にNPO法人てほへを設立した。何か地域にやれることはないか、という思い。
・地域おこし協力隊も入っているが、3年後、業として何かやらないといけないので、連携を取りながら進めていけるようにしていきたい。
・お節介をやく人がいて地域へ溶け込めた。そういうことを今度は逆に自分たちがお節介をやくようにしたい。
・和太鼓から奥三河へつなぎたい。
・わざと不便さを考えるツアーなどもしていきたい。
・花まつりは一昼夜、「てーほへ、てほへ」と歌い踊って願いを奉じる神事からNPOの名前が来ている。

・(質問)地域外での公演が多いのか?-東栄町では年に1回で、ホールもない。そこで、廃校を活用して練習などの公開もしている。志多らの公演を観光素材とはできないだろう。
・空き家でも貸してくれない家が多い。古民家を土地ごと買えることは少ない。地域を大事にしてくれないとダメということ。
・(質問)バリ島のケチャダンスと同じで、元からの踊りが変化する可能性があることに反発はないか?-花まつりが変わることに対して、反対をする人たちが学者などにもいる。子供が地元で生まれると(あるいは地元の人と結婚をすると)理解が深まる。
・神事芸能なので、世界遺産にしたいとも思わない。行政などは花まつりを観光資源にしたいと思っている。東栄フェスティバルが11月にあるが、そこでは観光化された(短くした)花まつりの舞がおこなわれる。舞が1時間~2時間もする。寒い、眠い、煙たい の三拍子。なかなか観光化は難しい。
・地元は「観光」という言葉に違和感がある。
 
講演中の大脇氏
講演中の大脇氏
 
・(質問)福島の農村歌舞伎を見に行く。神社である。昔から地域に根差したもの。子供が歌舞伎を仕込まれ、生活に溶け込んでいる。観光コンテンツ化している。東栄町は「押しかけ」て始まったようなもの。田沢湖畔で同じような現象がある。
・志多らが曲を作り、東栄町で高校の和太鼓のフェスティバルを市で実施。
・UターンではなくIターンで地域振興をしなければならない時代となった。
・(質問)日頃の挨拶、道づくりでのサポートを通じてまちの人が信じてくれた。信用を勝ち取ったと感じたのは、村のお年寄りが一緒にやろうと言ってくれた時だが、同年代は逆に反発。5年くらい経ってからか。全般的にはNPOが立ち上がった頃か。
・お節介な人は、地元のリーダー的な人。この人は小学校にずかずかとやってきて、町の人間がこんなことを言っているから気をつけろ、今度こういうことがあるから参加したらどうかと言いに来る。40歳後半くらいで消防団などをやっているような人。
・観光協会は、今は無い。観光振興のための協議会が再び立ち上がった。観光客は祭りを見るマナーがない(写真を撮って神事ができないなど)ので、その点をどうこなすかを丁寧に説明することが必要だ。

 
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