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第32回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「地域×イノベーション発想の最前線」 |
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テーマ:地域×イノベーション発想の最前線
講 演:縮退のデザイン ~分散と統合が創生する低密化社会の価値~
講演者:橋本 泰作 氏(北海道大学大学院 農学研究院 特任教授)
ファシリテーター:上田 隆穂 氏(環太平洋大学 国際経済経営学部 特任教授 / 学習院大学 名誉教授)
日 程:2025年7月25日(金)18:30-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
【報告会レポート】
第32回ブレイス・ブランディング研究報告会では、北海道大学の橋本泰作教授に「縮退のデザイン 人口減少の未来と分散社会」をテーマに、ご講演いただきました。
まず、政府が推進する「地方創生」と講師が考える「地域創生」の違いについて、説明がありました。地方創生が、都市と地方の対比構造を前提として、地方と都市の格差解消(空間的距離の解消)に焦点が当てられているのに対し、地域創生は、人口減少・低密化・低成長等で縮退する地域を対象として、縮退する地域を持続化すること(時間的課題の解消)を目指すものであるとの見解を示した後、社会の縮退に対応するため、地域特性に合わせた柔軟な対策が必要との指摘がありました。
例えば、「少子・高齢化」と一括りにして表現されることが少なくありませんが、講師の分析によると、都市部は多死化が進行しており、高齢化対策が重要であるのに対し、郡部(地方部)は少子化が進行しており、少子化に対する政策がより重要となるとのことです。

次に、縮退社会について説明がありました。縮退社会は、人口減少や地域の人口密度が低下しますが、インフラの維持管理に大きな影響を与えると、講師は警鐘を鳴らします。これは、人口が減少したとしても維持費は継続するため、少ない人数で費用を負担する必要があるためです。

また、日本と外国では都市の成り立ちが異なるため、縮退社会に対応するためには、政府が打ち出している「コンパクトシティ政策」や「広域化」だけでは不十分であると指摘し、マイクロモジュールという考え方を提案されました。マイクロモジュールは、小さな集落単位(モジュール)の中に、インフラ(電力、水道など)をオフグリッドでパッケージングし、ネットワークでつなぐという考え方です。マイクロモジュールのメリットとして、投資額が小さくてすむこと、更新期間を短くできること、地域の特性に合わせて運営できること、少ない住民による意思決定と運営が可能となることなどがあるとのことでした。

次に、インフラ整備におけるマイクロモジュール化と分散型システムの具体例として、水道システムの分散化と循環型モデルの導入について説明がありました。従来の大規模集中型から小規模分散型へ移行するとともに、導水管の長さを増やし、浄水場を近くに設置するなどの工夫を加えることで、維持管理コストの削減が可能となります。さらに、水の再利用システムの導入により、水資源の効率的な利用が可能になります。講演では、北海道喜茂別町における分散型水道システムを導入した場合のシミュレーション結果が紹介され、コスト削減効果が示されました。

また、講師からは、人口減少社会に抗うのではなく、分散社会を受け入れることも必要ではないかとの指摘がありました。その場合、暮らしを支える都市のシステムに加え、都市の基盤(Social Base)の維持が重要となりますが、これらを支える仕組みとして、ドイツやオーストリアで取り組まれているシュタットベルケ(資金の半分以上を自治体が出資する公企業)について紹介がありました。日本においても、同様の仕組みを構築することで、(広義の)社会インフラを維持することが可能になるのではないかとの提言があり、講演は締めくくられました。

講演後のフロアディスカッションでは、近代化以前の「村」とモジュール化された地域との違いや、マイクロモジュールの適正なサイズ、急速な人口拡大期におけるマイクロモジュールとの有効性などについての質疑応答の後、インフラ整備と地域活性化の関連性や、古い施設の活用方法などについて議論されました。結びに、当研究会の代表である関西大学の徳山先生より、今後、地域を検討していく際にはインフラについても注目したいとコメントがあり、本研究会は終了となりました。


